わたしはわたしを浪費する。あなたはあなたを浪費する。(三十と一夜の短篇第24回)
あなたはあなたの時間を、語彙を、視力を、思考を、握力を、浪費している――今、この瞬間にも。
それはすなわち、あなた自身を浪費していることにほかならない。
「テスト勉強しなくちゃいけないのにぃ」
「明日までのレポートがあるんだけど」
「来週納期のプロジェクトがまだ……」
そう思っていても、次の瞬間にはつい思考が浮遊する。つい手が動く。
口に台詞が浮かび、手には愛用のペン。
もう片方の手でノートの新しいページを開いたり、パソコンの電源を入れたりする。
スマートフォンのアプリをタップする人もいるかも知れない。
「そんなことして、何かの役に立つの?」
そう言われることもあるだろう。
「それで生活していけると思ってるの?」
そう言われる人もいるだろう。
でもやめられない。自分自身の浪費と知っていても。
何故って?
楽しいから。
「それって、仕事より大切なこと?」
そもそもベクトルの違うものだから比べようもない。
その愚問自体が時間の浪費ではないかしら?
「そんなことより、勉強したら?」
『そんなことをしている』人に『そんなアドバイス――という名の余計なお節介――をしている』あなたは?
その行動こそが体力と精神の浪費ではないかしら?
では逆に問うてみましょう。
「そう言うあなたには夢中になれるものがないの?」
何もかも忘れて没頭する時間。
いや、むしろ時間がなくても没頭したい『何か』。
自分で考えて仕上げたり、誰かが創ったものに何かを感じたり。
それが『無駄』なんて本気で思う人は、本当はいないでしょう?
何かを浪費せずただ生きているだけ――なんて、想像できない。
浪費は、楽しい。