表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人間以外が主人公

土だって楽じゃない

掲載日:2018/01/07

 そこにある地面に視点を向け、声を聴いてみると、実は結構土も大変だと思う。


「けっ太平楽並べてるんじゃねえぜ。土だってな苦労や忍耐はいっぱいあるんでぃ」

と土が江戸弁を語るかどうかは知らないが、そこにあるというだけで土には気も止めないだろう。たまに暇な子供がシャベルで掘り返すぐらいである。


「痛っ。いきなり刺すんじゃねぇ。ああっ一番気になるところをほじくり返しやがった。ああ、俺の上の部分がどっかいっちまったじゃないか」

子供は、土の悲鳴などお構いなしに、シャベルですくった土を別の場所に移して、シャベルの背で叩いてならしている。

「叩くなよ。よその土と一緒になっちまったじゃねえか。あ、兄さんごめんな。これは俺の意思じゃない。どっかの子供が勝手にやったんでさあ」


 子供は飽きてどこかに行ってしまった。しばらくすると雨が降り出した。

「俺の体が溶けて、兄さんの体と一緒になってしまう。うあああ」

容赦なく雨は土の体に降り注ぐ。やがて盛り上がった部分が崩れて、元あった土の、今はくぼみの中に、ゲル状になった土の大半が注ぎ込まれていった。


「ふう。やっと元に戻った。しかし、俺の体もずいぶん崩れてしまったな。どこからか誰かが蹴った石が混じって痛くてたまんねえ」

雨降って地固まるのことわざ通り、土は元いた場所に戻って一件落着。

「全然一件落着じゃねえや。逆さになっちまった。この姿勢は苦しくてたまんねえ。寝るのも一苦労だ」


 ほじくられた土は、程よく柔らかくなり、虫や雑草の格好の住処となる。

「何かの種の根っこがこそばゆくていけねえ。ミミズそこ通るんじゃねえ。くすぐってえんだよ。これでアリに巣でも作られた日にゃ、うるさくてかなわねえな」

やがて雑草の根が、土の栄養分を根こそぎ奪っていくようになった。

「ああ、貴重な栄養がどんどん吸われていく。なんでこんなことになったんだ。俺はどうなる」

だが、道の真ん中だったのが幸いで、せっかく生えた雑草も、道行く人に踏み固められて、枯れてしまった。


「あいてて、また地べたとして踏まれる生活に戻ったか。慣れているとはいえ、多少うざいな。人は土に対する尊敬の念もちっとも持ちやがらねえ。踏むな。踏むな。」

土は毎日、こう思いながら暮らしているのでありました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 言葉が浮かばないので、単刀直入に言います。 好きです。こういう話大好きです。面白すぎです。もっと欲しいです。お忙しいらしく、残念です。 がんばってください!お待ちしております!
[良い点] 土さんの生活は、他とは違って、とてもハードだなぁということが伝わってきました。もし私が土だって、こんなに色々考えちゃう土さんなら、発狂しそう。ほんと大変。 [気になる点] ミミズさんは土さ…
[良い点] 江戸っ子的な喋り方が面白かったです。
2018/01/07 09:23 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