踊る女
こちらは百物語四十三話になります。
山ン本怪談百物語↓
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友人のS子は、とても霊感の強い子です。
部屋の中で子どもの幽霊を見たり、学校のトイレで不思議な体験をしたり…
このお話は、S子がとあるアパートへ引っ越した時に体験した出来事です。
S子がそのアパートへ引っ越した初日、奇妙な幽霊を見かけたそうです。
その幽霊は中年の女性で、アパートの裏庭で「奇妙な踊り」を熱心に披露していた。
「何してんだろ、あれ…」
女性の踊りは、バレエや社交ダンスのように優雅なものではなく、テレビとかでよく見る「ヘビメタ」のミュージシャンがパフォーマンスで荒れ狂っているような…そんな感じのダンスでした。
何度も飛び跳ねたり、高速で「ヘドバン」のような動きをしていたり、見ていてとても面白かったそうです。S子はそんな幽霊を気にしながら、しばらくアパートで生活を続けていました。
アパートの生活が始まってから数週間後、S子は近所の居酒屋さんでお酒を飲んでいました。S子は店の人たちと仲良くなり、近くのアパートに住んでいることを話したそうです。すると…
「この近くだと〇〇の隣にあるアパート?あそこはやばいよ…」
話を聞いていた店長さんの顔色が変わった。どういうわけか理由を聞いてみると…
「あそこは昔殺人事件があったんだ。2階の部屋に若い夫婦が住んでたらしいけど、旦那が浮気しちゃってね。奥さんは当然怒ったらしいけど、逆上した旦那が奥さんに暴行して…生きたまま『火だるま』にしちゃったんだ…」
あのアパートでそんな恐ろしい事件があったことを、S子はまったく知らなかった。
「火だるまになった奥さんはアパートの裏庭へ飛び出した後、狂ったように暴れていたらしいよ。とても惨い死に方だった…」
その話を聞いた途端、S子の頭の中にあの踊る女の幽霊の姿が浮かび上がってきた。
「そうか、私が見たあの女の幽霊は…踊っているわけじゃなかったんだ…」
その後、S子はすぐにそのアパートから引っ越したそうです。
「さすがに私でもあの状況で住み続けるのは無理…」
S子は少し困ったような顔でそう話していました。