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【第十九頁】vsデュアルスコーピオン

「中に、別の何かだと?」

「あの尾っぽみたいなデカいのの中って、ある程度空洞か、ちゃんと詰まってるかの二択の筈じゃん?」

「恐らくは」

「何か変な重複した反響音みたいなのがちょっと聞こえたんだよね」

「……ほう」


 予想外の返答。

 いや、予想を越えた返答と表すべきだろう。ディープスは初撃、或いはこの戦いに於ける序盤の情報収集はある程度リックに任せるつもりで立ち回る予定だった。だが、彼のその速度は予想を遥かに越えた物でありー


「ギュイイイイイイィィィィィィィ!!!」

不可侵領域(エアシールド)

「おっ、サンキュー!」

「オイ! 何故それが生物だと思った?」

「ん?」

「さっきの発言についてだ」


 二人を襲うデュアルスコーピオンだったが、それを回避行動とエアシールドにて難なく防ぐと、再び距離を取ってリックへと質問を飛ばしたディープス。


「何か聞こえた音的に?」

「もう少し具体的に言え」

「ぐっ……。んー多分五体くらいかな。逆側もそうだとしたらもう5体、後は鋏の部分まで入れたらマックス20体の小型が出て来るかも」

「……で、どう考えた?」

「どうって?」

「対処法についてだ」


 彼は見極めようとしていた。

 リックの、戦闘時に於ける能力値の多寡を。


「無視して良いんじゃない?」

「……何故そう思った?」

「ラズ姐がいるし、ティティと二人なら多分対処出来るでしょ? 二人とも俺より強いんだし」

「ー!?」

「多分このデカ虫の尾っぽが後衛を射程内に捉える状況の方がヤバいから、俺はちっさい方は無視するつもりだったけど……」

「ふ」


 そして、それを言ってのけたリックに対してディープスはー


「ふはははははは!!!」

「なっ!?」

「ん?」

「……」


 これまで見た事のない高笑いを始めたのだ。


「何だよお前聞いておいて笑うなよ! しかも今は戦闘中だぞ!?」

「いや、悪い。悪気は無いんだ」

「ほんとかよ……」


 悪気は無い、その言葉に一切の偽りは無かった。

 彼の笑いに込められていたのはー


(はは、まさかあの一合だけでそこまでの予測を? コイツ間違いない……)


 純粋なるー


(天性の前衛だ)


 惜しみ無い賞賛であった。


「オイ」

「……何だよ」

「お前の得た情報は貴重だ、分かった事があれば直ぐに俺に共有しろ」

「分かった」

「リック」

「何だよ!」

「頼んだぞ」

「ー!? っ、何か調子狂うなぁ……」


 そんなディープスからの突然のリスペクトに、リックは感情の整理が追いつかなくなってしまっていたがー


「どわっ!?」

「流石に、余り悠長に話してもられんか」

「当たり前だろ!? ボスの前で何話させてんだよお前!?」

「ギュイイイイイイィィィィィィィ!!!!!」

「やれるか?」

「ギリ躱せる範囲内!」

「なら任せるぞ」


 デュアルスコーピオンの手前、そう混乱してもいられない。回避行動に合わせ、リックから少し離れたディープスはラズリの隣へと移動する。


「ラズリ、恐らく小型の魔物が放たれる」

「ー!? あら、この子ってそんな個性あったかしら?」

「俺も知らなかった。だがリックの予想だ、念の為想定した上で後方待機だ」

「分かったわ」

「ティティはラズリを頼む、前は任せろ」

「……」


 後方へと少し退がったディープスは、得た情報から後衛へと立ち回りの方針を共有する。そしてー


「ティティ、少し頼むわね」

「ん」


 更に後方に退がったラズリは大杖を構え、魔力の構築を始める。そしてティティはその地面ごと持ち上げ、自身とラズリを敵の射程外かつ高所へと導いた。


 一方で前衛達はー


「ギュイイイイイイィィィィィィィ!!!」

「ぐぬぬ、コイツ尾っぽの使い方が上手い……」

不可侵領域(エアシールド)

「わっ! 本当にヤバいのは全部止めてくれるんだよなぁ。まだ全然慣れないからビビるっての」


 勢いよく振り回されるデュアルスコーピオンの双尾。更に鉞の如く振り下ろされたり、その剪断力で仕留めようと鋏を前面に押し出したりと、休む間の無い猛攻を仕掛ける敵に対して、あと一歩攻めあぐねるリック。


(俺が何か起点を作らなくちゃ、だって前衛なんだから……)


 彼は内心少し焦りを覚えていた。


「ギュイイイイイイィィィィィィィ!!!!!」

「ぐっ、そりゃ!」

「ギギギェェェェェェェ!!!!!」

「ちょっ!? くそっ!!」


 回避行動は間に合っている。

 稀に打撃を食らってはいるが、致命打と言う訳でも無く、我慢出来る範囲だ。敵の攻撃パターンにもある程度慣れてきていた。


 尾は一つは刺すに特化した攻撃を、もう一つは打撃を狙った振り回す攻撃を、そして回避の為に空中に出ると、幾つも備えられた足で素早く方向転換をするデュアルスコーピオンは、そこから鋏による追撃をしてくるのだ。


 その回避後に僅かに出来る隙、そこをディープスが補う事で安定した立ち回りを維持出来てはいたのだが、これでは状況が進展しないのだ。


(不味い、このままだとジリジリとやられちゃう。何か、何か打開策を見つけないと。俺が起点にならなくちゃいけないのに、前衛なのに……)


 後衛は有事に備えて退いている。

 援護は完璧に施されている。

 ならば自身は?

 果たして十分な前衛役を果たせているだろうか。


(くっ、どこか……何か……)


 そんなリックが焦りを募らせる中、デュアルスコーピオンはー


「ギギギッギギェェェェェェェギュイイイイイイィィィィィィィ!!!!!」


 まるでそんなリックの精神に追撃を見舞うかの様に、その尾の中より、合計十匹の小型スコーピオンが解き放ったのだった。

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