謎の襲撃者
今回はいち早くお届けします。
今回は視点が主人公視点ではありません。
トラバルド国という腐った国で司祭という立場を使い諜報活動をしていた白衣の女ミシェルタは自分がいるべき場所に戻った。
その場所は現在、トラバルド国の上空を飛行している飛行船『エトラスシオ』と呼ばれる船内。
船からは多くの魔法砲撃を射出してトラバルド国を火の海に変えていく。
市民が嘆き悲しみながら絶望していく光景が船内の廊下のガラス窓から見えた。
その様子を見ながらミシェルタは思わず笑いがこぼれる。
「無様ですわね」
今まで多くの人を殺してきたものが戦争の被害にでも会わないと思っていたのだろうか。
市民たちは慌てふためくように神様へ訴えてるような表情でいた。
「戻ったようで何よりだわミシェルタ」
「っ! アルシア皇女殿下。ただいま戻りました」
船内廊下の窓から燃え盛る街を眺めていたミシェルタに声をかけたのは煌びやかな黒いドレスを着飾った妖艶な美女。
彼女はミシェルタが使える主にしてこのトラバルド国を火の海にしている元凶。
とある失われた国の皇女アルシアという名の姫。
「例の噂の女のサンプルは回収できた?」
「はい、見事にうまくやって見せましたよ」
彼女は丁重に懐から2本の試験官を取り出した。
その中には赤い液体が入っている。
それはミシェルタがスパイ活動をした理由にも直結するブツ。
「片方が例のルカル村の無効化体質者の女の血液で片方はあの有名な奴隷勇者の血液です」
「奴隷勇者……偶発的とはいえ、彼が関わったのは奇跡に近かった。そのサンプルも手に入れられたのは功績は大きい。褒美を後で遣わすわ」
「とんでもない! 私は私で色々と楽しませてもらいましたので」
「そのようね。あなたからは血の匂いがするんだもの」
「あはは。奴隷勇者に不意を突かれて一度殺されたので」
「なるほど、なおのこと、急な依頼でもそつなくこなせるあなたに頼んで正解だったようだわ」
ミシェルタは眼下に見えたトラバルド国を見つめながらそっと主の顔を見た。
何も感じないような無の表情で眺めているその姿におもわずゾクゾクとした。
「アリシア皇女、なぜトラバルド国を落とす必要があったのか聞いてもいいですか?」
「単純な理由。あの国の行いが我が国へと不利益となる行動を起こしたからよ」
「不利益?」
「あの国はこの船の存在に気付いてしまった。だから消す必要が出たわ。そして、打ち落とす計画もしていたようだったわ。そのためにルカルの少女を拉致したようだったけど」
「では、そのすべてを利用するために……」
「そんな長話はどうでもいいからさっさとあなたも部屋に戻って着替えて仕事してちょうだい」
「すみません、さいごに確認ですけどあの奴隷勇者とルカル村の女は本当に始末しなくてよかったんでしょうか?」
「ええ。まだあの二人には役割があるから。話はそれだけなら部屋に戻って仕事して」
「わかりました」
堅苦しい言葉遣いを使いながら彼女を見送ってドッと疲れて緊張感が抜けると肩をなでおろした。
「クヒヒヒッ、やはり皇女殿下は気迫が違うわぁ。それに楽しませてくれるからいいんだね、クヒヒヒッ」
燃え盛るトラバルド国を見下ろしながらひたすらに笑いが絶えなかった。
「しかし、皇女殿下はあの二人に何かを信頼しているようだけど、この燃え盛る火の手の中でわが軍の兵士からあの二人が逃げ切れるといいんだね」
二人の男女の顔を思い浮かべながらミシェルタは船内の自室へと戻るのだった。
次回掲載は来週の土日どちらかを予定しております。
また、主人公たちの話に戻ります。来週でトラバルト国の話は最終回です。
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