【最終話】これからのSW
「あれ? ティティ……さん?」
「あら、そうなったのね」
「こうなった」
「意外ね」
「私もそう思う」
「やむを得まい」
「やむを得ないんだ……」
翌朝。
二組は別々の朝を迎えた訳なのだが、ラズリとティティがそれぞれ『いつもこんな感じで合流してる』という定番の流れを提示してくれた為、再会は容易に為されていた。
だがどうにも様子がおかしいのだ。
主に、ティティの様子が昨日とはまるで違った物となっていた。
「過度な接触はやめておけ」
「分かりました、ディープス様」
「さ、様? どういう事なの」
「うむ、何故かそうなってしまった様だな」
「何でお前にすら分からないんだよ」
まずニットの帽子から髪の毛が一部解放されていた。色の分かれ方は黒が九割、ピンクが一割となっており、今は人として理性を強く保てている状態である事が伺える雰囲気をしていた。
また俯きがちで暗かった表情は一転キラキラと輝いており、ただでさえ美形のティティが可愛らしく微笑むものだから、まだ慣れぬリックは困惑の色と下半身の苛立ちを隠せずにいた。
と言うよりも。
彼は少し【魅了】の力に当てられていた。
「……アナタ、ティティを裏切ったらただじゃおかないわよ?」
「馬鹿を言うな」
「ー!?」
強く、ハッキリと返答するディープス。
軽く牽制するつもり程度の声掛けをしたラズリは、事のほか真剣な表情と返答がノータイムで返ってきた事に驚き、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまう。そこに、彼は更に言葉を続けた。
「彼女を護る事はパーティに於ける俺の責務。それに俺もまたティティ(の才覚)に惚れ込んでいる。裏切るなど万に一つもないと断言しよう」
「……魅了でもされてるのかしら」
「援護系である俺にこの程度の微弱な催淫が効く訳ないだろ。そこの脳筋チビと同列に語るな」
「なっ!? いや、まぁその……俺は……」
投げられた言葉の流れ弾を食らう形で謎の被弾を貰ったリックだが、何一つ言い逃れの出来ない下半身がそこに存在していた為、いつもの調子でのコミュニケーションが発揮される事は無かった。
「そうよね。魅了されているにしてはその特徴が見られないものね。素で言ってるって方が不気味ではあるのだけれど」
「何故だ? 彼女の事を思えば当然であり、お前もまたそうなのだろ、ラズリ」
「ま、まぁそうね。そう……なのかしら?」
「ディープスしゃまぁ……♡」
「えぇ……ナニコレ。何で俺はこれに反応しちゃってるの……」
困惑の極みの様な状況。
いつもと変わらぬポーカーフェイス、低反応にしてほぼ無表情のディープス。それに対して表情豊かにデレデレして魅せる可愛らしいティティ。そんなディープスを相手取るも返り討ちにされるラズリ。何故かそれを見て下半身がイライラするリック。
そんなメンバーに対し、ディープスはある提案を口にする。
「ティティの催淫能力なのだが、俺たちが全員で彼女を護れるのであれば、ある程度晒しても構わないと考えている」
「ー!?」
「それは……どういう意味かしら?」
彼のその言葉に、何の気無しについ髪の毛をしまい忘れていたティティは驚きの表情をディープスへと向ける。
またその言葉に反応したのはラズリも同じであった。そも、これまで彼女はそれなりにティティと時間を共有してきたのだ。故にその中で発生した様々な問題や事件を思い返し、そして今の在り方に至った経緯を考えるに、それが良い手だとは思えなかったからなのだが、当然ディープスはその言及に対する返答に準備が在った。
「彼女はそこにフラストレーションを溜めている」
「ー!? そ、それはそうだけど……」
苦肉の策。
決して望んだ姿という訳では無かった。
それ故に、彼女に掛かる負担は大きかったのだ。
