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歪な戦

 「ようやく見つけましたよ、王様」


 クーデター軍を指揮していた司祭が開口一番に王子を挑発する発言をした。

 王子は非常に冷静で無言にそれを受け止めるが周囲がその挑発に反応を示すように殺気立つ。


「王様ぁ? わっちあの者たちを斬り殺してよろしいどすか?」

「そうですね、僕はあまり気にしていませんが君たちが気になるというのならば斬り殺して構わないですよ」


 花魁の格好をした女、ムラサキと呼称されていた女性がどこからともなく二振りの日本刀を取り出した。

 彼女は構える。クーデター軍に緊張感が走る。

 その状況かを冷静に観察しながら俺は司祭の男をにらみつけてた。


(このタイミング、明らかに仕向けていたのか)


 自分が捕まらせることも何か想定していたような登場の仕方と敵をたきつけるような発言。

 彼らは今まさに戦闘を仕向ける手立てを整えたような仕草が見て取れた。


(アマリに言われるままにあの時は脅される形で先行したがあれも作戦のうちだったに違いない)


 クーデター作戦の状況下で自分はあの時はカッとなっていたがよく考えればクーデターを起こす際に彼らが敵の情報をすべて下調べているはずだったのにあの場で大きな敵に遭遇することを想定しなかったとも思えない。

 アマリという彼女が窮地に陥る状況を作るはずもない。

 裏をかかれたとも思えぬことがいまさらながらに分かる。


(馬鹿だ。最初から俺の性格を利用してユークラシオン大帝国の兵士の改造された彼女に遭遇させて動揺させて俺を捕縛させる作戦だったわけか)


 そうすることで俺がどちらにしても脱獄する機会は見えていたとみるべきだろう。

 司祭がこちらと目が合う。


「そこにいるのは奴隷勇者様、よもや生きていたのですねうれしく思います!」


 司祭の男はこのタイミングで白々しい嘘をついた。


「何を言ってやがんだよ、お前、最初からこうなることを仕向けていたんじゃないか?」

「何を言うんでしょうか。そのようなこと」

「お前の作戦、今よく考えると妙なことばかりだった。最初のこの往生侵入の作戦の際になぜか、王様のもとに向かう直進部隊の戦力は明らかに弱かった。いくら俺とアマリがいるとしてもそのほかの兵士の戦力は弱い。あの後にアマリと俺が遭遇する兵士の存在も知っていたんじゃないのか?」

