テスト? なにそれおいしいの? (裏)
side〜採点者〜
積み上げられた冊子の山に目を向けて、思わずため息をつく。私は今、総合テストの採点をしている最中だ。
かれこれ数時間はぶっ通しで採点をしているが、終わる気配が全くない。
正直言って、分量的にはそこまで多いというわけではない。一人につき冊子1冊だけだからだ。それも問題は全部同じ形式、普通に考えるとそこまで時間はかからなそうなものだ。
問題はその内容にある。内容はさまざまな状況の戦場で、どんな判断をするのが適切か示すというものだ。これは選択肢ではなく各々が自由に記述して行く問題だ。
つまり、模範解答が存在しない。ありとあらゆる作戦の意図を読み取り、点数をつける。時には簡単には意図を読み取れないような作戦もある。
そのおかげで一人あたりの採点時間がえげつないほどかかるのだ。
「はあ。何とかならないのかしら」
そんなことをぼやきながら、冊子の山に手を伸ばす。一番上に積み上げられていた冊子をとり、見てみると斎藤武の物だった。
今や聖内学園内では知らない者がいないレベルまで有名になり、さまざまな噂が流れている。が、指揮能力や判断能力に関する噂は耳にしたことがない。
「どんな物なのか、見ものね」
ページを開き、最初の問題に目を通す。そこにはどこまでも基本に忠実で模範的な回答が載っていた。この分ならこの問題は満点、完璧だろう。
「やっぱり、なかなかやるわね」
2問目を見てみると、今度はさっきとは違い奇襲を主にした作戦だった。悪く言えば姑息とも言える作戦だが、これも理にかなっている作戦であった。この問題は満点。
3問目を見てみると、今度は打って変わって好戦的な作戦だった。とはいえ、しっかりと無茶はしないようになっているのでこれも満点。
その辺りから、採点を続けるにつれて違和感を感じ始めた。
確かに状況によっては作戦の方向性というものは同じ人物でも変わる。だが、それでも同じ人が書いた作戦ならば何か通じている点はあるのだ。
しかし、この作戦にはそれが全くない。まるで別人が書いているかのような解答なのである。
「まさか……、わざと?」
もしかして、簡単だったからこそ遊び心で全く違う作戦を考えたのだろうか。私としても、そこまでの能力を持つとは考えていなかった。
最後のページを開き、問題を見る。そこには、考えなんて何もない、ただ敵に向かって全員が突っ込んでいく作戦が書かれていた。
思わず鳥肌が立ってしまう。
これはまさか……、俺には作戦なんて必要ない。そんな物なくても勝利を収めることができるという自信の現れ?
思わずそこで採点の手が止まってしまう。これはどんな点数をつければいいのだろう。作戦としては全く相応しくない解答だ。しかし、ここまで全て完璧な回答をしつつ、それでも底が見えない能力を持っている。
「これは……、私には判断できないわね」
学園長に聞いてみるとしよう。
その後、結局学園長でも判断ができず点数が付けられなかったため、斎藤武の名前は順位表自体に乗らないことになってしまった。




