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モア国の過去

「出立の目途が立つまでそこでおとなしくしているんだな」


 僕はあの状況下で選んだ選択肢はおとなしく従うことを選ぶしかなかった。

 無様にもアターシアの率いる帝国騎士団に捕縛されて牢屋にぶち込まれた。

 結局またしても牢屋なのだと気分が沈む。


「どうして、あの場で従ったんですか!」


 沈んだ表情でいる僕へユキさんが反抗的な意見を強気に言ってくる。

 終始彼女は抵抗をしていた。

 抵抗をしていても空しく騎士団に抑止させられたのでこうして彼女も牢屋に入れられていた。


「あなたの力でしたらあの帝国騎士団を鎮圧できたでしょう!」

「それは……」


 僕は答えられなかった。

 あの場で確かに帝国騎士団に逆らうことは可能であった。

 しかし、その後のことが何よりも問題だった。

 僕の心情を知ってか知らずか同じく牢屋に入れられたツキナが悟ったように口を開いた。


「そう、喚く必要はないだろうユキさん」

「あっ?」

「お主はだんだんと気性が荒っぽくなっておるんじゃないか? 少しは落ち着いて考えて見るんじゃ。あの場でああも囲まれておったら、いくら不死身と言えど体力はそがれる。それに小僧のことじゃ。どうせ、ワシらの身も案じたことなのだろう」

「っ! そうだとしてもやっぱり素直に従うなんて馬鹿げてたわ。そもそも、あなたがこんな場所で武器をそろえようなんて言ったからこんなことにもなったんじゃないの!?」

「今度はわしへと怒りを向けるか……。 まったく困った小娘じゃ」

「こ、小娘って、あなたより私のほうが年上でしょう!」

「なんじゃ?  忘れたのか? わしは説明したじゃろう。お主らよりもずっと年上じゃ。この見た目はまぁ呪いのようなもんで幼い体つきになっているだけじゃ」

「そういえば、亡国の姫って言ってたっけ……」


 次第に話の方向性が変わってきてユキさんも落ち着きを取り戻してきた。


「なんじゃ? 次はワシの身の上に興味が湧いたか?」

「ちょっとした暇つぶしよ! もうこんな場所に入れられたんだったらあなたのことを教えてもらうくらい良いでしょ」


 ユキさんの言い分に近くにいた俺も少し同意を示すように発言をする。


「僕も聞きたいです。どうして、亡国の姫が奴隷に落ちたのか。それに例のイリア姫が言っていた言葉も気になりますので」

「よかろう。少し話そう」


 そうして彼女はとある昔の今は『神聖皇国イルシア』と呼ばれている国の昔話をし始めた。



 ********


『神聖皇国イルシア』はその昔は名前が違っていた。

『神聖国イルシア』という名の国であった。

 国自体は大きな大陸を有しており、さまざまな国がその大陸に存在していた。

 その中心になっていたのが『神聖国イルシア』。

 『神聖国イルシア』のほかに大陸に存在する国たちは『神聖国イルシア』の領土に存在する同盟国という言葉が正しい国が点在していた。

 大陸も広く国同士の交流もよく行い、多民族国家を築きあげていた。

 歴史やさまざまな伝統を重んじていく国を主張して歴史を生き抜く国がまさに『神聖国イルシア』の体現だった。

 そんな『神聖国イルシア』に全幅の信頼を置かれていた同盟国が存在した。

 『モア国』と呼ばれる国。その国は数世紀前から魔法世界イステアの文明を生き抜いて存在していた古い文化を知る国であり歴史浄土品なども発掘される採掘場などを持っていたりする国であった。

 浄土品の中には祭具殿があり、そこでの行う儀式では貴重な魔法を習得できたり、効能を得ることがあるという特殊な魔力聖域まで存在していた。

 『モア国』ではそのような歴史的文化遺産を持ち合わせているからこそ強力な軍事力も持っていた。それが『神聖国イルシア』の全幅の信頼の証だった。

 モア国はいわば『神聖国イルシア』の大陸の要塞。

 防御の国だ。

 しかし、両国の仲良しこよしの関係が続いてたのは魔王が世界を支配していたころまでだった。

 魔王が殺されすぐの頃。

 当時『神聖国イルシア』は魔王によって殺されたことで王が変わっていた。

 同時に魔王軍の残党が『神聖国イルシア』領の大陸に逃げ込んできた事件が発生する。

 それに対して『神聖国イルシア』と同盟国側で意見が対立する。

 残党を殺す派閥と残党を殺さない派閥。

 厄介なことに魔王の残党の中には女や子供がおり、ただの魔王の傘下ではない魔王の国の町で生きていた民草だったものもいた。

 つまり、あの世の中が魔王の国に逃げて暮らしていた世間で生き抜くのに苦しかった貧困者や浮浪者までもが魔王の残党勢力扱いを受けてしまっていたのだ。

 実際の魔王の残党がどれくらいいたのかもわからない現状をよくも考えないですべてを一緒に考えるあくどい思考を持つ者たちの意見がこの時ばかりは強く出てしまう。

 つまりは殺すことだった。

 それに対して守るべき対象と考えて率先して防衛に回った同盟国の一部。それは『モア国』を筆頭にしたものだった。

 内乱の勃発である。

 その中で悲劇は起こってしまう。

 魔王の残党にも反撃を受け、さらに『モア国』内部でのクーデターが激化した。

 最終的には『神聖国イルシア』の新改革が始まる。

 結果的にあらゆる国が葬られた。

 『モア国』もまた『神聖皇国イルシア』と名前を変えた元『神聖国イルシア』に斬り捨てられてしまう。

 容赦のない裁き。

 歯向かった国の王や民は殺されていく。

 その中で『モア国』の姫たるツキナはーー


「ワシは『神聖皇国イルシア』の新皇帝の手で奴隷として売りに出されたのじゃよ」


 あまりにも悲惨な過去を聞かされて僕はただ頭を下げた。


「すみませんでした」

「なぜに謝る!?」

「だって、だって、 ぼくらが魔王を討伐なんてことをしなければもしかしたら……」

「何を言うのじゃ。魔王は世界を心底闇に落としていく酷い所業を尽くしておった。それを止めてくれたからこそ、今はまだ大きな戦争など起こってはおらぬのじゃ」

「でも、逆に僕は国の中でくすぶっていた闇を広めてしまった。今は大きな戦争を起こそうとしている連中がたくさんいるんですよ」

「そうかもしれぬが、決してお主は自ら率先して勇者を始めたわけではなかろう。言うならばお主を召喚したあの女じゃよ、本当の悪というのは」


 その発言でまるで導かれたかのようにタイミングよく牢屋の前に当の本人があらわれた。


「出立の目途が決まりましたわ。さっそく出てくださいまし」


 悪だくみを企てたいやらしい目つきをしながらユークラシオン大帝国の姫君が僕らへと呼び掛けたのだった。

次回更新はまだ未定です。早くても来週の木曜日以降を予定しておりますが待たせる可能性があります。




申し訳ございませんが気長にお待ちいただけると幸いです。






本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします。

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