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happy birthday dear…… 5.5話

アーリスとジオーネとリアンの会話。

 廊下の曲がり角でこそこそと動く三人の人影。アーリスとジオーネとリアンの顔が積み重なるように二人の様子を覗き見ている。

 そんな中でアーリスが口を開いた。


「うわぁ、急に雰囲気が変わった。僕といる時は今までと同じだったのに……。あの二人、いつもあんな感じなの?」


「そうですね。人前ではお嬢様が恥ずかしがられますのでご主人様も控えられています」


「あ、そこは配慮してくれてるんだ。流石だねー」


「はい。ところで……その顔を覆っている手。隙間が空いたいたら意味がないのでは?」


 そう、手で顔を覆うアーリスだが残念なことに指の間が開いてヘーゼルの瞳が見えている。

 以前お嬢様も同じ事をしていたな、なんて思い返しながら問うたジオーネにアーリスは視線を二人から外さずに訴えた。


「だって妹のいちゃついてるとこなんて気まずいんだよ⁉︎」


「でも気になるんですね」


「うん」


 リアンの言葉に短く素直に返す。

 さて、実はこの場にいるのは彼らだけではない。


「気になると言えばもう一つ。向こう側で覗いてる彼らはどこのどなた?」


「二人ともあたしたちと同じご主人様の部下です。フードを被った怪しい男がイルシーで、大男がファウストと言います」


 通路を挟んだ反対側の曲がり角、こちらの音を意識して拾っているのかジオーネからの紹介のあとイルシーはニィッと口の端を上げ、ファウストは一礼をした。


「ファウストは見た目はあれだけど怖くないですよ。イルシーはがめつい守銭奴だから近寄らない事をオススメします」


「ああ、彼がイルシーなんだ。アレは何してるの?」


 イルシーがずっと二人に向いているその手元、薄ぼんやりと何かが空気中に溶けるように消えていく。


「術式でお二人の写真を撮ってるんです」


「公爵夫人もクタオ伯爵も買い取ってますし。多分兄君も撮られてますよ」


「え⁉︎ 僕も⁉︎」


 なんでもないようにジオーネが、呆れたようにリアンが言えば、アーリスから飛び出るのは驚きだ。

 目を丸くする彼に二人はこくりと頷いた。


「伯爵夫人が画廊(ギャラリー)作る気満々だったじゃないですか」


「アイツは金の匂いに敏感なので」


「わー、すごいねー」


 次に帰ってきた時にはクタオ伯爵家にも立派な画廊(ギャラリー)が出来ているかもしれない。

 少しばかりヒヤヒヤした空気もすっかりなくなった二人の様子をアーリスはじっと見た。


「二人はお互いにちゃんと……」


 ——想い合っているんだね


 自分の事ではないのに、その姿に自然と笑顔が湧く。柔らかく穏やかなヘーゼルに彼の心が映し出された。

 ——才ある主人に

 ——平凡を脱した妹に

 護衛たちが見上げた彼の表情には嫉妬心の欠片もない。ジオーネは視線を二人へと戻すと今日一番の穏やかな声で言う。


「はい。お嬢様はご主人様の唯一ですから」


「主は他の令嬢なんて相手にもしてませんよ」


「そっか……良かった!」


 リアンも当たり前のように言い切るから、アーリスは溢れんばかりの笑みを見せた。

 こそこそと見守っていたが、二人の顔の距離が近づいたところで全員が曲がり角の向こうに姿を隠す。


「ところでさ……これ、いつ戻るべき?」


 若干の気まずさを感じながらもアーリスは困ったように眉を下げて言った。だが、護衛二人はにっこり笑うのみ。


「僕らは主の邪魔をするわけにはいきませんから」


「兄君のタイミングにお任せします」


「えー、難しい〜」


 丸投げされて兄は頭を抱えた。

 伯爵令息(アーリス)が動かなければ誰も動けない。そう、彼の部下も公爵家の使用人たちも。

 だって公爵令息(コージャイサン)が言ったのだ——誰も見てない、と。

活動報告より少し手直ししてます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人間の感情で一番厄介なのが嫉妬だと言うのを聞いたことが有ります。 嫉妬から妬み嫉み恨み等が生まれとか あの環境で嫉妬せず幸せを喜ぶ事が出来るのだから ザナと別の意味で平凡ではありませんよね
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