表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

場なるところにワリ、奈らくなるおカタ その名


※これはアタシ、バストの親友以上の盟友だったとある作家が最後に残した文章とは言えない命を塗り込んだ心の叫びである。恐らくところどころに何かを隠してあるのかもしれない。彼はこの文章を書いた後に行方不明になった。次に狙われるのはアタシかもしれない。アタシの素性を隠す為に彼は色んな方法を取ってくれた。これを公開する事で、誰よりも重厚な異世界ファンタジーが好きだった一人の青年がいた事を忘れないでほしい。








 (かご)め (かご)め 封印(かご)の中の鳥居(とり)は いついつ(でや)


奈落よあけのばん(つる)幸福(かめ)が滑った


 後ろの※少年だぁれ? ※所説があるが男の子ではなく幼い子供を表す





 これは、読んではならない文章、それその物が腐って、毒をもつ。この文字自体が呪いその物であるかのように……。


 それを、腐敗、毒、呪いと気づいた者は恐らく自分の身にもそれを感じている。あるいは身近の誰かがそれの名を呟いたのだろう。


 もし、馬鹿々々しい駄文だと思うのであればそれは賢明な証拠。そこで、ブラウザを落とすのが君の為になる。


 それでも読むというのであれば、君にアレの事を教える必要があると確信する。





 おかしいと思った事はないか? 世界中、歴史を進めようとした者達がその宿命を背負ったかのように歴史から消されていく事実。


 レノブレイカーという現象。





 それは砂漠の女王がその色香で、他国の男を篭絡していた時も、魔王と呼ばれた者が天下を前にした時も、人でありながら神となった者も、独裁者と言われた絵描きを目指した者も、その最期の時にこう言い残したと言われている。





『ワリカタ』








 各国の言葉でそれをどう訳すのはか分からないけど、それはいつの時代も姿を変え人間の世界に溶け込んでいる。そう言った行動を行うかのように、銃を学校で乱射する生徒たち、ある時を境に突然大量に自殺を繰り返すカルト教団。


『割る』


 この漢字の意味をご存知だろうか?


 単純に物が壊れる時の割れる。何かを分ける時の割る。


 この漢字にはこういった意味も持っている。


 ある境界から外れる。


 次の漢字は


『方』


 これはよく使うだろう。ほうと読んだり、かたやがた。方向を指していたり、人物の敬称に使ったりもする。御方なんて使い方もするだろう。


 合わせたらどうなる?


 ある、境界から外れた御方。


 それが我々人間の運命を握っているというのだろうか? 神や悪魔なんて呼ばれる存在なのか?


 さて、何処から語ろうか? この文章は同時に自分の信用している作家にチャットという形式でそのまま共有されている。


 その作家の友人がスカイプで声をかけてくれているので談笑なんかをしながらこれをできる限り書いていきたい。


 リアルタイムの文字をそのまま記載してもらうので、誤字や脱字が多いかもしれないがそれは愛嬌という事で許してもらえれば幸いである。


 何故なら、これは自分のけじめというか、告白というか、SNSという恐ろしい魔物が隠れている事を伝えたい。


 はじめてツイッターで自分の作品をツイッターで宣伝した時、いいねとリツイートがついてとても嬉しかったのを覚えている。これはきっと他の作家達も共感できるんじゃないだろうか? えっ? 自分だけだって?


 茶化されながらこうやって文章を書くのも中々楽しいものだ。


 話が逸れそうなので、話を戻すと、いいねやリツイートのお礼にこちらもいいねやリツイートをしていると、次第に仲良くなっていき、お互いの作品を読み合ったり、評価をされたりする事も段々と増えてきた。


 今思えば一番楽しい時期だったんじゃないかと思う。そして自分はそこそこ仲の良かったフォロワーさんからダイレクトメールが届いたんだ。


『みんなでオフ会をしませんか?』


 って今思えば物凄く素っ気ない内容だったと思う。それでも自分は嬉しかった同じワナビ仲間と集まってリアルに作品について語り合える物だという興奮。


 分かってくれるかな? あぁ、これは分かる。うん、ありがとう。それで日時を決めて東京某所のレンタルルームに集まったんだ。


 この人は男性だったのか、とか、逆にこの人は女性、えぇ! この人自分より年上! とか中々面白かったっけ?


 軽食なんかを持ち寄って簡単なパーティーがてら自分の作品とペンネームの自己紹介。それで終わってくれれば良かったんだ。


 誰が言ったかは覚えていない、


「そうそう、〇〇※(私の名前)さんがオフ会企画してくれて本当に良かったです」


 それ当然自分は何を言っていると不信に思う。それは他の六人も同じだったらしい。何故なら各々、オフ会に誘われた人物が違っていた。








 これを読んでいる人が一体何人いるのか、それとも誰もいないのかは分からない。これを書いている作者から言わせてもらうと、これ以上は読んではいけない。やめておけ!


