死霊術師はロボットを開発したい
「…ここは、どこだ?」
俺は新規システム納品のためのデスマーチで、徹夜作業中だったはずだ。
こんなトンネルみたいな場所に居るはずがない。
「暗い…けど、視えないことはないな」
壁にコケみたいなモノが生えていて、微かに発光してるようだ。
ギリッ
物音に振り返ると、そこには…
「ガイコツ!」
骨格標本さながらのガイコツが、ゆっくりとこちらに歩いてきていた。
「うわーーーーーーーーー!」
慌てて回れ右して走り出すが、程なく行き止まり。
壁に背を預ける。
「コスプレとかホログラフィの可能性は…」
目をすがめて観察するが、
「…なさそうだなぁ」
俺ってこんな時は肝が座るんだな。
何か得物になりそうなモノを探してる。
「あった!」
足元にソフトボール大の石が落ちてた。
「無いよりマシ!」
拾いあげて具合を確かめる。
「距離のあるうちに投げるか…?」
いや、投擲に自信はない。外して得物を失う事態は避けたい。
ならば鈍器として叩きつけるのみ!
近づいてくるのを待って、
「おらーーーーーーー!」
頭蓋骨に向けて振り下ろした!
パキーン!
意外に軽い音を立てて頭蓋骨が陥没したかと思えば、ガイコツが崩れ落ちた。
「ふう」
いま気付いたが、ずっと呼吸を止めていたようだ。
鼓動と呼吸が凄いことになっている。
ポン♪
軽快な音に視線を下げると、ガイコツの残骸の上にポップアップウインドウらしきモノが浮かんでた。
【使役しますか?】
▶ はい
いいえ
「ゲーム系異世界なのか…」
疑念は尽きないが、指はためらいなく【はい】へと。
途端に立ち上がるガイコツにビビるが、ピクリとも動かないのを確認して安堵。
ポン♪
再び立ち上がったポップアップウインドウは胸元に。
【直進】
「コマンドか? これだけ?」
試しに押してみるとガイコツが歩き始めて…って慌てて避けた。
そのままガイコツは行き止まりの壁に向かって歩き続ける。
【停止】
気付くとポップアップウインドウの内容が代わっていた。
とりあえず【停止】を押してガイコツを止めてやる。
ポップアップウインドウは再び【直進】に。
「直進と停止のみってコトか。たったこれだけでどうすりゃいいんだ…」
前途多難な道のりの予感に頭を抱える俺だった。