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18 大型掘削ユニット設置任務。華麗に戦って華々しく全滅せよ

1


 ブリーフィングルーム。


 空間に開いた大型ウィンドウには、例の如く軌道上から投下されてくる物資の降下ポイント記されていた。


 航空機部隊の士気は極端に低い。それもそのはずで最近ではこの手の任務の全てが、レインの操る新型機の単機任務となっているのだ。


 今回も自分達に出番はないだろう。


「先の海底調査の結果を受けて大型掘削ユニットが投下される。これは我等が念願の地球上拠点を築くための大きな一歩となる重要な任務だ。今回は航空機部隊の任務が成功のカギとなる」


 その言葉にスティーブは胸に沸き立つような何かを感じた。


 久しぶりの航空機部隊主役の任務なのだ。レインはもっと難易度の高い任務に当たるか何かで参加出来ないのかも知れない。


 だが、そんな事はどうでも良い。また飛び立てる。そして何より今回は主役なのだ。


「重量級かつ大型で、自立航行の術を持たないユニットを曳航するのは極めてリスクが高い。従って今回はユニット設置ポイントに直接ブツが降下してくる。

 ただし、回収しようとしなければユニットの設置が敵にばれてしまう可能性が高い。そうなれば敵は大規模な海底調査を始めるだろう。

 そこで今回は回収失敗、つまりは護衛艦に偽装したユニットを敵に撃沈されたかのように装い海底に沈める。

 従って航空機部隊の任務は、全力でユニットを護衛し最終的に全滅、機体放棄と言う流れになる」


 スティーブは期待と異なるあまりの任務の内容に項垂れた。


2


「酷い任務ですね」


 この任務に伴って、スクラップ同然の旧型機が先行して搬入されていた。そんなものを見れば、よりやる気も無くなるだろう。何と言う屈辱的な任務なのだろうか。


 その気持ちを押し殺しつつ重い口を開く。


「まぁ、そう言うな。上手く負けるって言うのはそれなりに難しい」

「降下ポイントに集まる敵戦力を考えると、全力でやったって負けるんすよ?」

「それを言うな。悲しくなるだろう」

「今回は、意識転送も行わない遠隔操作ですし、気軽な任務と考えることにしましょうよ。それに、自身の操縦ではないとは言え、今回あれに乗れるんすよ? わくわくしません?」


 隊員の一人の視線の先には、醜悪極まりないデザインの機体が鎮座していた。長い触手を従えた一見するとイカかタコ、もしくはクラゲの化け物に見えるそれは、異次元の性能を誇るレインの専用機体である。


 今回の任務、スクラップ機体の遠隔操作をするにあたり、サーバーにレインの機体が選ばれたのだ。


 確かにこの空母からでの遠隔操作では、いかに衛星を経由するとはいえ、常に通信電波を発する事となり、空母を敵に晒す事になってしまう。


 そこで選ばれたのがレインの機体と言うわけだ。確かにあれであれば、敵に見つかろうとも無敵状態である。


「お前は気楽だな? 気まずくないの?」

「いや、それはそうですけど……」

「それを言うなら、あいつの方がもっと気まずく感じてるんじゃないのか?」


 隊員の一人が言ったその言葉に一同が黙り込んでしまった。


3 レイン


「それにしても、何故あんな提案したの?」

「海面浮遊型の使い捨てサーバーなんかよりも、ネメシスの方がよっぽど信頼性があるし安全だと思っただけだ」

「そう」


 短く答えた妃花は瞳を細め柔らかい笑みを浮かべた。


 航空機部隊の隊員達がこの機体に意識転送されるとはいえ、彼等にはそれぞれの機体の仮想コックピットが割り当てられている。だから同乗していると言う感覚は皆無だ。


 それを意識するようになるのは、彼等が任務を終え機体を放棄した後だろう。


 彼等が機体を放棄すれば、容量を食っている彼等の仮想コックピットは消え、その意識はこのスペースに送られる事となる。


 今宵、ネメシスの仮想コックピットには自分を含めシートは10席がデザインされている。戦闘機と言うより、もう殆ど小型旅客機のような状態だ。


 まぁ、戦闘時は理論神経接続を使って操縦する自分にとって仮想コックピットのデザインはどうでも良いことではあるが。


 理論神経接続時の自分の視界はそのままネメシスのセンサー群が捉えた視界であり、身体は機体そのものだ。だからコックピットを意識することは皆無である。


「航空隊員の意識転送が終了したわ。8機分の仮想コックピットプログラムを起動。各機、接続良好。システム負荷率が通常より18パーセント程上がってるけど問題なさそうね。このまま行けるわ」

「了解。これより先行して離陸する。予定ポイントに到着次第、作戦を開始する」

『了解』


 各仮想コックピットにいる部隊員全員の声が聞こえた。


『レイン少尉、スティーブだ。今回の作戦の通信サーバーの件、貴殿の提案だと聞いている。その……なんと言うか、すまない。いや、感謝する』

「いえ、俺は考えられる最善を提案をしだけです」

『貴殿は、その……私を恨んでいるだろう?』

「恨んではいませんよ。そりゃ、当時は思う所は多々ありましたが。ですが、今となってはどうでも良い事です。あの時『お世話になりました』すら言わずに退出した非礼をお詫びします」

『いや……貴殿に謝らなければならないのは――』

「もう止めましょう? その『貴殿』って言うのも階級付けて呼ばれるのも、なんか気持ち悪いですし、昔のように『レイン』とかでお願いします」

『そうか……ではレイン、済まないが私と部隊員の命を君に預けさせてもらう』

「了解しました」


 それだけを言い、通信を切る。


「これで仲直り?」


 妃花の声が聞こえた。既に理論神経接続を行っている為に、妃花の表情を見る術はない。だが、何となく彼女が今どのような表情をしているのか分かる気がする。


「さぁ、どうだろうな。そもそも喧嘩とかそう言うのじゃないし」


 そうは言ったものの口元に、妙な笑みが浮んだのが自分で分かる。


「離陸許可が出たわ」

「了解。RD-01ネメシス-Type-01 レイン・バレンタイン出る!」



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