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【第十八頁】ダンジョンボス

 通路からフロアへ勢い良く飛び出した三人。

 だがそこに足場は存在せず。


「ぎぃゃぁぁぁぁなんでぇぇぇぇ!!!」


 後一秒もすれば自由落下を始めるという場面でー


天地創造(フィールドライト)


 未だ通路の入り口から飛び出さず、フロア直前で立ち止まっていたティティが、彼女位置から足場を伸ばす様に三人の着地点を形成する。


「あ、足場がはえてきたぁぁぁ!!!」

「そのまま走って!」

「はひぃい!!!」


 ズン、ズンと壁面からはえる幾つもの足場。

 まるで階段の様に下方へと皆を(いざな)うこの状況も、当然長く保つ訳では無かった。ティティの、彼女が居るその場もまた、間も無く崩壊に呑み込まれるのだから。


「素晴らしい援護だティティ。後は任せろ」


 だがその僅か五秒を稼いだ彼女の功績によって、この男がー


旋回跳躍盤(スカイウォーク)


 次なる一手をパーティへと齎した。


「跳躍力を強化してくれる力場を生成した。あの薄青い板を踏めば跳ねる様に跳躍出来る。後は分かるな?」

「勿論」

「成る程」

「おっけぇぇぇぇ!!! 良く分かんないけど多分こう!」


 そして、その板を足場とし跳躍してみせたリックは、自身の想定していた以上の跳ね方を見せたそのスカイウォークに驚くも、対応の方向性に得心がいった様に『そういう事か』と呟いた。


「ちょっと下が見えてきた!」

「……あの崩落、全滅もあり得る規模だったな」

「ティティに感謝する事ね」

「ありがとうございます!!!」


 エアシールドと違い、衝撃への耐久性は持たない代わりに、複数同時生成が容易なエアウォークは、パーティメンバー全員が次にこの辺りに足場が欲しいと考えた位置に次々と生成され、彼等を本当のボスエリアへと導いていった。


 やがてー


「何かいる! わぁでっかい虫だ!!」

「ボスね」

「……成る程、亜種か。見覚えのない面だ」


 落下を終えようという、そこに待ち構えいたー


「ギギギギ……」


 ダンジョンボスとの対面が待ち受けていたのだった。



 ━



「ギュイイイイイイィィィィィィィ!!!」

「おぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「張り合うな」


 パーティメンバー全員が地面へと無事に着地すると同時に、大いなる咆哮を以ってそれを迎えたダンジョンボス。


「少し想像と違ったな」

「デュアルスコーピオンね。偽りは無かったんじゃない?」

「正しく、情報に偽り無しだ」

「でけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「煩い」

「はい」

「と言うかイチイチ叫ぶな」

「いやだって急に叫ばれたらビックリするじゃん……」



 デュアルスコーピオン。

 まるで蠍の様なその身体は強固な鎧に身を包んでおり、優れた耐久性を持つ一方で、彼の者が持つその強力な尾は根本から二股に分かれており、両腕の鋏、二つの尾先の針を換算すれば、その刃は【四つ】とカウント出来るだろう。


 そのそれぞれが双刃だと言うのであれば、デュアルスコーピオンの武装を称するに【双々刃】と言うのは的を得ていると言わざるを得なかった。


「ラズリ、ティティ両名は退がれ。機が在れば対応は任せる」

「よろしく」

「……」

「リック。お前だぞ」

「任せてよ!」


 敵の威圧には都度怯んで見せるリックであるが、対峙したその後に関してはその様子をまるで感じさせずー


膂力龍腕(ドラゴンエナジー)

「そりゃっ!!」

「ギギッ!!」

「っつー!! かったぁぁぁい!!」


 即座に正面から突っ込むリックに尾の一つを向けたデュアルスコーピオンの攻撃は、リックの拳によって殴りつけられ、無効化させられる。


 だがその一方でリックの拳にも負担がいっている様で、その外殻の硬度の凄まじさが互いに伺える初撃を交わしていた。


「コイツかなり堅いよ!」

「いけそうか?」

「うーん、場所次第かな。流石に全部堅いともっと動けなくなる筈なのに、コイツ速いし。後はさっきのゴリラみたいに口の中とか」

(成る程、適当かと思えば案外と良く見ているな。それに学習もしている。……面白い)


 この手の魔物の相手は既に経験があったディープスは、まずはリックに当たらせ、どの様に判断するのかを確認していた。


 リックは戦闘に於ける斬り込み隊長だ。彼が序盤にどれだけの情報を敵から引き出せるかというのは、パーティにとって大きな差異となってくる。故に、今の時点でどうかの確認を只続けていたディープスだが、筋肉馬鹿だと思われたリックは、予想外な知性を発揮していた。事、戦闘に於いて。それは彼にとって嬉しい誤算であった。


「ふ、なら問題あるまい」

「何笑ってんの? 気持ち悪」

「黙れ」

「あ、そういえばさ」

「む?」


 ディープスがキツめの『黙れ』を発した場合、ここまで概ね即座に黙ってきたリックが、一切の躊躇を見せずに黙る事をせず会話を続けようとしていた。


 そして彼は改めてリックの様子を見るに、先刻の衝突の手応えをディープスに語るリックは【倒す手段は在る】と発言しながらも、その表情はやや懐疑的な物であったのだ。ディープスとて、それは見逃せない変化であった。自身の手を握ったり開いたりを繰り返しながら、その手に残る衝打の感触を思い出し、そしてー


「なんかさ、殴った感じなんだけど」

「何かあったのか?」


 彼の中に生じたその不可解な点を、彼に伝える。


「変な事言って良い?」

「……言ってみろ」

「中にさ、何か別の何か生き物がいるっぽいんだけど」

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