人体実験
遅くなりまして申し訳ございません。。
連載再開です。
今回はユキの状況の話になります。
捕縛された私、ユキ・ラーフの身体からは延々と血が抜かれていた。
この場所がどこであるのかはわからない。
今の私はどこかの実験施設のような地下で体を拘束されて腕に刺された管から血液を多めにどんどん抜かれている。
虚脱感がどんどん深刻化していく。
同時に眠気や寒気も今は襲っていた。
そんな私をただ興味深そうに観察するのは目元に深いクマを作った肌色の悪い20代くらいの女。
「ここまで血を抜いた場合における電気ショックによる反動を見てみましょうか」
彼女が何を言っているのかうまく聞き取れなかったがただ一つの言葉『電気ショック』ということだけが否応なく来るであろう恐怖を考えさせる。
「やめ……ぎゃああああああああああ!」
身体に来る電流。
今まで味わったことのない痺れるという激痛に喉元からあふれ出る叫び。
「ふむふむ、なるほどやはり魔力と対となっている血液を多く抜いていればダメージは通るというのは私の検証結果通りですね」
「…………ぁぁ」
「なんですか?」
「なんで……こんな……」
「なぜってそれはあなたが貴重なサンプルであるから以外に何かありますか?」
「え」
まるで私を実験動物とでも会話をしているかのような返答の仕方。
会話が成り立たないとすぐに理解をした。
彼女は私を放置して実験室の机の上に置かれている容器に入った私の血液に何かの試験瓶に入った紫色の液体を入れ始めようとしていた。
「では、ここからこの抜き取った血液に私オリジナルの毒素を入れてみて……おや、この血液には毒素に対する強い抗体があるようですね。ですが、身体に戻してみてもそれが実現するのか……」
その入った血液はどろどろと色を変色させている。
もはや赤かった血液が赤紫色に変色しているにもかかわらず点滴ボトルに入れて私の腕に繋がれた管を通り私の身体へと戻っていく。
次第に身体は熱に侵されたように熱く燃え上がる。
文字通りに身体は火をあふれ出した。
「熱い熱い熱い!」
「おおおお! 興味深いこれは興味深い! 内部からだと魔法干渉を受けると同時にその魔法を吸収しようと身体が反応を起こしているんですね!」
彼女の言葉の意味が理解はできなかった。
ただ、ひたすらに体全身を焼かれるような痛みなのに身体は焼けることはなくただ痛みだけが全身を支配していた。
「では、この状態で凍結の魔法を行うと」
彼女が試験瓶を手にしてこちらへと投げた。
割れた破片とその中身の液体を私の身体が溶かした。
急な視界の歪みが発生する。
「き、気持ち悪い」
「これは魔法相互反応!? なるほど、身体から発熱している炎は彼女自身が抗体として完成した新たな炎の魔法でそれを氷という愛称の悪い魔法と相殺する現象が起こった。それは彼女に影響を及ぼし、気持ち悪さを生み出したわけですか……なるほどなるほど」
彼女がひたすらにその検証をメモか何かにとっていた。
「いやぁ、ラッツハルト殿下も面白いものを……」
彼女は感心して次の実験でも入る勢いでいた様子でウキウキさせた表情を見せていたのに、ふと静寂に笑顔を失くす。
「チッ、だぁれだ、実験の邪魔をするのは」
何か上を見ている。
痛みの引いた私の身体もある騒音が聞き取れ始めた。
どたどたと誰かが入ってくる。
「ねぇ、ちょっとぉここがアタシの実験室ってわかって入ってきてるのかい?」
「す、すみません! クルテ司祭!」
「まぁいいさ。上で何かあったようだね」
「それが捕縛していた奴隷勇者が逃亡をしまして」
「なに?」
私の耳にも聞こえてくる『奴隷勇者の逃亡』の言葉。
「クヒヒヒッ」
「あ、あのクルテ司祭?」
「ちょっと、いいじゃないの。いい、イイワァ!」
彼女は持っていたメスをやってきた騎士の首に突きさした。
「え……司祭様?」
「クヒヒヒ、クヒッ、クヒヒヒヒッ!」
何度も何度もその仲間であっただろう騎士を刺して、騎士はなんで自分が殺されたのかわからないままに呆然自失の表情で絶命していた。
「あれ? 君死んじゃったのかい。全く」
まるで何事もなかったかのようにそれどころか自分が殺したのにそれすら自覚ないように私のほうに歩み寄った。
「まずはこの死体に君の生き血を入れるとどうなるかの実験をしてから彼には会いに行くとしようかね、クヒヒヒヒッ」
私は彼女の不気味に汚れ切った瞳を見つめながらまだ続く実験に恐怖と死の予感を感じて震えあがるしかなかった。
次の投稿は来週の月曜か火曜日を予定していますが遅れる可能性もあります。その際は申し訳ございません。
本作品を読んでくださっている方様ありがとうございます。
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