「まったく言っている意味が分かりませんね。それよりもここは共闘いたしましょうよ」

「共闘だと?」


 彼が共闘を持ち掛けたときに目の前のムラサキが日本刀から放った衝撃波で攻撃を仕掛けた。

 何人かのクーデター軍の兵隊が斬られてその場に倒れ伏す。


「あんさんら、よわないどすか?」


 倒れた兵士や司祭とアマリの姿は確かにボロボロだった。

 ここに来る前に多くの先頭をしてきたのも伺えた。


「あ、それもしかたないどすか。ここに来る前に多くのユークラシオンの兵士と戦ってきとるやろうしなぁ」

「……」

「ちなみになぁ、王子はあんさんらがここで仕掛けてくるのは想定済みやったさかい。だから、わざわざユークラシオン兵士を術にかけて兵隊としてぶつけたんや」

「ええ、知っていましたよ。ですから、こちらも念入りに準備してきてるんですよ」


 倒れた兵士がまた再び立ち上がる。

 だが、彼らの様子は明らかにおかしかった。

 目が真っ赤になっていて獣のようにうなっていた。


「さあ、行きなさい」


 ムラサキにとびかかるクーデター軍の兵隊たち。

 次の瞬間、彼らは一気にばらばらと肉片になった。


「これだけどすか?」

「ありえません、多くのユークラシオン兵士を倒しその魔力をドレインした兵士ですよ! なぜあっさりと」


 彼がこの時初めて見せる動揺。

 ムラサキはその彼の動揺の隙に目の前にまで迫っていた。

 司祭の男の死を見ると誰もが思った。


「やらせません」

「あはははっ! 奴隷の少女風情がこのムラサキに勝てるとでも思って!」

「勝てます」


 彼女の身体から突然の目をつぶるほどの赤く光輝いた。

 光に目が慣れた先でその場にの者たちは全員が驚愕した。

 アマリの姿の変化に。

 体中からあふれ出す黒い炎がまるで一匹の狼のような形を作り、頭部には2本の角を生やしたその姿。

 それは人とはかけ離れた形容すべき存在。


「よもや、あの者『炎獣』の生き残りじゃったか」


 ツキナがそうつぶやいた。

 俺は彼女の言葉に反応して問い返すように彼女のほうを向く。


「え、それってなんですか?」


 その問いの答えより先にムラサキの悲鳴がこだました。

 悲鳴に吸い寄せられてそちらを見れば彼女の身体が炎にくるまれて彼女は倒れていた。


「あちゃ~、ムラサキやれちゃったか」


 自分の仲間がやれれたというのに非常に冷静な王子の発言に俺は驚いて言葉も出なかった。


(この男は人の情ってないのか)


 その場にいる者たちが唖然としてアマリを見つめ、畏怖する中で一人の女の声が打ち消すようにして響いた。


「王様、あの者わたくしがいただいてもかまわないかしら?」


 それはその場でメイド服を着飾っていた妙な女。

 王子の使用人だと思っていたが彼女が突然とした異常な魔力に俺は気づいた。


「あの女何者だ」


 彼女はゆっくりと歩み寄って、アマリと間合いを立てる距離に立った。


「これはこれは願ってもないことだけど、同盟国の皇女陛下にそんなことやらせていただいていいのですか?」


 王子が戦闘に入る前に彼女へと問い詰める。

 彼女は平然と妖艶な笑みをこぼして返した。


「わたくしはかまいませんわ。少々、彼女に興味がありますので。ただ、私は弱いので部下の手を借りますが」


 指示された部下の一人が前に出る。

 それはアーティーだった。


「いやぁ、俺っちも『炎獣』と戦えるなんてラッキーってね。そんじゃ始めちゃいましょうか」


 次の時衝撃が走る。

 アーティーが武器を構えて攻撃を仕掛けると思った。

 炎獣に向けて。だが、攻撃を行った先は違った。

 それは同盟国相手の皇女に向けてだった。

 倒れる彼女。

 アーティーの剣から滴り落ちる血。


「あれ? 終わったんどすか?」


 何食わぬ顔でムラサキが立ち上がり、ただ俺とツキナだけが状況においてかれる。


「くくっ、あはははっ! ざまぁないなぁ! 亡国の皇女! きみのその好奇心旺盛なところが死を招いたのさ! ご苦労だったよ、司祭アルバート、アマリ。ここからは僕の楽園の始まりだ!」

 

 一人の笑い声が盛大に玉座に響く。

 アマリと司祭も何食わぬ表情でお辞儀を返して平伏した。



「き、貴さまぁああああ!」


 狂人女が主を殺されて腹だって攻撃を仕掛けに行くが彼女の背後に一瞬で詰め寄っていた炎獣アマリに胴体を吹き飛ばされてあっけなく死亡する。


「うるさい女で僕は君が嫌いだったんだよ。さてと、茶番劇も終わりだ。残すは君となったわけだが、僕と少し話をしましょうか、勇者」


 わけのわからぬままの空気に圧倒され、俺は冷ややかな王の瞳に睨まれて硬直したままただうろたえるばかりだった。




本作を読んでくださりありがとうございます。

次回掲載は約3週間後以降を予定しています

そのあたりで掲載を予定しています。


作者の都合でしばらく遅筆連載になります。大変恐縮ではございますが何卒宜しくお願い致します。


本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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