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非日常インビテーション 4.5話

魔導研究部、研究員たちの会話。

 骨の状態を撮影する前の準備中。

『光の裏で生きるもの』の一巻を読み使えるところを書き出し、光の波長を計算し、撮影機を借りてきて、骨が分かりやすいように黒い紙を探してきてと性転換した研究員たちがクルクルと忙しなく動き回る。

 一部そのまま内容の虜になり、続きを求めて部屋を出た者もいるがそれは放置である。

 そんな中で暇を持て余した被検体(マゼラン)が唐突に言った。


「そうだ! オレ今のうちに総大将のところ行ってくるね!」


「は? お前、扉も通れないサイズのくせに何言ってるんだよ」


「そんなのは……こうすれば解決!」


 怪訝な表情のクロウにもマゼランはへらりと笑うと、思いっきり窓の壁を蹴り壊した。


「骨ー! あ、違う。マゼラーン!」

「折れた? ねぇ、折れた?」


 研究員たちが気にするのは骨。異常がないか尋ねる声にマゼランはふわふわと笑う。


「ううん、平気だよー。あれかなー? 煙浴びた時にエビチーズフライ食べてたから?」


「お前もか! ここで食うな! って言うか、下に人がいたらどうするんだよ! 後先考えろよな!」


「クロウは心配性だねー。みんな爆発した時点で離れてるから大丈夫だって」


 マゼランは開けた穴から外に出た。

 直立しても体にかかる負荷は巨大化する前と変わらない。手首を振っても、腕を回しても、腰を捻っても、屈伸しても。

 その様子を部屋にいた研究員たちはつぶさに観察し書き留める。


「は? あれマゼランか?」

「その状態で動けんの⁉︎ ヤバない⁉︎」

「腰布ちゃんと巻けー。見えるぞー」


 壁を壊す音に様子を見にきた別チームの研究員が驚きの声を上げた。


「イェーイ! オレ今から総大将のところ行くからそこどいてね! 踏んじゃうよー!」


「ちょ、待て一人で行くな! オレも行くから!」


「そ? じゃあ、はい」


 手のひらを差し出すマゼラン。何がしたいんだと怪訝な表情のクロウに彼はニコニコと笑う。


「運んであげるから乗っていいよ。どうぞー」


 殴ったり氷を破壊しても無事だったからクロウが乗っても大丈夫なのだろうが、それでもあのお仕置きバンジー以降、クロウの中に高さへの恐怖心が巣食う。

 しかし、だからと言ってマゼラン一人で行かせると後々が心配だ。意を決して恐る恐る足を乗せる彼に、いたずら心が疼いたマゼランはふーっと息を吹きかけた。


「っ————!」


 吐息に体を煽られバランスを崩したクロウはマゼランの指先に必死にしがみついた。


「馬鹿、やめろって! 落ちるだろ!」


「アハハ! チョー焦ってんじゃん! 流石にオレも落としたりしないってばー。よし、レッツゴー!」


「わっ! 待て落ちる走るな! 走るなってばぁぁぁ!」


 クロウを肩に乗せて、マゼランは地響きのような足音で軽快に駆けだした。

 ところが、局内に緊急警報が鳴り出すではないか。


「そういや巨大化の情報流したっけ?」

「しらない」

「まぁいっか」


 このままでは騎士や魔術士たちに討伐されてしまう可能性も、と一瞬過ったがそこは彼らだ。

 女性化した男性陣は特に気にする事なく世話係(クロウ)に丸投げした。


「あたしクロウって女体化しちゃダメなタイプだと思う」

「あれは世話焼きが転じてダメ男を引き寄せるタイプよね〜」

「戻らずにそのままマゼランとくっついちゃえばいいのにね」


 光の波長の計算を終えた男性化した女性陣がビーカーでお茶を飲みながら低い声でしみじみと呟いた。

活動報告より少し手直ししてます。

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― 新着の感想 ―
[一言] マゼランさんだけでなく皆さん自由人ですね コージャインサン様は日頃その部署でどのようにお過ごしなのでしょうか でもどこにでも腐のつく女子はいるものですね いやこのぐらいじゃあ腐がつくとは言え…
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