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山ン本怪談百物語

捨てるな

作者: 山ン本

こちらは百物語七十二話になります。


山ン本怪談百物語↓


https://ncode.syosetu.com/s8993f/


感想やご意見もお待ちしております!

 もうかなり昔の話になります。


 僕と妻はお金を貯めて、とある一等地にある家を購入しました。


 普通ならば手を出せないものですが、どういうわけかこの家だけはとても安かったのです。不動産会社に確認してみたところ、事故物件ではありませんでした。近隣トラブルもなかったとのこと。


 ただ、この家に住んだ人は皆すぐに出て行ってしまうらしく、困った不動産会社は格安でこの家を提供することに決めたそうです。


 「思っていたよりいい家じゃないか。駅も近いし、大きなデパートもある」


 私と妻はすぐに新居へ引っ越すと、家の掃除を始めました。






 「あら?何かしらこれ…」






 庭を掃除していた妻が、花壇に奇妙な箱が埋められていることに気がついた。箱は木製で、下半分だけが花壇に埋っている状況でした。


 「前に住んでいた人が忘れていったのかな。ちょっと開けてみようか」


 気になった私は、妻と一緒にその箱を開けてみることにしました。






 「うわっ!!何だこりゃ!?」






 入っていたのは、ボロボロになった子どものおもちゃ。


 錆だらけになったロボット、真っ黒に変色してしまったカード。前の住民が埋めたまま忘れてしまったのかもしれない。一体何のためにおもちゃを埋めていたのか…


 「あら、かわいい」


 妻が箱の中に入っていた「日本人形」を指さした。ロボットやカードゲームのカードが入っている中で、異質なオーラを放っているこの日本人形。妻はこれを見て「かわいい」と言ったのです。


 「前の持ち主もわからないし…すぐに捨てよう…」


 どういうわけか、私はこの箱にとても嫌なものを感じました。今すぐに捨てないと、大変なことが起こってしまうと思ったのです。


 しかし…


 「捨てるなんて可哀想よ!」


 妻は箱の中から日本人形を取り出すと、愛おしそうに抱きしめたのです。






 ここから私たちの生活は変わってしまいました。






 あの箱の中身は、日本人形だけを残してすべて捨てました。


 日本人形を捨てようとすると、妻は異常なまでに怒るのです。困った私は、とりあえず日本人形だけを残して箱の中身を捨てたのです。


 「そんなに気に入ったのか、それ…」


 妻は日本人形をおもちゃとしてではなく「家族」として迎え入れた。


 毎日髪の毛を手入れして、毎日服の汚れをチェックしている。時々日本人形に話しかけたりもしている。


 これだけならまだよかった。


 「お前最近…ちょっとおかしいんじゃないか…?」


 妻は日本人形の食事を作り、買い物にも連れていくようになった。


 こうなるともう異常事態である。


 時間は深夜。私は妻が眠っていることを確認すると、近所のゴミ捨て場へあの人形を持っていった。しっかりとゴミ袋に入れて、ゴミ山の一番奥へ人形を押し込んだ。


 これですべて解決すると思っていた私ですが、翌日ありえないことが起こったのです…






 「そ、そんな!お前どこからその人形を…!?」


 日本人形を捨てた次の日の朝。


 リビングの椅子にあの捨てたはずの人形が座っていたのです。


 妻に問いただしてみると…


 「朝起きたらあそこに座っていたの。ちょっと怒ってるみたいよ」


 私はゾッとした。






 それから数日間、私は毎日人形をどこかへ捨てに行きました。


 コンビニやスーパーのゴミ箱、山の中で不法投棄されているゴミの中。挙句の果てに川へ投げ捨てた時もあります。


 しかし、あの人形は帰ってきてしまうのです。それも傷一つない状態で…


 「もうこうなったら、あの手しかない!」


 私は深夜に人形を持って車を走らせると、近所の公園へ向かいました。


 ダンボール箱に人形を押し込むと、逃げられないようにガムテープでダンボール箱をグルグル巻きにする。


 そしてライターでダンボール箱に火をつけたのです。


 ダンボール箱は中身と一緒に燃え上がり、数分で灰になってしまいました。


 「これですべて終わった…」


 そう思いながら家に帰ると、私は信じられない光景を目の当たりにしてしまった。






 妻が家の玄関であの燃やしたはずの人形を抱えながら、静かに立っていたのです。


 「お、お前…その人形は…!」


 私が妻へ話しかけようとしたその時…






 「捨てるなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」






 妻はそう叫ぶと、裸足のまま人形と一緒に家を出て行ってしまいました。






 あれから数年、妻はまだ帰ってきていません。






 この家を紹介してくれた不動産会社に聞いてみたのですが、前の住民は老夫婦で子どもはいなかったそうです。


 花壇に埋められていた得体の知れないおもちゃ箱。


 もしかすると、あれは「パンドラの箱」のようなものだったのかもしれません。


 引っ越し先の庭で変な箱を見つけたら、すぐに捨てることをおススメします。


 あの人形が入っているかもしれないので…

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