ギルドでのタイマン勝負1
中に入ると西部劇を思わせるかのような古びれた酒場の光景があった。
中に堂々と入っていくアターシアはカウンター席に座る。
僕らもその隣にそれぞれを腰を下ろした。
このギルドのカウンター席でバーテンダーをしているマスターらしき男の方を見る。
「マスター、ずいぶんとこの国は変わったようですね。もしかして、国王が原因ですか? それともこの国は誰かもう一人上がいたりするんじゃないですか?」
「ずいぶんとド直球に質問をしてくる外からのお客さんだ。質問をするならまずは酒を頼んでからにしてもらおうか」
「なら、おすすめをもらいましょう」
「じゃあ、少し待ってな」
マスターはさっそく何かのカクテルを作り始めた。
お酒に詳しくない僕にはわからないがマスターが何か良からぬものを作ろうとしていると思ってしまう。
なぜならば何か妖し気に口元を一瞬ニヤつかせたように見えた。
「どうぞ」
差し出される酒。
オレンジ色のしたカクテルである。
それをゆっくりと彼女は飲んだが一瞬顔を険しくさせた。
「どうだい? 効き目が抜群だろう」
周囲の顔つきの悪い荒くれ者集団が笑い出した。
それはアターシアを明らかに馬鹿にした態度である。
ぐびぐびと飲んで飲み切った彼女にマスターは感心したように「ほう」と感嘆の吐息を零した。
「ずいぶんと意地悪をしてくれましたね。これでもお酒は強い方ですの。さあ、質問に答えてくださらない?」
「誰が1杯で答えるといったかね」
僕はさすがに席を立った。
「アターシアさん行きましょう。ここで得られる情報なんかないでしょう」
「おいおい、元勇者様。君たちはこの場所に入った時点で帰すわけにはいきませんのよ」
周囲には荒くれ集団が取り囲んでいる。
「ここの奴らはねぇ元は冒険者であった人たちでねぇ、ここもギルドであるんですがもう元なんですよ。王族の体制が変化したと共にねぇ。まだモア国があった頃は穏やかでよかったんですが」
マスターはじろりとツキナの方を見ながらつぶやいた。
彼は明らかにこちらの素性をわかっていた発言を繰り返す。
「どうやらこちらの素性がバレてるようですね」
「あはは、そりゃぁそうですよ。この国は今は序列体制があるのはご存知でしょう。国のモノならその証の魔法を施されていますがそれを施されていない者たちが国へと入ればすぐにこの国の監視魔法は感知しますよ」
マスターの言葉に最初から潜入など意味がなかったという意思を伝えられて悔しさに奥歯を噛み締めた。
「僕たちは肉食獣の集団にわざわざ突っ込んだ馬鹿な草食獣ってことですか」
「あはは、そのたとえは最高ですね。元勇者様」
「あなたを笑わせるためにたとえたわけじゃないです。僕が一番気に入らないのはなぜわざわざ国は泳がせるようなことをさせたのかが気に入らないです」
僕の質問に対してマスターが指を鳴らす。
「答えが欲しければ酒を注文ください」
「ふざけないでください! どうせ、答えるきないでしょう!」
「さぁて、それはどうでしょうか。注文すれば私の気分が変わるかもしれませんよ。ただ、どのくらい注文してくれるのかにもよりますね」
明らかに逃がす気もなく答える気もない場の空気で酒など頼むはずもない。
しかし、ただ一人その余興に乗った女がいた。
「いいのじゃ。頼んでやろう、主の気分が変わるまでな」
「なに?」
それはこのイルシア皇国の領土内に存在していた国の王女様であるツキナ。
彼女は勝ち誇ったような笑みで続けて言う。
「じゃが、一人で飲むのもつまらぬ。マスターぬしもつきおうてくれるのよな?」
「ほう、この国を見捨てた王女が私に酒で勝負を挑むということですかな?」
「見捨てたか。なるほど。この国ではそのように通っているのじゃな」
「何を言う! 序列体制前にこの国から逃げ出した王女が何を」
僕は驚いた。
彼女の効いていた話との食い違い。
「え、モア国は今の王族から追い出されたはずじゃあ」
「よせ! カイムよいのじゃ。この者たちにはそういう認識であった方が良いのじゃ」
何かを訴えるようにそれ以上の言葉を抑止させるツキナの意思を僕は尊重した。
彼女は僕らに何かまだ隠している秘密があるということなのであろうか。
「して、マスターよ。先ほどアターシアに出したカクテルはこの世界一強い酒を加えたカクテルじゃな。わしにはあの程度では酔わせることはできん。酔わせたければもっと強いのでこいとだけゆうておく」
「あははは、罪人の王女がどれほどのものであるのか試させてもらいましょう。私もこれでも強いのでねぇ」
周囲が盛り上がり始める。
俺らもゆっくりとその場から席を立ちモア国の姫とマスターの一騎打ちを見つめることになった。
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