クーデター作戦外伝 ミストラーテとの任務2
前回から過去回想編の始まりで今回は2話目です。すみませんがしばらくはこの話が少しばかり続きます。
訪問してきたのは一人の女の子。
茶髪をツインテールに結わえたアイドルのようにかわいらしい小顔な少女。
見た目に似つかわしくない甲冑を装備していて、騎士を装っている風にしかみえない。
だけれど、彼女が本当の騎士なのは明らかだろう。
今彼女は自分の口で『勇者チーム』と『村を救ってくれる』の重要な言葉を告げた。
それは僕がこれから行おうとする任務に該当する要件。
「えっと、ここで間違いないです」
「わぁー! よかったぁ! 間違えていたらどうしようかと思っちゃいましたよ。あの、勇者様はチームって聞いたんですがおひとりさまだけですかぁ?」
「えっと」
彼女がすぐに僕一人だという状況に気づかないはずはない。
彼女の立っている位置からでも部屋の中の様子はうかがえた。
この状況に何と答えをか会えすべきか僕が質問に渋る。
「そういえば、まだ自己紹介がまだでした! アタシ、この度同伴させてもらう大帝国騎士団一番隊のミストラーテ・イリューネっていいます。よろしくです勇者様!」
女性に初めて僕は握手を求められた。
思わず反応に戸惑う。
無邪気なまなざしで僕を見つめながらじっとこちらを見る少女に僕は目を合わせられず背中を向けた。
「あれ? なんか失礼でしたかね。アタシの村では挨拶をするときは握手をするものだったんで勇者様の世界でもこれが普通だと思ったんですがすみません」
「ち、ちがっ」
と僕がその指摘の解釈を間違えだと説明をしようとしたときにいやな奴の声が耳に聞こえた。
「あ? おいおい、ゆうしぃ、お前何仕事さぼって女連れ込んでんだよ」
僕が最も苦手とする男の嫌に絡み口調な声が聞こえてしまった。
「あ、あの私この度任務に同伴する帝国騎士のミストラーテっていいます! 勇者様よろしくお願いします」
「あ? 任務同伴? 騎士? ああ。例のね」
ミストラーテさんがまじめに哲也に自己紹介をすると彼はミストラーテに近づくとまるで値踏みするかのようなゲヒタ視線を向けて観察する。
「チッ、胸がもう少しあれば好みだったなぁ」
「え?」
あまりの哲也のぶしつけな態度の反応にそれはミストラーテさんも驚いた様子でいた。
彼はそのまま彼女の横を通り過ぎて自室に戻る。
部屋にあるかばんをあさって何かを探る。
「お、あったあった」
手にしたのは大人のおもちゃ。
これから何をしに行こうというのか。
「あ、あの勇者様、もしかして任務のこと存じ上げていませんか?」
ミストラーテさんが必死に懇願するように哲也に呼び掛けた。
彼はミストラーテさんに興味をなくしたような視線だけを向けながら僕の頭をその手にしたおもちゃで小突いた。
「あー、その件なら別に勇者全員で行くことはねぇってことで片付いたから」
「あ、あのそれはどういう?」
「ミストラーテちゃんさ、悪いんだけど俺らも忙しいのよ。俺は今から女性と大事な用事があるからさ」
哲也は手にしたおもちゃをミストラーテさんの胸に近づけた。
彼女は悲鳴を上げて彼の手を振り払う。
「おいおい、痛いじゃないか」
「す、すみません。ですが、任務の件はどういうことですか! あたしの村は遊佐h様が救ってくださるんじゃないんですか!?」
「だから、俺らだけは全員行く必要がないってだけ。代わりにこいつだけが同伴するからさ」
哲也は大人のおもちゃを指し棒か何かと思っているのかまたしてもぼくをそれで指した。
「え。だって、魔王軍の一部の可能性もあって……」
彼女は僕を見て自分の手を見る。
「まさか、あなたも村を救わない気で?」
「おいおい、ゆうしぃ、そりゃぁねぇぞ。わかってんだろうな?」
哲也が威圧的な目を向けてくる。
僕は彼に目を合わせる。
「わかってるよ」
「ならいいさ」
「何がわかったんですか!? 何がいいんですか!?」
ミストラーテさんの気持ちなど置いて哲也はそのまま「じゃあ、これで」と言い残して彼女の脇を通り抜け、部屋を出ていく。
出ていく直前にミストラーテさんは強情にも引き留めようとした。
「待ってください! 私の村が襲われてるんです! だから、一緒に……」
「あのさ、今すぐその手離さないとその身体犯してもいいってとらえるけど?」
「っ!?」
あまりにも憎悪するような言葉と彼がミストラーテさんに向けた威圧。
彼女はおびえた表情でその手を放す。
彼は口笛を吹きながら廊下を歩いて行った。
僕は思う、本当に哲也というのは勇者にふさわしくない最低なくず野郎だと。
(どうして僕のような奴よりあいつのほうが優れた恩恵を与えられるんだろう)
ミストラーテさんはというと目じりから涙をこぼして泣きじゃくり始めた。
「そんな、そんなことって……このまま一人で村に行けと? 私の村が村が……」
僕は目の前で泣き崩れる彼女を見ながら苦しい思いをした。
彼女の言う通り村の状況がわからないにしても二人だけではどうにもその災害を対処するには難しいことだろう。
彼女はどうやら僕が握手を振り払ったことを誤解してしまっている。
僕はまずは怒りの前に泣いた女性には手を差し伸べることも必要だと気持ちを落ち着かせて僕は勇気を出した。
「あ、あの、先ほどはすみませんでした。恥ずかしくって……握手返せなかった」
「え」
彼女が顔を上げて僕を見つめた。
「僕だけでは不安かと思いますが任務に同伴させてください。まずは装備を整えに行きませんか?」
「勇者様……」
僕の差し出した緊張に震えたその手を彼女は手に取って僕はゆっくりと自らの名前を名乗った。
「も、申し遅れ……ました……ぼく……カイムユウシ……いいます……ミストラーテさん……さきほどはごめんなさい」
「あ」
「え」
「ありがとうございます、ゆうしゃさまぁあああ!」
彼女は涙を流しながら僕に精一杯に抱き着いてきた。
僕は彼女の起伏の激しい反応戸惑うしかなかったのだった。
今回は外伝編2話目です。
このペースで行くと着想段階で少しばかり長めになるかもしれません。
もうしばし、カイムユウシとミストラーテの冒険をおつきあいください。
次回の掲載の話になりますが、また2週間明けで大変恐縮ではございますが掲載にさせていただかせてください。
申し訳ございません。
本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします




