表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/65

巨漢の怪物 

大変遅くなり申し訳ございません。

連載再開です。

「そっちはどうだ! みつかったか?」

「いいや、見当たらない。くっそあの野郎見つけられなかったら俺らがコロシアム行きだぞ!」


 外の喧騒が聞こえるのが止まない。

 僕は王城の廊下の物陰に身をひっそりと沈ませるように隠して騎士の動きを観察し続けた。

 彼らが消える合間を縫って移動を繰り返す。

 やみくもに歩けないのは非常にもどかしいし神経を使い頭がどうにかなってしまいそうだった。


「どこにいるんですかユキさん!」


 涙目になってくる。

 王城の廊下を適度に進みながら部屋の扉を開けて中をこっそり確認もしたけれども的外れな場所ばかりだった。

 目的の人は見つけることは叶わないのかとあきらめかけた時である。


「司祭様っ! このような場所に出られて何かあったのですか?」

「君たちが騒がしいから少し手助けでもしようと思って出てきたんだよ、クヒヒッ」

「手助けなどとそのような……」

「そう言わずにさ」


 妙な白いローブのような装束を着込んだ20代くらいの病弱な女と話す騎士。

 司祭というにはあまりにも若いと思った。

 司祭は騎士の後をついてどこかへと行くのかと思ったが騎士の背後をとるとその首筋に何かの注射を打ちこんだ。

 騎士は一瞬の出来事にビックリしたように司祭様の方を向き、そのまま仰向けに倒れた。


「司祭様……なにを……ぐぅう……」


 あまりにも一瞬だった出来事。

 恐ろしい出来事に僕は思わず息を殺して瞬時に曲がり角の壁際に身を潜めた。

 倒れた騎士を踏みつけながらまるで医者のように眼球をライトで照らして確認し始める。


「いい傾向だねぇ、クヒヒヒッ! この実験は成功だねぇ!」


 騎士が身体を震わせながら目を真っ赤にして身体を起き上がらせる。

 妙に鼻息を荒くして――


「グウウォオオオ」


 獣のようなうなり声をあげた。

 もはや怪物のように思えるその姿。


(あの司祭様とか呼ばれた女、普通じゃない!)


 直感で分かった。

 あの王様の元にいるくらいなのだから普通じゃないのはわかってるがそれを上回るような狂気を感じた。

 その場から反対側に離れて歩こうとしたけれども――


「さてと、隙に後は巡回するといいよ。ただし、しっかりと例の脱走した奴隷勇者は回収してほしいんだね。僕の新たなモルモット候補にしたいからね」


 足は止まった。

 今の発言から多くの推測ができたからだ。

 ゆっくりと壁から顔をのぞかせて女の方を見ようとしたとき彼女はいなかった。


「え」

「なぁんだ、ここに居たんだね」

「っ!」


 背後から聞こえた不気味な声に瞬時に手を振り上げる。

 何かを弾いてそれが床に落ちて割れた。

 注射器だ。


「お前何者ですか?」

「さすがは勇者だね、私も仕留めたと思ったら逆に痛手を受けるなんて思わなかったよ、クヒヒッ」


 背後は一瞬にして取られていたこの不気味な20代の女に。

 白い装束と思ったのは白衣で下にはダボっとしたシャツとタイトなスカート。

 服装はどことなく保健室の養護教諭を思わせる格好。

 彼女本人はいかにも血色の悪そうな肌とぼさぼさな茶髪に目元に深いクマ。

 明らかに服に似つかわしくない素顔をした人物。


「ずいぶんと失礼なことを考えていないかい?」

「そんなことないと思いますよ」

「……まぁいいか。君のことは聞いているよ。特殊な能力を有した存在だとね」

「だったら何ですか?」

「私に協力してくれないかい?」

「協力?」

「そうさ。その純粋な君の能力を私の実験に協力してくれるだけでいいんだね。そうすれば、最強の治療薬を作ることができるかもしれない!」


 彼女の輝いた目に僕の返答は素直に決まっていた。


「嫌です!」

「おや、勇者というのは人助けが趣味のような存在だろう! その結果を生み出す助力を欲している人の手を拒むのかい?」

「あなたのような平気で仲間を怪物に変える人を信用できると思うんですか! それに僕の探し人をあなたは捕えてるはずです! 何処にいるか吐いてください!」

「なるほど、さっきの現場を見られたのはやはり不味ったというべきだね。それに、私が彼女を捕縛している? 何の話か分からないね」

「僕は今一言も探し人が女性とは言ってません。やっぱりあなたの元にいるんですね!」

「…………面倒になりそうだね」


 彼女が指を鳴らす。

 突然として地面が揺れて、地割れが起き始める。

 地面を突き破って一匹の強大な獣が姿を現した。

 いいや、獣と思ったのは一人の巨漢。

 身体が膨張して筋肉で膨れ上がった男。

 意識がないように目が真っ赤に充血していて身体からは妙な赤いオーラが放出していた。

 さらには背後からも『ドドドドドドドドド』とものすごい音が聞こえる。

 振り返るとトラックのように思える勢いで先ほど彼女に替えられた騎士が突進してきたのだ。


「っ!」


 瞬時に僕は跳躍して天井に氷結魔法で張り付いて避けたが、怪物同士は正面衝突を起こしてすごい音を響かせる。

 その音に導かれるように多くの騎士たちもやってきた。


「なんだこれは!?」


 正面衝突した怪物たちは騎士たちの方を振り返る。

 騎士に向かい動き出す。


「あー、まだコントロールが効かないんだね」


 現場では騎士たちが悲鳴を上げながら懸命に怪物と闘争を繰り広げてしまってるのに元凶は我が物顔で知らんぷりな態度を示す。


「どこ行くというんですか!」

「私は面倒事は好かないので退散するんですよ」

「ンナッ!」


 平然と現場を荒らして怪物が空けた穴へと飛び降りた女。


「彼女の行く先にユキさんがいる可能性があるとするなら――」


 そう思って続けていこうとしたが怪物の魔の手が迫って弾かれた。


「くぅ……」


 目の前を見るとあっけなく騎士を蹂躙した二体の巨漢の怪物。

 次の標的を残った自分に絞ったのだとわかった。

 それは今この場で怪物を倒さないと女を追いかけることは困難になってしまったという状況。


「まったく嫌な状況です」


 僕は魔法を発動すると手元に氷で作った刀を顕現する。

 唯一可能とする造形魔法。

 それを構えて怪物へと突貫した。

次回の更新は来週中のどこかを予定しておりますが、また遅くなる可能性もあります。

その際は申し訳ないですがご理解のほどよろしくお願いします。更新は続ける見込みで予定しております。


本作品を読んでくださった方々様、少しでもこのような拙い文章の作品ではございますが面白いと感じてくださったならブックマークよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