最後の試合 後編
長らくお待たせしました。
今回で闘技試合編の終了です。
ギーヴの攻撃で僕は意識を失い眠ってしまっていた。
その時、夢を見ていた。
夢というよりも走馬灯に近いのかもしれない。
過去に経験したあらゆる勇者の冒険の時の出来事。
その時に起きたある一部のことを思い出した。
それは魔王の戦闘際に起きたこと。
「クソッ! これじゃあみんなが全滅だ」
「おい! どうすんだよソウジ! このままじゃあ全員死ぬぞ!」
僕のチームメンバーでもある二人の焦りが肌身に伝わる中で僕は伊藤マリアのことを任されていた。
彼女はチームメンバーの中で唯一の女性でもあり、ヒーラーも兼任する戦闘職の少女でもあった。
だけど、魔王の戦闘時に彼女は負傷してしまい、僕は彼女の命を守るために物陰で彼女のことを見守ることを任されたのだ。
だけど、魔王の広範囲の攻撃が物陰さえ粉砕して僕にまで被害を及ぼす。
「みんな大丈夫かい?」
「くぅ……畜生、マリアァアアア!」
広範囲の攻撃で僕とマリアのいる地点を見て、真藤哲也が吠えた。
あの時はよく思い出す。
だけど、その時にマリアは平気だったのだ。
なぜならば、その時起こった奇跡のような出来事が僕に及ぼしたことが要因で。
「そうか、そういう意味の不老不死というわけなのかい」
僕はこの時に本当の自らの力のあり方の意味を知ったんだ。
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今はその解放で脳に極度の負荷がかかっていて意識を保つのがやっとだった。
「まさか……解放しているのか!」
僕の力の根源の解放に畏怖してるギーヴ。
自らの肩を抑えながら血の気の引いた顔を浮かべた。
「くそっ! くそがぁああ!」
彼は吠えながらも膝をつき、うまく立ち上がることすらできずにいた。
彼の身体に今巡るのは僕の力による影響で起こる原因不明の疲労や麻痺という症状。
「お前は僕の本当の力をあの戦争で経験して見たからわかるだろう。もう、お前の負けだよ」
「グゥッ! まだ、まだだ!」
ギーヴはそれでも踏ん張って立ち上がった。
「立たないでくれよ。今の僕をこれ以上苛立たせるな」
「ボウズ、悪いがオレもこれ以上足止めを食らうわけにもいかないし負けるわけにもいかないんだ! この場で勝たなければ死ぬだけなんだぁあああ!」
ギーブは斧を手にして迫った。
僕は一瞬で脳の中で何かが焼き切れる音がした。
同時に意識は『外』の方へとはずれてゆく
「グガァアアアアア!」
僕は意識とは無関係に吠えてその常人離れした脚力で跳躍した。
ギーヴがその斧で僕の身体を切裂いた。
腕は斬れたが僕の身体が痛みを感じないように開いた口に並び立つ牙で一度噛みついた肩口の噛み傷へとさらに噛みついて肉をちぎった。
ギーヴはついに斧を手から離して素手で僕のことを引きはがそうとする。
僕はその事に応えはしない。
今はとにかく彼を食いたい食いたくてたまらない。
そんな光景を観客やその場に放置された私も見続けた。
さっきまでの平然と仲間を思うように助けてくれたように語った彼だとおもうソイツ。
ソイツは殺気の彼とは別人のように目の前の敵を食っていた。
「ナニコレ……」
あまりにも残虐無比な戦闘に誰もが息をのんだ。
目を背けて言葉を失う。
ギーブの身体が動かなくなるとその死体の上で吠える一人の怪物。
「グガァアアアアアアア!」
彼は死体から降りて周囲の観客に目を向けてからぎろりと赤くなった瞳が私を捕えた。
「ヒッ、こ、来ないで!」
ゆっくりと怪物は歩み寄り獣臭い息を吐き私へ手を伸ばした。
そのままゆっくりと、意識を失うように倒れ伏す。
『えー……試合終了です! 試合は終了です! 第30回のトラバルド国闘技試合の優勝者は奴隷勇者のチームの優勝だぁあああ!』
ただ、耳に聞こえた優勝のアナウンスだけが聞こえ、私は目の前の倒れた怪物を見ながら彼のことが信用できなくなっていた。
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金曜日か月曜日の更新を予定しております。
何卒、お待たせいたしますが長い目で見て、暖かな目で読んでくださると幸いです。