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クールビューティーな幼馴染が俺にだけ激アマ世話焼きすぎる。

「うわっめっちゃ美人」


「すげえ脚長いなモデルかよ」


男子生徒の視線をひときわ集める彼女。名前は吉良恵きらめぐみ

彼女は俺の幼馴染だ。



今日は学園の入学式当日、新入生代表挨拶を行う女生徒に皆の視線が注がれていた。


「新入生代表って入試成績トップがやるんだろ?あの美貌に加えて頭まで良いのかよ」


後ろの方で男子生徒達がはしゃいでいる声が聞こえる。


彼女は壇上でまるで緊張など感じさせないようなキリッとした表情でよどみなく淡々と挨拶をこなした。


そして入学式が滞りなく終了してクラスへと移動することになったのだが……


「よっしゃっ俺、吉良さんと同じクラスだわ!ラッキー!」


クラス内で先ほど入学式で騒いでいた男子生徒の喜ぶ声が聞こえた。


ということは、俺も恵と同じクラスらしい。俺は自分がどのクラスなのか確認するので精いっぱいで他人を気にしている余裕はなかった。だから今、初めて幼馴染と同じクラスだということに気が付いたという訳だ。


その話題の渦中にいる、恵はまだ教室には来ていなかった。


恐らく、代表挨拶を終えてからもまだ教師と何か話すことでもあるのだろう。



そんなことを考えていると、その彼女が教室へと入ってきた。


すると先ほどの男子生徒が我先にと恵の方へと駆け寄っていった。


「吉良さん、近くで見てもすっごい美人だわ!マジテンション上がってきた。これからよろしく~!」


男は足早に恵の方に近づくとめちゃくちゃ軽薄な挨拶をぶちかましてきた。


まずいぞ……恵にあんな態度をとったらどうなるか……


幼馴染の俺は恵の一番嫌がることを理解していた。


それは、自分のペースを乱されることだ。彼女は昔からまるで猫のような性格で、非常にマイペースだった。自分のリズムを崩されることを何よりも嫌う彼女は当然、こういう軽薄でハイテンションな人種を苦手としている。


しかし、当然初対面でそんなこと分かるはずもなく……


「………」


彼女は何も言わずその男子生徒を一瞥いちべつすると、何事もなかったかのように自分の席へとついた。


男は彼女の威圧感と無視されたという事実に茫然自失となっており、しばらく立ち尽くしていた。


俺はその男に同情した。彼はいくら軽薄な挨拶をしたとはいえ、恵に罵倒されるわけでもなく睨まれるわけでもなく、まるで初めからそこに存在すらしていないかのように扱われるのはあまりに酷だと思ったからだ。



すると、恵はこちらに気が付いたのか、おもむろに立ち上がり俺の席へと向かいだした。


「同じクラスだったんだ。これからよろしくね。それと大丈夫?顔色が少し悪いようだけど」


先程までのクールな態度とは打って変わって、心配という面持ちで俺に話しかけてきた。


「恵……うん。大丈夫。これからよろしく」


俺は無難に返答した。だって俺の顔色が悪い理由は、彼女のあの態度の恐ろしさが原因だと明かす訳にはいかなかったからだ。


「そう……ならいいけど…。もし体調が悪くなったら言ってね?保健室まで連れていってあげるから」


「ありがとう恵」


俺は、恵の態度の変化が嬉しくもあり恐ろしくもあった。


というのも、彼女のこの甲斐甲斐しい世話焼きな一面と冷酷とも言えるクールな一面とのギャップが激しすぎてどっちの彼女が本当の彼女なのか時々分からなくなる。

でも、そんな自分しか知らない彼女の一面を知っているという嬉しさも同時にあった。



放課後には他クラスの男子生徒でさえ恵とお近づきになろうと、わざわざこのクラスまで出向く者まで現れた。俺は彼女と幼馴染なため家が近所にあった。だから一緒に帰ろうと思っていたが、その男たちに阻まれてなかなか難しい状況にあった。


しかし、そんな男共も彼女の先ほどのような辛辣な態度によって意気消沈して去っていく……


最初は物凄く人だかりができていた彼女の周りもどんどん人が減り始めて残った男はとうとう俺だけになってしまった。


「やっと一緒に帰れるわね」


彼女はそう言って微笑んだ。―――




―――「あなた、そう言えばもうどの委員会に入るか決めた?まだ決めてないんだったら私と同じのにしなよ」


昔からそうだ。彼女は何かと理由をつけて俺を同じ委員会や部活動に入れたがる。


それに気が付いた時、俺はやっと今まで恐ろしく感じていた彼女の冷酷なまでにクールな理由が分かったような気がした。


恐らく彼女のクールな一面は自分守るための鎧だ。容姿端麗で頭脳明晰と圧倒的なスペックを誇っていた彼女は昔から何かと注目されていた。外で戦うための鎧を着なければならないほど彼女は精神的にもろかった。


「あー、なんか委員会の話とか先生からされてたな……ごめん、どの委員会が何をやるかとか全然覚えてない」


「俺は恵と同じのに入ることにするよ」


俺は無意識のうちにいつも決まってこう返答する。


「そんなことだろうと思った。あなたは昔から私がついてなきゃ何もできないんだから……」


そう言う彼女の表情を見ると少し憂いを帯びた笑みを浮かべていた。





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