「恐らくだが、そういった精神性からの解放も含めた暴走だと考えられる。我々の関係性を考えるに、この暴走とそのタイミングが最大の問題点となるだろう」
「そうね、異論は無いわ」
「暴走?」
「彼女は淫気を身の内に溜め込み続ける事で内面から崩壊し、その際に見境なく男の性を求める獣へと成り果ててしまうそうだ」
「あ、そうか。ティティって淫魔の個性がちょっとあるって聞いてたそれか」
ここで漸くティティの特性を思い出したリック。
彼は昨晩のお楽しみが余りにも楽し過ぎた為、その前にしていた話をすっぽ抜けさせてしまっていたのだが、忘れた訳では無かったのだ。
「俺はこの抑制による彼女自身への負担が大き過ぎると見ている。昨日一日共に行動し、後半の様子の変化が気になってはいたからな。そんな事になるくらいならば、ある程度自然発生してしまう淫気は出していくべきだと考えた訳だ」
「……で、そこで発生する問題はどうするの? 彼女、貴方が考えるよりもずっと魅力的に写ってしまうのよ?」
「俺が中和する」
「ー!?」
中和する、つまりそれは対抗する魔法の行使であった。
「どうやら彼女の【魅了】は状態異常の範疇に収まるらしい。既に解毒が有効なのは確認済みだ」
「貴方、そんな事してたら乾涸びるわよ?」
「故に範囲は3メートル程までとなるだろう」
「……成る程。完全に、では無いという事ね」
「お前とリックが居るからな」
「どういう事?」
また知らない魔法である。
話についていけないリックは素直に詳細の説明を所望した。
「解毒、状態異常を解除する魔法なのだが、これを使えばティティの魅了は一時的に無効化する事が可能だ」
そう言いながらディープスはリックへと近付きー
「解毒」
「……おぉ! 本当だ、何かめちめちゃくちゃティティに惹かれていた感じが緩和した! ……けど段々可愛く何ならどんどんえっちに見えてくるぅぅぅぅ!!」
一瞬、緑の光を帯びたリックは当てられていた淫気から一時的に解放されるも、直ぐに元の魅了状態へと戻されてしまう。
「効果は見ての通りなのだが、援護系魔法師はその修行も兼ねて解毒を軽度に常時発動している者がいる。斯く言う俺もそのタイプだ。その効果をティティに付与するとこの様に変化する」
「……あ、成る程。これくらいならちょっと惹かれるくらいだね。さっきから俺もうアレがアレしててどうしたら良いのか真剣に困ってたからさ」
「見て分かる様に、これは完全に彼女の能力を封じた訳では無い。近付けば近づく程に魅了されてしまうだろうが、3メートル程であれば恐らく問題となるレベルには至るまい」
「確かに、これくらいなら……」
「ここまでを許容するならば、俺とてそこまで負担という事も無い。そも、仲間を援護するのは援護系としての本懐。これくらいは瑣末な事だ。その上でー」
「俺たちの立ち回りが大事って事か!」
「そう言う事だ」
ティティと他者との距離感。
それをラズリ一人で周りに違和感を与える事無くコントロールするというのは、土台無理な話と言えるだろう。だがリックとディープスが居たならば。彼女を護る様に立ち回るというのはそれ程不自然な事では無い。
つまりー
「ディープスが護って、俺たちで支えるって感じか! 仲間って感じで良いじゃん!」
「ー!?」
「そう……ね」
全員が彼女の特性を理解し、支える。
これはラズリの兼ねてからの理想ではあったが、ティティの能力も相まって、達成は難しいと諦めていた理想でもあったのだ。
(まさか……たった一晩でここまでするなんて。まだ私は孤高の大盾を侮っていた様ね)
彼の存在を改めて見やり、ラズリはー
(このパーティなら……)
少し口角を上げて未来を思いながらもー
(だとすると、昨日は少しやり過ぎたかしら?)
昨晩のリックへの狼藉をやんわりと後悔するのであった。
鳴かず飛ばず。
上手く書ききれず、打ち切りエンド申し訳ないです。
作者の次回作にご期待下さい(ォィ
【生くっぱ】




