【第十二頁】vsドラムコング
手を握り開きを繰り返し自身の無事を確認したリックは、その場で軽くジャンプする事で五体が満足である事を認識する。すると見る見る内に表情か険しくなり、その鬼気迫る言い分がディープスへと放たれる。
「おい! 即死しないじゃんか!! 脅かすなよ!」
心底焦ったと呟きながら、先のやりとりにクレームを入れるリックだが、ディープスの返事は既に決まっていたのか、何一つ動じないままにー
「生身で受けたら、と言った筈だが?」
「……ん? 生身……だっただろうが!」
そんなリックの返答に対し、ハァと溜め息を一つ溢したディープス。どうやらリックは余りの緊張から自身に何が起こっていたのか本気で理解出来ていないらしい、と彼は気が付いてしまったのだ。
「俺が防いだ」
「……え?」
「エアシールドだけでは不十分だったからな、鉄肌剛金を併用した」
「ん?」
改めてリックは自身の身体をコンコンと叩いてみると、いつもと違い、薄く堅い何かが全身を覆っている事に漸く気が付いた様でー
「すげぇ!! 俺カチカチじゃん! うひょぉぉぉ!!!」
「戦いに集中しろ」
「はい」
舞い上がりそうになるリックを一言で制するディープス。
更にー
「ウホオオオオォォォォォォォ!!!!!」
「ホギャアアアアァァァァァァ!!!!!」
「煩い」
「はい」
過剰にドラムコングの雄叫びに怯える彼を加えて落ち着かせた所で状況を改めて確認する。
(ドラムコング、初めて見るが速さは対応圏内。パワーもエアシールドとスチールスキンの併用で防げそうだが、流石に彼女らには厳しいか。今はまだ解放の余韻から余り活発には動いてないが……)
未だ揺らぎを残していたドラムコングの魔力は徐々に安定した迫力を見せ始めており、間も無く本格的な行動が見られそうな予感を彼に与えていた。
そんなドラムコングの圧ある第一歩目でー
「天地創造」
「グルルルアアガガガァァァ!?!?」
「え!? 急に転んだ!?」
盛大に膝から崩れ転倒し、その巨体を五体投地で盛大な地響きを巻き起こす。その様子をやや離れた位置で見ていたディープスには、何が起こっていたのかが正確に理解出来ておりー
(……上手いな)
それは偶然の産物などではなく、仲間の攻撃の賜物であり、
「魔力真空波」
その好機に追撃としてドラムコングの片腕を狙ったラズリのプロトラクターは確かな手応えでダメージで貢献するも、切断には至らず。
(成る程。遠隔で地形に干渉できるという事は、ティティは罠魔法として魔力を行使出来るのか。益々、レンジャーとして希少な存在だな)
その様子を視界に収めていたディープスは、ティティが敵の足元に泥濘を生成し、その際の隙を逸早く突いたラズリとの連携に賞賛の意を示していた。
(あの二人、かなり場慣れしている。やり易いな)
嬉しい戦力的上方修正を心の中で為したディープスは、しかしてこの状況に次なる一手を用意しておりー
「お前だぞクソチビ! 膂力龍腕」
「チビって言うな!! ってか何か力が溢れてくるんたけど!?」
最初の段階でキツい一撃を貰っていたリックだが、その甲斐もあってか緊張感からは既に解放されており、ディープスの掛け声の直前から既に走り始めていた彼は、ラズリの攻撃で未だ怯んでいるドラムコングの上部に飛び出し、そしてー
「どっせーい!」
「グルゥァァァァァァ!!!?」
力任せに振り抜いた強烈な右パンチがドラムコングの片腕に直撃する。そしてそれは先の場面でラズリが狙った場所に他ならずー
「ラズ」
「えぇ、行くわよ」
リックの意図を汲み取ったティティがドラムコングの身動きを一時的に制限するべく、地面に手を着いて魔力を流し込む。
「天地創造」
ティティの魔力によって大地から土が飛び出し、ドラムコングを囲う様に拘束する。しかしながら敵の力であればこの程度の高速では数秒程度しか意味を為さ無いだろう。
だが、その数秒でー
「魔力真空破」
「すげぇ!!」
二度目にして、ラズリのプロトラクターがドラムコングの片腕を切り落としたのだ。だがしかし、その攻撃が鋭利過ぎた為に、ドラムコングを拘束していた土の枷が数秒早く解放されてしまい、それによってー
「ウホオオオオォォォォォォォ!!!」
「あら、マズったわね」
一転、ラズリが狙われる立場になったが、ここに来てリックが良い位置取りをしておりー
「どりゃぁぁぁ!!!」
「グホッ!!?」
力任せに振り下ろされ様としていたドラムコングの右腕がリックによって蹴り飛ばされ、その攻撃の軌道が変えられてしまう。当然、ラズリはこれにより無傷を保っており、リックの位置取りを把握していたディープスは、彼に付与したドラゴンエナジーを継続発動していた事で、その躍動を計算に含んだ状態で身構えていた。
こうなってしまえば、逆に目の前にいたラズリの状況は非常に良い立ち位置となっておりー
「リック、奴の口を開けてくれないかしら?」
「お任せ下さい!」
彼女からの指令を受けひた走るリック。恐怖心は無いのかと言う速度でドラムコングの眼前に躍り出た彼は、蹴りの体制に入るとそのまま敵の横っ面へとー
「どっせーい!」
「ホガァァァッ!!?」
強烈な蹴りを見舞った。
ドラムコングの大きな下顎を勢い良く蹴り飛ばしたリック。それによって顔面を無理矢理ラズリの方へと向けられたドラムコングは、その首の角度でギョッとした表情を見せ、まるで恐ろしい物を目にしてしまったかの様な反応を見せる。そして、そんな奴の視線の先に居たのはー
「あらこんにちわ。そして、サヨナラね」
「アガッ!!?」
杖先に強力な魔力を集中されるラズリであった。彼女その麗しい唇から冷たい別れの言葉を吐き、そこから間を置かず発動の印を紡ぎ、顎関節が外れ開けっぱなしとなってしまっていたドラムコングの口目掛けてー
「爆発する魔力弾」
「ホゲェェェェェェェェェェェ!?!!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
口内から大爆発を起こしたドラムコングと、それに巻き込まれたリックが断末魔を叫び、爆発の衝撃の直後に黒煙の中へと飲み込まれてしまったのだった。




