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元モア国の地下2

 灯籠にともされた廊下の先にあったのは広大な遺跡。

 その遺跡というけれども、見た目はどこか神殿のような形をしていた。

 神秘的に思わせるような無機質な黒い岩が四方を囲み、何かの銅像が中央に立っていた。


「久方ぶりじゃの」


 ツキナは膝を折り曲げた。

 その銅像へ敬うがごとく祈祷を行う。


「ツキナさん、遺跡といいましたけどそれは……」


「これはこのモア国の伝導力ともなっていた神なる力じゃ」


 彼女はそう説明するけれども、見た目はただの丸い形をした何かにしか見えない。

 なにか光ったりとか電工パネルがあるとかそういうものがついているわけではなく、ただの丸い何か。


「ちょっと、失礼だけど私にはその神の力っていうほどのようには見えないんだけど」


 ユキさんは容赦なく思ったことを口にしていた。

 それに対してツキナさんは怒りもせずただ悲しみを帯びた目をしながら失笑する。


「そうじゃな。それもその通りじゃ。なぜなら、これはもう神の力など有してはおらぬ」


「は? どういうことですか?」


「そのままの意味じゃ。これはモア国が滅んだと同時にその力も失った。以前はこの丸いものがモア国に魔力を満ちさせ、畑を耕し、災害から守る結界にもなっておったのじゃ」


「それってまるで……」


 その効能をもたらす物に心当たりがあった。

 それは大国と呼ばれる国には確実性として存在している物。


「まさか……魔石ですか?」


「それに近い」


「近い?」


「これは魔石よりも高純度の物。魔宝玉と呼ばれるものじゃ」


「魔宝玉……」


 勇者時代にも耳にしたことすらない言葉に興味がひかれた。

 ツキナさんが言う魔宝玉へ近づいた。


 俺はおもむろにそれへと触れた。


 次の瞬間、かすかな光が魔宝玉から生まれ始める。


「え」


「っ! 魔宝玉が息を吹き返したじゃと!? モア国が滅んで以来起動しなかったはずじゃ。それにこれはもう力がないはずじゃというのに……」


 ツキナさんも驚きを隠せず、魔宝玉へと近づいて声高に歓喜し始める。


「ねぇ、なんか揺れてない?」


 ユキさんが怪訝な顔をしながら訴える。

 俺も地面へと意識を集中してみれば、わずかに何か揺れている感覚がした。


『補助電源起動シークエンスの承諾を樹立しました。補助起動を作動いたします』


 丸井球体から機械的な音声が流れ始めると振動はより大きなものへと変わり俺たちは重力で体が一気に押し倒される。


「一度ここを出ましょう!」


「そうじゃな!」


「もう、いったい何なのよ!」


 慌てるように出入り口を目指す。

 しかし、出入り口がそこにはなかった。


「ちょっと、出入り口はどこ!?」


「たしか、ここに扉があるはずじゃ」


「ないじゃない! 私たちはどうなんのよ!」


 ユキさんが錯乱し始めて、ツキナさんも慌てながら扉を探す。


「二人とも落ち着いて。とりあえず、俺が魔法でどうにかしてみます」


 二人を後ろへ下がらせて手をかざす。

 魔法の詠唱を始める。


「すべてを焼き焦がせ! ファイア!」


 爆撃が壁にぶち当たるが、壁は崩落しない。代わりに何か見えざる透明な壁が一瞬見えた。


「何かで阻まれた?」


「カイムさんでも駄目じゃ私たちどうなるのよ!」


「とにかく、落ち着いてくださいユキさん。俺が別魔法でツキナさんとユキさんに防壁を張ります」


「でも、私に魔法は効かないのよ!」


「そうか、魔法が効かない」


 俺はユキさんの手を取った。


 俺は憶測が立っていた。


 さきほど、壁に見えた透明な壁が魔法によるものであるのならばユキさんの体質が効く可能性。


「ユキさん、壁に触れてみてください。もしかしたら行けるかもしれないです」


「おぬし何を頼んでいるんじゃ?」


 この中で唯一、ユキさんの体質のことを知らないツキナさんが疑問をぶつける。

 その疑問はすぐ解消される。


 彼女が目の前の壁に触れた瞬間、まるで鏡でも割れるような音が響いた。

 同時に壁が崩落しだす。


「魔法を無効化したじゃと?」


「とりあえず、急いで外へ!」


 3人で崩落が始まりだす遺跡から逃げるように外へと飛び出す。


 外へ出た3人は驚愕の光景を目の当たりにした。


「なんじゃと」


 それは突然として元モア国だった場所に立ち込めていた霧が晴れて、かわりに全体を覆う結果のようなものが出現していたのだ。


 地下から突き出すように一つの塔が表れていた。


 塔の先には先ほどの宝玉。


「わけがわからねぇ」


 その塔を見上げながら俺は頭の中がただ真っ白だった。

 塔の存在を考える要因などはなく、覆う結界へと何かの攻撃はじまった。


 結界の向こう側を見ると一隻の飛行船が見えた。


 飛行船には旗印があった。


「あれはイルシアじゃ」


 この動乱の中に気づかぬはずがなかったのだ。

 俺は絶望を味わいながら空を見上げるのだった。

本作を読んでくださりありがとうございます。






次回掲載は3週間後以降を予定しています




そのあたりで掲載を予定しています






作者の都合でしばらく遅筆連載になります。大変恐縮ではございますが何卒宜しくお願い致します。




本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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