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トラバルド国

以前の来週という話でしたがちょっと早めてお送りいたします。急な更新申し訳ないです。

 トラバルド国は非常に高い軍事力を持つと言われる軍事国家だけのような様相を呈している国である。


 外観は固い鉄で出来た鋼鉄とも思われるような魔法障壁の施された壁に覆われている。


 壁の中にある国の中でひときわ目立つのが大きな一つの塔のような建物。

 それは若い騎士を育成するための学園のような施設。

 その次に短く突き出たような建物がある。

 昔の外国にあったような尖った屋根をした作りの建物。あれはトラバルド国の王城。


 その他にも自分を見捨てた国とは負けず劣らない大きな建築物が軒並みを連ねてるのが遠目から観察できた。


「いつみても思い出すなぁ、昔に見た香港を」


 建物の形状はタワーマンションが多いわけではないがそれに近いような建築群だ。


 徐々に僕はトラバルド国の国境門へと近づいていく。


 ここまでの道は迷うことはない。

 なぜなら、この国には一度来たことがあった。

 僕はこの国で一番ひどい仕打ちも受けていた。


「ああ、来たくなかったなぁこの国だけ」


 国境の門の両脇にいる二人の警備兵が訝しんだ眼でこちらを見ていた。


「おい、あれ」

「嘘だろっ!? 勇者だ! 奴隷勇者だ!」


 元気な声で僕に向けて手を振ってくる騎士たちに僕は愛想笑いを極力頑張って見せた。


「勇者様、帰還したと聞いたのですがなぜこんな場所に」


 噂の出どころの速さからさすがは軍事最大国とも思われると感心を抱いた。

 だけど、どうやら彼らには一部の噂の身しか耳に入っていない様子だった。


「いや……まあ、その……ですね」

「おいおい、聞いてやるなって。どうせ、奴隷勇者だ。この世界にまだ奴隷で居続けることに幸福を見出してるのさ」

「なるほど」


 僕は心の中で悲しさに涙がこぼれそうだった。


(なるほどじゃないから! どうしてその発想に行きつくんだよ!)


