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クーデター作戦外伝  ミストラーテとの任務3

  僕は今現在、とある農村に来ていた。

 周囲は田んぼに囲われたひっそりとした静かな村。

 しかし、今その村には活気に満ち溢れた生気というのを感じはしない。

 村だからとかいう理屈な理由ではなく、ごく単純な見たまんまの答えであった。

 村の周囲で作物を育ててるであろう田んぼは焼け荒らされ家屋の数々は半壊していたり、村人たちには負傷者が多い現状。

 任務で聞いていたように村が襲われているという現状を表しているような惨状が目に見えて明らかになっていた。


「ひどい! こんなのひどいよっ!」


 村の現状を見て知ったミストラーテさんは悲痛な声を上げた。

 それは彼女にとっては自分の生まれ育った村がこんな状況になっているのを見れば悲しい声も出るだろう。

 何よりもわかっているから救援に来たけれど


(手遅れに近いですよね)


 僕は口に出さずとも現状を俯瞰的に見てそう解釈する。


「ミストラーテ、お前さん来るなといっただろう!」


 村から一人の老人がミストラーテさんへと歓迎をしないような口ぶりを言いながら近づいてくる。

 彼女はその老人に向ける目は温かなまなざしをしていた。


「おじいちゃん! いくら何でも心配になる! だって、ここはアタシの村なんだよ」

「だからと言って、村を出て行って国の偉い騎士になったお前にはもう関係のないことだ! いくらこの村がピンチになっていても国から支援を受ける気など毛頭ない。村のやり方でどうにかするとあれほど手紙にも送っただろう」