 そして、そんな警告を書いている反面、安心している自分もいる。自分だけがこんな目に合わなくていいという事実。


 この文章は友人に託している。リアルタイムでこの文章はあの作家の手に渡ってくれる。伝えて、あいつの『ワリカタ』の存在を広く知ってもらえればそれ程嬉しい事はない。


 あのオフ会に参加しなければこんな事にはならなかったのかと思うと悔やまれる。これから自分がどうなるのかも分からない。


 あいつ、いやあれと言うべきか? 『ワリカタ』が誰かは分からない。いや、あのオフ会が始まってすぐにみんなアレが『ワリカタ』だと気づいていたに違いない。我々オフ会参加の作家は『ワリカタ』の炙り出しに失敗したんだ……








 何かの冗談かと思った瞬間、誰だったか……本当に誰だ! あいつが『ワリカタ』なんだ! あいつがこう言った。


「これって『ワリカタ』が紛れてるんじゃないですか?」


『ワリカタ』なんて単語、誰も知らなかった。なのにあいつは淡々とそれを語る。


 語る。


 語る。


 作家のオフ会に突如として現れる謎の存在。それは言葉を集めている。何が目的なのかは分からない。そんな『ワリカタ』はある言葉を知らない。そしてそれを伝えようとするが、これを書いている自分もあれを文字として書く事が出来なくなった。だから、『ワリカタ』に見つからないようにこの文章の中に隠した。


 奴は思ったよりも自己主張が激しい。自分の弱点を確実にさらけ出した。その言葉を隠して短編小説をオフ会で書こう。


 それについて書かなかった作家が・


『ワリカタ』


 そうやつは言った。それが自分が覚えている最後の言葉。








 我々オフ会参加者達は急性アルコール中毒だとか、集団催眠だとかメディアに面白いくらい罵られた。


 気づいた時にはもう誰が『ワリカタ』だったのか見当もつかない。全員が全員を信用できず、『ワリカタ』という言葉についても口を噤んでしまった。


 自分もそうすればよかった。いや、そうすべきだったんだ。ミステリー作家気取りだったのか? それとも他とは違い恐れを知らぬ自分に酔ってたのか?


 気が付けば、自分の家、そして自分の部屋が魔境のように得体のしれぬ場所と化した。誰に言っても、誰に会っても信じてもらえず。


 ただただ家に閉じこもるしかなかった。自分とまともな世界とのつながりはインターネットという見えない蜘蛛の糸だけ……


 想像してほしい。


 窓を開けても外に出ても周囲は真っ黒な世界。家族に会っても恋人、友人に会っても全て同じ人物に見えるという地獄。


 創造してほしい。


 言葉にできず地獄を彷徨うこの愚かな作家を、あとどれだけ自分の指がキーボードをタイプし、人間が使う言葉を書き記す事ができるのか? 今だからわかる『ワリカタ』という存在。今それになろうとしている自分。こんなに不気味な世界を生きる住人であるという事。


 だから自分は仮定した。


『ワリカタ』


 とは誰かに自分の中の『ワリカタ』を押し付ける事でそれが移動するのか、あるいは伝染する何かなのではないのかと。


 





 嗚呼怖い。


 自分の手のひらにある瞳が自分をじっと見つめている。自分の部屋が明らかに二回り狭くなっているという事実。


 本来吸って気分を落ち着かせるハズのタバコの火を自分のふともとに押し付ける事でまだ自分が自分であると認識できる絶望。


 これほどまでに自分の中にある感情という物を嫌悪した事はない。あれほどまでに狂ったように聞いていたティーンアイドルの曲が今や自分を冥府へと導くメロディに聞こえるのは自分がもう既に『ワリカタ』だからなのか?








 絶対に『ワリカタ』には関わるな。それを自分は伝えたい。伝えたいけれど、悔しくてしかたがない。我々作家の想像力、創作力はこの程度なのだろうか? 何処の異次元から現れたのかは知らないが、そんな者に本当に勝てないのだろうか?


 もし、もし何処かで『ワリカタ』をあぶりだそうとしているのであれば、自分にはできなかった奴を見つけ出して、我々ネット小説を書いている作家の方が、お前なんかより優れている事を証明してほしい。





自分の周りは闇しかない。真っ暗で、モニターの明かりだけ……スカイプの声も聞こえない。


 嫌だ。消えたくない、


 まだ、まだ書きたい事が沢山あるんだ。完結させていない小説も何作もあるんだ。もっとコンテストに応募をして……でも、もう言葉が自分の中から逃げ出していくように言葉が出ない。文字を理解できない。


 怖い。


 自分が怖い。


 自分を先ほどから見つめている自分が怖い。


 怖い。





 自分の手が見たこともない生物の姿に変わっていく。








 助けて お母さん








※ 以上がアタシとリアルタイムでチャットをしていた彼の最期の心の叫びだった。アタシが何度呼び掛けても、彼はただただ『怖い』と叫び、壊れていく彼の声を聴く事しかできなかった。きっとこれは首を突っ込んではいけない何かなんだと思う。


 だけど、お願い。これを読んだ誰か! 『ワリカタ』を見つけてよ! 彼の最期の叫びには絶対『ワリカタ』を見つけ出すヒントがあるから……アタシにはできないから、もう周りが暗くなってるんだ。


 怖い。


 怖いよぅ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