happy birthday dear…… 1.5話
リアン、ジオーネ、ヴィーシャの会話。
さて、イザンバから急遽コージャイサンのところに確認に行って欲しいと頼まれた三人。誰が行くかというところでリアンが手を上げた。
「ねぇ、僕が行ってもいい?」
「かまへんけどどないしたん?」
「うん、ちょっと……主に用があって」
言い淀む彼にジオーネは不思議そうに首を傾げ、閃いた。
「何か任務に不都合があったか? はっ! もしや服がキツくなったか⁉︎」
「残念ながら変わらないよ」
「もしかして……兄君に告られたとか?」
「そんな事あるわけないでしょ!」
ヴィーシャまでもがニンマリと揶揄うように笑う。どちらも違うとリアンが言えばまたジオーネが首を傾げた。
「じゃあ、なんだ?」
「あ、ペナルティの新しい衣装のことちゃう?」
「違うってば! 期限の事だよ!」
リアンが濁した部分をハッキリとさせれば二人は「ああ」と納得の声を出す。
ジオーネが尋ねた。
「リアンはどうするつもりなんだ?」
「まだ主が望む感情の制御には達していない気がするし……もう少し延ばしてもらえないか相談してみようと思って。…………許可、貰えると思う?」
モノにしてみせる、と息巻いたがやはりそれは難しくて。成長を認められたが主人が望む期限までに達成できなかった事、それを延ばして欲しいと言うのは不敬ではないか。
薄緑の瞳が不安に揺れる様はどこからどう見ても美少女だ。
ヴィーシャは優しく微笑みかける。
「心配せんでもご主人様もお嬢様もお許しくださるわ。なぁ?」
「あたしもそう思う。人間やる気がある時が一番成長出来るものだしな」
「もしかしたらリアンがそういうのを待ってはるかもしれへんで」
「何だと⁉︎ ご主人様をお待たせするな! お嬢様からのお使いもある! リアン、走れ!」
二人の言葉に、ジオーネの勢いに背を押されリアンはパッと顔を輝かせた。
「うん! じゃあ、行ってくるね!」
言うや否やリアンは駆け出した。
それを満足そうに見送っていたジオーネの隣でヴィーシャがボソリと一言。
「着替えさせんで良かったん?」
「あ……」
まぁ彼の行き先は主人のところだ。懸念があるとしたらイルシーが揶揄い倒すことくらいだから美少女メイド姿でも大丈夫だろう。その時はファウストに任せよう。
最年少の成長という名の著しい変化にヴィーシャは楽しげに顔を綻ばせる。
「ふふ、ご主人様はもちろんやけど、ほんまお嬢様にも敵わへんなぁ」
「そうだな。まだ自尊心の低いところも見られるが、お嬢様自身も変わってきている」
ちゃんと努力をしている事が分かるから。彼女たちは見守り続ける。
「よぉあんな素直に育ってきはったもんやわ」
「兄君もな。ご主人様とは友人関係だそうだがなんというか、毒気が抜かれるというか」
「あれはお嬢様の男版やな。ご主人様が気を許さはるのも納得やわ」
良く似た兄妹。その存在はどちらも主人にとって癒しとなっているのだろう。
ヴィーシャの言葉に同意して、しかしジオーネが真剣な声音で言った。
「全くだ。ヴィーシャ、手を出すなよ」
「……なんなん、あんたらは同じ事言うて。ウチの事なんやと思てんの」
「何って男を誑かす悪女だろう?」
その発言はジオーネの肩を強めに叩いた景気のいい音で相殺する。
「いたっ!」
「そない言われてウチ悲しいわ。あー、悲し。涙止まらへん」
顔を伏せるヴィーシャに叩かれた肩をさすりながらジオーネは口を尖らせた。
「褒めたのに……そうやってすぐ泣ける所が悪女らしいじゃないか」
「褒め方勉強し直してきぃ」
しくしくと流れた涙は瞬きの間に消え去って。アメジストがご機嫌斜めにそっぽを向いた。
いくらヴィーシャと言えど主人の奥方の兄を誑かしたりはしない。
活動報告より少し手直ししてます。