「だとしても、心配なの!」


 どうやら、老人は村長のような立場であり、ミストラーテさんの祖父に当たる人物の様子だった。

 村長にとっては一度村を見捨て孫娘が帰ってくるのを快く思わなかった様子。

 それどころか国を嫌っている様子が見えた。


「おい、国の騎士が今回だけ救援に来たってか」

「ふざけんなよ、ミストラーテがいるからだろう」


 村の連中の態度もなんだか国を信用していないような文句を言ってる。


「おじいちゃんがどう思うが私はここを救うよ。何があったか詳しく話を聞かせて頂戴」

「話すことなどない。村の問題は村で解決する。国のような下種な連中に力など借りん! いくら孫娘であっても国に売った人である奴に力など借りるか!」

「おじいちゃん! 治療だって必要な人がいるでしょ!? 国の援助とかにこだわっていたらその人死んじゃうよ!」

「うぐっ!」

「実はアタシ今日は勇者様と来たんだ。勇者様なら色々と助けてくれるし治癒魔法ができる。だから、少しでも村人を救いたいならせめて治療の手助けはさせて」


 ミストラーテの強引な押しに村長が折れた空気が流れたとき爆音がとどろいた。


「くそっ、また奴らじゃ」

「奴らって?」


 村の近くの森の道を抜けて出てくる黒い衣装に身を包んだ連中が現れる。


「おい、今日もお前らから一人魔王様の贄の選抜に来てやったぞ。感謝しろよー。ぐひひ」


 一人の黒い連中の集団のリーダー格っぽい男が薄汚い麻布を手にしてなんとも傲慢な態度で村人を脅すような発言をまくしたてた。


「ねぇ、おじいちゃんあの人たち何かな?」

「あやつらはこの村を襲った魔王の傘下の連中じゃ」

「そう、あの人たちが村を襲ったのね」

「おい! 何をする気じゃ! お前が手を出すことはわしが許さんぞ」


 村長がミストラーテさんの行動を止めるまでもなく相手のほうからこちらの存在へと気づく。

 それはそうだろう。

 何せ僕たちの装いは村人とは全然違うくらいに位の高いような人物の装いをしている。

 何よりもミストラーテさんは馬鹿正直に今は騎士装束だ。


「おい、そこのお前、まさか帝国の騎士か」

「そうよ、アンタたちがアタシの村を襲った連中ね」

「あたしのむらぁ?」

「そう、この場所はねアタシが生まれ育った大事な村なの! その村を襲ったということはアタシの敵になったのよ!」


 敵対的態度を示すミストラーテさんの威厳に相手の男どもは笑い声をあげた。


「あはははは、いくら国の騎士でも女一人で何ができる?」

「今アタシのこと馬鹿にしたね。もう、それ死刑だから!」


 彼女が攻撃行動を起こす前に一人の老人が彼らの前に歩み出た。

 それは彼女の祖父であり村長だ。


「おぬしらまた性懲りもなくきよったようじゃな。次来たときは容赦なくこちらも攻撃すると言うたはずじゃ」

「おいおい、なんだ? そこの騎士じゃなく村長が相手するのか?」

「ちょっと、おじいちゃん! 何しているのどいて!」


 彼女は取り出した銃の攻撃の射程圏内に自身の祖父がいるために彼女は攻撃を繰り出せずにいた。


「ミストラーテ、おぬしこそ邪魔をするな。これは村の問題じゃ国の力など借りん」

「まだそんなわがままいうの!? おじいちゃん、今はそんな昔のことに意固地に――」

「おい、俺らを放置して喧嘩してんじゃねぇぞ!」


 二人が喧嘩騒ぎを初めれば堪忍袋の緒を切らした黒い衣装の集団のリーダーが村長の体を何かの攻撃で吹き飛ばした。

 それだけではない、村全体が急な揺れを始める。


「こっちも時間がねぇんだ。さっそく数人拉致させてもらおうか!」


 地中から急にミミズのような怪物が現れた。

 それらは村にいた少女たちを次から次へと蛇のように締め上げ捕え始めた。

 必死で母親や父親といった子供たちの両親が抵抗をしてミミズに攻撃をするがそこへと横槍を入れる用に黒衣の男たちが遠隔魔法攻撃を打ち放つ。

 着弾すると火花を放って家屋に飛び火する。


「ぎゃぁあああ!」


 僕はあまりにもその残虐極まる光景に一瞬我を忘れ傍観しきってしまう。

 すぐに体を振るわせて、手を掲げる。


「ウォータルブレイ!」



 手から放たれる水の散弾。

 それらはあちこちにいるミミズたちの横っ腹を打ち抜いて捕縛した少女を開放していく。

 解放された少女たちは急いでその場から逃げる。

 今度は両親に及ぶ魔法攻撃を防壁で防ぎ、村全体へと次なる魔法を行使する。


「オーヴァーヒール!」


 広範囲の治癒魔法である。

 村全体に治癒の領域が展開すると傷ついていた村人たちがみるみる元気になる。


「どういうことだこりゃぁ! てめぇなにもんだ! そのとんでもねぇ魔力は勇者じゃなきゃありえ……まさか」


 敵のリーダーは僕の存在を認識した。

 そのやばさを痛感すると笑いだす。


「くくっ、そうかいそうかい。勇者が村を救いに来たか。おいおい、村長やってくれんなぁ。国の援助は受けないんじゃなかったか?」

「ぐっ、わしらは知らん。そこの者たちが勝手にしたことじゃ」

「なんとも強情だねぇ。しかし、今は村長を追い詰めて殺すようなことができる状況でもねぇな」


 男の目が僕をじっと睨みつけている。


「おい、勇者てめぇ名前を教えな」

「名前を聞くならまずは自分が名乗るべきではないでしょうか?」

「はっ、たしかにそりゃぁそうだ。失礼した。俺は魔王軍幹部のアイザック様だ! 覚えときな。 うんで、勇者てめぇの名は?」

「カイム・ユウシ」

「カイム・ユウシ? どこかで聞いたような……」


 すると集団の一人がアイザックに耳打ちすると彼はびっくりしたように俺を見て大笑いを始める。


「ぎゃははは、まさか最弱の勇者でこれだけのパワーか。しかも、そんな最弱様にやられるとはなぁ。こりゃぁ、てめぇを負かすまでは帰れねぇか」


 戦争になるかと覚悟を考え身構えたがアイザックは「だが」と言葉を区切った。


「こっちも今は準備がいる。何よりもプライドやポリシーってもんもある。明日にまた来るぜ。その時に村長は十分な贄を用意しときな。 それまで待っておくんだな!」


 彼は何かの発光魔法を放った。

 光がやんだ時にアイザックの率いた集団は消えていた。

 僕は一人呆然として視線に気づいた。

 村人の目線を集めるように受けていたことに。



今回は外伝編3話目です。


以前のあとがきでも話をしましたとおりに着想段階で少しばかり長めになるかもしれません。


もうしばし、カイムユウシとミストラーテの冒険をおつきあいください。


次回の掲載の話になりますが、また2週間明けで大変恐縮ではございますが掲載にさせていただかせてください。


申し訳ございません。


本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします

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