絶望と希望
大変長らくお待たせしました。
月曜日予定の更新ができずすみませんでした。
だいぶ遅くなり申し訳ございませんでした。
拙い文章ですが楽しんでくださいませ。
目を覚ました時には自分は王宮の部屋にただ一人取り残されていた。
体中から異臭がして、早くお風呂にでも入りたいという気分だった。
でも、自分は捕らわれの身である。
風呂になどはいることはできぬことはおろか、その場所から抜け出すことはできない。
部屋の扉に向かい歩き、試しに開くかどうかは確かめてみる。
「やっぱだめですよね」
心はどんどんくすぶる様に沈んでいく。
もう気力が出なかった。
ベットの横わきに立てかけてあった剣が目についた。
気づいたら自らでその剣を手にして腹へと突き刺した。
襲い来る激しい痛みは寒気へと変わり次第に意識は薄れて、失う。
数分後、もう一度目を覚ました。
「アハハ……アハハハハハ」
笑いが込み上げた。
死にたいと心底願っても死ぬこともできない身体。
自分が哀れに思えた。
「僕は何のために今まで頑張ってきたんですか! 僕が何をしましたか! 僕はただ恵まれた人生を送りたかっただけなんですよ! どうして、どうして僕だけこんな目に合わないといけないんですか……」
涙があふれ出た。
心の悲しみを訴えるように身体は正直に涙を流す。
思い返される過酷な人生の日々。
勇者として召喚され、いじめられっ子の僕ただひたすらに延長戦で奴隷のように扱いを受け魔王を倒した。元居た世界に帰っても彼らにいじめられるなら――
「そうです……。僕があんな願いを抱いたせいですか? だからなんですか!」
元居た世界の神様にさえ嫌われた男の末路がこれ。
「せっかく……生きる希望を見つけたのに……間違いだったんですか」
ヒトリ・ラーフというやさしいおっさんに救われた言葉が心のよりどころであった。
その彼も死んでその形見ともいうべき娘を救う冒険に出たのが間違いだったのだろうか。
「うぁあああああああああああ!」
「うるせぇぞ!」
僕の叫びに反応するように部屋の外から怒声が聞こえた。
外に誰か見張りがいたらしい。
「クッソ! どうしてこんな見捨てられた勇者の監視なんかしないとならんのか」
外に見張りがいたのは好都合と感じ僕は扉にまでにじり寄った。
「僕をどうしてこんなところに閉じ込めるんですか! 僕は契約をしたはずなのにどうしてどうしてなんです! 身体が臭くていやです! 早くここから出してお風呂にでも入らせてください!」
「うるせぇ! てめぇはまだ信用できないって王様からの命令なんだ! しばらく我慢しろ!」
「いやです! 早くここから出してください!」
「うるせぇ! 相棒にも見捨てられた勇者風情が黙っておとなしくしていろ!」
「え……今なんて……」
外で「しまった」という言葉が返ってくる。
「どういうことですか! 彼女が僕を見捨てた? なんですかそれはどういう意味ですか!」
相棒というのは明らかに『ユキ・ラーフ』のことである。
その彼女が僕を見捨てたというのはどういう意味なのだろうか。
「はぁー、俺が言ったということを言わないなら教えてやるぜ、ゲへへ」
「約束します」
「お前はさ、身売りされたんだよ。お前の相棒の女は優勝賞品として一切トラバルド国が自分の周囲や自分に関わることを禁止にした上にこの国から安全に脱出する保証と多くの潤沢な資金をを提供してもらうことを約束したのさ」
「え……? そんなの普通の……優勝の褒賞で……」
「馬鹿が! あのラッツハルト殿下が簡単に優勝者を毎年逃してると思うか? 全員死んでるんだよ」
「っ!」
「もしくは実験体になってたりするけどなぁ、アハハハ」
「で、でも! 僕は一度この国から出してもらって……」
「あれはてめぇは他国の士官であり、勇者だったからさ。それに魔王っていう強大な奴がいたがゆえに強力な騎士は殺すに惜しかったんだよ」
「っ!」
衝撃的な事実を突きつけられて僕は頭の中が真っ白になった。
「そうか……そうだったんですね……あはは」
「なんだ? 哀れに思えて死にたくなったか? でも、残念だよな。お前は死ねないんだから」
「そうですね……悲しいです。うれしくて悲しいんです」
「あん?」
「僕はようやく思う通りではなかったにしても守りたいと思った人を守れたんですね」
僕の頭の中が真っ白になったのはうれしさだ。
それは裏切られたことは悲しかった。
でも、それよりもヒトリさんに恩返しをしっかりとこの身を支払うことで達成できたのならばそれはそれでよかったと感じてしまった。
「何を馬鹿なこと言ってんだよ」
「たしかにユキさんが僕を見捨てたことは悲しいけど、元々僕と彼女はこの場所で初めて会った赤の他人です。それに僕は彼女をどんな方法でも救うつもりでいました。だから、裏切り行為であってもこの身が犠牲になって彼女が救われたのならそれでもいいんです」
「ハッ! とんだ自己犠牲精神だな。でも、これを聞いてもまだ恨まずに言えるか? あの女は自らが人質になる作戦に同意してお前が騎士の契約に同意するよう仕向けたのに一躍買ったんだぞ」
「そうなんですね……そっか……」
思いのほか恨みは出なかった。
もともとあの最後の試合で僕のことを見ていた彼女の目を見るとそれは仕方のないことだったように思えた。
「僕は今この身が汚れた結果があったことを聞けただけで心が救われてますよ」
「チッ、さすがは奴隷勇者か! ドM野郎が!」
「よかった……」
僕は涙がこぼれた。
先ほど自分を突き立てた剣を胸に抱いた。
「ヒトリさんに恩返しできたんだ……」
「ああ、そうか。そういえばあの女はヒトリ・ラーフという特異体質者の娘だったな。なら、今頃褒賞なしに実験体行きか」
「え、どういうこと? さっきは褒賞で抜け出したって!」
「ああ、そういったけど無理無理。あくまであの女が普通の奴隷だったなら別だったがあの女は特異体質なら実験体になってるだろうなぁ」
「じゃあ、今はどこかに捕らわれてるっていうことですか?!」
「だろうよぉ、ギャハハハハ」
ギュッと剣を握りしめ奥歯を噛み締めた。
「さっきの約束反故にさせてもらいます」
「あ? 約束ってなんの?」
息を吸い込んで大きく叫ぶ。
「ありがとう! 優しい騎士さんは全部教えてくれて本当に優しいなぁあああ!」
慌てたように扉が開かれて騎士が入ってくる。
「てめぇ! その口閉じr――え?」
騎士の胴体に僕は剣を突き刺した。
胸元に鎧をしていなかったのは助かった。
茶髪の20代くらいの男性騎士だったようで間抜け面が僕を見ながら床に倒れ伏していく。
「てめぇ……ぐふっ!」
「ありがとう」
僕は止めに剣を抜いて首を刺した。
今の声で多くの騎士が集まってくるのは予想できた。
集まる前に扉から忍び足で飛び出して廊下を隠密忍者のように疾走した。
「待っててくれ! ユキさん!」
次回更新は未定とさせていただきます。
早くて来週には更新をします。日曜日を目途に立てております。
一刻も早く更新できるように頑張っていきます。
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