happy birthday dear…… 2.5話
リアン、ファウスト、イルシーの会話。
オンヘイ公爵邸の一室、そこに一つの影が舞い降りた。
「主。イザンバ様より火急の要件です」
「リアンか。主は今入浴中だ」
その声に返答したのはファウストだ。ソファーで寝そべっていたイルシーは体を起こしながら首を鳴らして。
「火急ってなんだ、よ……クク、ハハハハハハッ! お前その格好で来たのかよぉ!」
「え? ……あっ!」
イルシーに言われてリアンは自分の服装を思い出した。
メイド服のままの彼にファウストは厳つい顔をさらに険しくした。
「それほどなのか……先に主にお声がけだけでもしておこう。どんな要件なんだ?」
「………………画廊にイザンバ様のコスプレ写真が飾ってあるかどうかの確認」
不貞腐れた顔のリアンのその答えに。
「ぶっ、ハハハハハハッ!」
イルシーもファウストも吹き出した。
「くだらねー! つか、そんな事で着替え忘れるとかお前馴染み過ぎだろぉ。すっかり可愛いメイドちゃんじゃねーかぁ、ククク、ハハハハハハハハハッ!」
「っ……う、うるさい! うるさい! うるさーい!」
「いや、ヴィーシャやジオーネのように女臭くないからこそ引っかかる層があるのは体験済みだろう。幼女……は言い過ぎか。少女趣味の層だ。いい仕事ぶりだぞ」
「ファウストもうるさい!」
イルシーが笑い倒すせいかファウストのフォローになっていないフォローにもリアンはしっかり噛みついた。
だが、最年長はそれをさらりと流しリアンに改めて問う。
「それにしても、なんでまた写真の確認なんだ?」
「イザンバ様の兄君が『これがオンヘイ公爵夫人の画廊に追加されたらオタクだって貴族どころか世間にバレるよ』って言って、イザンバ様が術式で撮られている事に思い至ったんだよ」
「はぁ? 今更かよぉ」
すでにそんな写真が何枚も飾られていると言うのに、とイルシーは呆れた声を出す。
その言葉にリアンは同意をするように頷いた。
「で、『もしすでに飾られていたら私は他国に亡命しなければなりません』って言うから」
「んで、お前はその格好のまま走ってきた、と……ぶはっ! ハハハハハハッ!」
「ねぇ、しつこいんだけど⁉︎」
「おい、せっかくだからなんかポーズとってみろよぉ。撮ってやんぜぇ」
「するわけないでしょ! 馬鹿にしてるだろ!」
「ああ? ンなもん……当たり前だろぉ」
ニィッと嗤うイルシーにブチッと久々にリアンの堪忍袋の尾がキレた。鋭い動きでワイヤーがイルシーに向かうが彼はひらりと躱しリアンを見下す。
「殺す」
「やめんか。主の部屋を血で汚すのは許さんぞ。殺り合うなら外だ」
殺気立つリアンをファウストが羽交締めにして外へと連れ出した。しかし完全に無力化とはならず、その指先で器用に操られたワイヤーが駄々をこねるようにファウストのスキンヘッドをぺちぺちと叩く。
それにしてもリアンを拘束するファウストの絵面が完全に犯罪者だ。いや、ファウストが大柄で厳つすぎて、リアンが美少女すぎるせいだが。
ニヤニヤと笑いながらイルシーが二人の後を追った。
活動報告より少し手直ししてます。