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肉塊

作者: 初月・龍尖



あるところに肉塊があった。その肉塊は生きていた。ただその巨大さゆえ自由に動くことができなかった。

結局、肉塊は死に追いやられた。肉塊が生きることを世界が良しとしなかったからだ。

死しても自由にならなかった。肉塊は肉塊のまま天からも追いやられた。昇ることも残ることも許されず肉塊ははざまの世界をさまよった。どれだけさまよったのかわからないほどさまよった肉塊は生きるために自身の肉を削っていった。肉を削ると同時にはざまの世界に漂うなにかを身体に取り入れていたため肉塊の大きさは変わらなかった。

肉塊は漂いながら自分が何なのか疑問を持ちはじめた。疑問を持つという意識が芽生えたのだ。ただ食い寝るだけだった生活は変わっていないが肉塊自身を占める肉が何か別のものに変わったからであろう。

肉塊思うゆえに意識あり。自身の肉を食い。この部位はこういう旨さが、ここはこうすると旨いと批評する程度の意識しか出なかったが。

肉塊は無頓着だったが肉塊の保有するちからは神と呼ばれる者たちに対抗できるほどだった。

肉塊は暴力とは無縁で食うに困らないはざまの世界を気に入っていた。

それをまた良しとしなかったのは天の住まう神と呼ばれる者たちだった。神たちは自分たちの末席に肉塊を加えてやるから来いと肉塊に言った。肉塊は以前の肉塊ではなく考える肉塊になっていたので神たちの言葉を一蹴しはざまの世界に残ると言った。

神たちは怒り心頭だった。肉塊のそのちからをあてにしてすすめていた計画が頓挫してしまったからだ。

肉塊を滅ぼせ。そう命が下り肉塊と神たちの戦争が勃発した。

天馬にまたがった騎士、馬がいずとも走る戦車、空を舞う兵士。神たちの軍は一呼吸の乱れもなく肉塊へ迫った。

肉塊は孤軍奮闘、するわけでもなくただ攻撃を食らった。矢を、槍を、剣を、炎を、雷撃を、ただはざまの世界を貪ったように。

神たちの攻撃を食らい肉塊はさらなる成長を遂げた。その身を世界へと変換させたのである。

肉塊は世界を開いた。神たちの軍からの攻撃を受けている最中のことである。

その世界は食らった攻撃を元に急速に時を進めてゆきひとつの国家が樹立した。安寧とした世界を守るためにガンである神たちの軍から民を護るために産まれた防御システム。名をカルブ防衛国と言った。

カルブ防衛国は世界の根幹である肉塊の身とその身に住まう民を外敵から守ることに特化した国である。本部は肉塊の頭脳に置かれ国民は世界中に置かれている。民に攻撃が当たらなければ肉塊が食ってしまうのでカルブ軍は防御用の集団であった。

カルブ軍と神たちの軍の戦争の終結はあっけないものだった。カルブ軍を避けて地面へ着地した者は肉塊に食われた。カルブ軍は自ら刺され地に落ち肉塊に食われた。肉塊の世界で産まれた民以外は肉塊に食われる。自然の摂理であった。

神たちは自らを天に座すものとして譲らず永遠に軍を派遣し続けた。肉塊は無限に入るちからに満足して眠りについた。


世界はちからに溢れ世界はセカイを拡げた。


広大なはざまの世界は全て肉塊の支配下に収まった。そして、硬いものをすり合わせるようにはざまの世界の先を削り食らい支配域を拡げていった。

はざまの世界へと侵入できなくなったと神たちが気が付いたのは偶然だった。たまたま通りかかった魔導神が見かけた書類がちからの循環の数値に関するものだった。その数値は上位神へ伝えられていた値とは明らかに異なっていた。

首が飛ぶ。それも、物理的に。魔導神は背に冷たいものが当たった。

緊急査察を行うと天に還元されるはずのちからの大半は運営する世界を削って捻出されていた。そして、刻一刻とちからの総量は減っていた。

神たちは忘れていた。肉塊を滅するために軍を送り続けていたことを。永久を生きる神たちにしてみれば昨日は明日で今日は永遠であった。対策を打ち出したところでもう後の祭りであった。

肉塊の世界は拡がり続け長年をかけて作り上げた天の領域はもう雀の涙だった。

神たちは肉塊に呼びかけた。和解に応じよ、と。だが、肉塊は眠りについており答えが返って来ることはなかった。

傲慢な神たちは肉塊に飲み込まれセカイはひとつとなった。









































自分たちが覇者と錯覚した肉塊から産まれた人類は目覚めた肉塊にセカイごと食べられた。そして、肉塊は再びはざまのセカイをただよった。







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