 騎士たちはふざけた会話から一変して、険しい顔でこちらを見る騎士たち。


「それで、トラバルド国に勇者が何ようですか? あ、もしやまた例の……」


「違うよ! 遊びに来たんじゃないんだ。トラバルド国の王様に会いに来た」


「王様に?」


「そうですね」


「なぜですか?」


「それは内密な案件なので口外できませんので」


「…………」


 騎士の目が据わる。


 だけど、僕は動じずに見返した。


 ここで、動じると余計怪しまれるだろう。

 それに過去の経験でこうした目は僕には慣れてる。


「わかりました。勇者様なので通しましょう」


「ありがとうございます」


「あ、もし大会に出るときは報告してくださいね!」


「いや、今日はそういうつもりで来てないしもう出るつもりはないよ!」


「そりゃぁ、残念だ!」


 騎士に去り際に言われながら僕はようやくトラバルド国の国境門をくぐる。


 中に入るとその中はまさに異世界とも思われるような洋風な外観がそこかしこに広がっている。


 建ち並ぶ洋風な施設。行き交ういろんな種族の人々。


 みんながにこやかな笑顔を見せてるがどの人々も衣服から高貴な身分さを漂わせる振る舞いや仕草を見せていた。


「はぁ、息が詰まるんだよなぁここ」


 この国は世界最大の軍事力を誇ると同時に高貴な身分たちが多く住まう民族階級の激しさが特に際立ってる国といっても良い程な場所。


 特に僕が今いるのはトラバルド国の中心街。


 貴族の中でも身分の高い人々が買い物をしてるので有名な『アルバ』だ。


「あれ、勇者様?」


「本当だわ」


 アルバの通りを歩いていくと周囲からの注目が集まる。


 人々の中には失笑したり、歓迎に笑ったりとする。


 大半が歓迎はしてくれているのだが、僕にはその歓迎は正直ありがたくない。


「勇者様また闘技場に出られるなら応援に行きますわ!」


 ファンの貴族だろう人の声に僕は無言でその場から走り去った。


 向かうは遠くからでもその威厳を主張するかのように聳えて横幅に大きく国の中で最も領土を取っている城だった。


 *******


 王城の前にたどり着いて僕はげんなりしながらその外観を見つめてから中に案内された。


 案内された先は玉座の間とも呼ばれる王が居座って、業務を行ったり謁見交渉したりする場所だ。


 その広い部屋、レッドカーペットが敷かれた床に周囲に柱や垂れ幕が下がって堂々とした身分を主張するかのような王国の記章。


 その中でも自らの強い主張をしている一人の男というか女というか判断に困る性別をした人物。


 玉座に座りネイルをしている一人の王。


「まさかな来客者で驚いたわぁん」


 どことなくオカマ口調の王。


 いや、その実にトラバルド国の王はオカマ。


 派手な金属の衣装を着飾り、あちこちに宝飾品を身に着けた人物。


 オトコなのにその肌にはすね毛すらなく顔には化粧、爪にはネイルを現状している。

 それこそがこの国の王、ラッツハルト・トラバルド殿下。


「ラッツハルト殿下、今日はお話があって参らせていただきました」


「話ねぇ。今更我が国は勇者を必要とするような状況にはないわよぉん。だってぇ、魔王はあなたたちと協力して倒したでしょぉん」


「そうですね」


 そう、僕たち勇者はトラバルド国と協力して数多の魔王軍や魔王を討伐したりもした。


 この国には軍事力や戦闘に長けた人々がそろってるために協力は不可欠だった。


「それにねぇ、ウチは帰還できなかった不出来な勇者に話なんかないわよぉん」


「っ!」


 このオカマはずばっと心を抉るような発言をする。


「僕のこともうそこまでご存知なんですね」


「ええ。あなたを見捨てた国とは懇意だもの。にしても、あの国も勝手すぎるわよねぇん。あなたを召喚してさらに帰還できないし勇者の中でポンコツなあなただったから容赦なく切り捨てるなんてねぇん」


「……」


「まぁ、ウチでもそうるわねぇん」


 その王の言葉に周囲が笑い出した。


 僕は奥歯を噛み締めながら極力笑顔を絶やさず言葉を続ける。


「お話よろしいでしょうか!」


「はぁー、いいわよぉん。一応は国の救った英雄だし勇者だから話くらいなら聞いてあげるわぁん」


「なら、単刀直入に。この国にルカル村の少女、ユキ・ラーフなる少女を誘拐していませんか?」


 今にでもこの王につかみかかって暴れてやりたい気持ちがあったが僕一人でもこの国を相手にするのは危険すぎるので下手にうまく出ながらやっていく。


「なにそれ? だぁれ?」


「では、ルカル村は?」


「このアタシがそんな廃村になりかけの場所知るわけないじゃなぁい」


「知らない? では、どうして廃村になりかけとご存知で?」


「あなたねぇ、そんな話をするために来たっていうの? アタシは忙しいのよ」


「答えてください! 僕の恩人の娘なんだ!」


 周囲から騎士がぞろぞろと出てくる。


「ああ、そういうこと。だから、あなたアタシの騎士を殺したのね」


「っ! やっぱり知っていて……」


「理由次第で大目に見るはずだったけど、たかだか恩人ってだけで……呆れたわね。あんな体質しか取り柄のないみすぼらしい村のおっさんが恩人って」


「恩人ってだけ……だと?」


 穏便にすまそうという僕の気持ちを無碍にするには十分すぎる発言であった。


 強く拳を握り僕は剣を抜いた。


「今の発言を取り消せ! 彼に僕は心を救われたんだ! この世界に取り残された僕に彼が駆けてくれた言葉に僕は救われた! その彼を侮辱するならあなたでも斬る!」


「あら、このアタシが軍事力最大の国王と知ってのふるまいかしらぁん?」


「そうだっ!」


「アタシはねぇ、あなたの言葉や態度で騎士を殺したのを不問にする予定だったのよぉん。だから、この件も一部の騎士や一部の人しか知らないの。でも、気が変わったわぁん。あなたは丁度、例の武闘で有名な勇者だし」


 僕は背後から鬼気迫る騎士の斬撃に斬撃を打ち合わせて防いだ。


 だが、頭上から射られた矢に反応をできず身体に突き刺さる。


 痛みはあるがそれでは簡単に死ぬことはない。


 奮い立たせた足腰で頭上に魔法を放つ。


「フェアウィード!」


 暴風が巻き起こって二階のデッキに潜んでいた射撃の騎士を倒す。


 急なめまいが起こって膝をついた。


「あなたのことは魔王の討伐してから研究しているのよぉん」


「矢に何か仕込んだ……な」


「そうよ。対あなた用の毒をね」


「クソッ……」


「お休み、奴隷勇者ちゃん。また活躍してもらうわよん」


 僕の意識はそのまま闇の中に沈んでいった。

一応、次は月曜日の予定をしております。

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