ギルドでのタイマン勝負2
「こ、このわしが負けるだと……」
酒に酔いつぶれたマスターがカウンター席の裏で倒れていくのが見えた。
倒れた彼の様子を僕はうかがってみると彼の姿がさっきの人間のモノではなく狼の獣耳を生やした姿になっていた。
「そうか、主は討伐派に属したロウジン国の者か」
彼の姿を見てそう呟いた彼女の表情はどこか憂いたものであり、僕は何か声をかけるべきかと思い悩む。
言葉が見つからない。
そんな僕らに対して殺気めいたものが集中し始める。
「よくもギルマスを!」
「そうか。ここに居るやつらはみんな階級が下の者たちでそれも違法なやり方で自由になっておる者たちばかりというわけじゃな」
その言葉に対して一人の男が前に出てくる。
「そうだ。ここに居るやつらはギルマスを含めてあるお方に支援してもらって自由に生きてるんだ! てめぇのように国を見捨てなかった正しい唯一の民想いの王様の手でな!」
またしてもツキナを批判する言葉。
「何言ってんのよ! あなたたちは何も知らないで!」
珍しくツキナをかばうような行動をユキさんが起こし始めた。
それに僕は驚きながら彼女の行動を見守ることにする。
「私だって事実は知らない! どんなふうにあなたたちは伝え聞いているか知らない! けど、ここにいる女は奴隷になっていたのよ。そんな女が逃げたですって? ならなんで奴隷になっていたのよ! そもそも、この人は国の王女でありずっと国のことを後悔していたし最後まで戦おうとしていた人なんでしょ!? どうしてそんな人を信じてあげないのよ!」
「奴隷になっていた? ずっと最後まで戦っていた? 馬鹿なことを言うじゃないか!」
「なんですって?」
「奴隷になっていたのは逃げる途中で奴隷商人にでも捕まったからだろう! 最後まで戦っていたのは我らが王だけだ! そう、リザールブ殿下だけなのだ!」
周囲が騒めいて筆頭して喋っていた男に叱責を浴びせた。
彼は一瞬で口を滑らして自分たちを君主制度から切り離してくれている存在について。
「今何と申した?」
ツキナが物凄い動揺を始める。
「どうしたんですかツキナさん?」
「リザールブ……そ奴はワシが知る限りだともう死んでいる男の名じゃ」
「え」
「なぜなら、そやつのおかげでワシはこうして運よく生き長らえたといっても良い」
「どういうことですか? だって、今アイツらを従えているのはその男だって」
その時にギルドの扉が盛大に破壊されるように爆音と煙が轟いた。
周囲が悲鳴を上げる中で一人の男の癪に障る煩わしい声だけが耳を通り抜ける。
「よう! 元気かぁてめぇらクズ共さんよぉ!」
煙が晴れて見えた先に、ギルドにいた傭兵を踏みつける一人の存在を確認したユキさんが激昂するように男の名前を叫んだ。
「アーティー!」
「よう、また会ったねぇ、ユ・キ」
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