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僕がヒーローになった物語

老猫と 映画で涼む 夏の夜…


スタローン様は僕のヒーローです。

部屋の壁は彼のポスターでいっぱい。

『ロッキー』と『ランボー』は大好きです。

どんなに殴られても必ず立ち上がるロッキー。

友達を見捨てず、地獄の戦地から救うランボー。

僕はそんな大人になりたいです。


でも本当の僕は弱虫…


僕の友達は一人だけです。

小学生のときから親友の正志君。

でも彼はいつもイジメられてます。

助けてあげたいけど…

イジメてるのは大きくて強い子たち。

僕は鈍臭いから絶対無理。

それが本当の僕なんです…


ある日、また正志君がいじめっ子たちに殴られてました。

その酷い光景を、僕は助けたいと思い影から見てましたが心臓はドキドキし足が震えました。

でも僕は精一杯の勇気を振り絞って何とか彼らの前に出たのです。


いじめっ子たちのリーダーが僕を馬鹿にしました。


何しに来たんだ

コイツを助けに来たのか、お前が?


彼は大笑いして僕に言いました。


お前があることをしたらコイツを許してやるよ…


僕は恐るおそる尋ねました。


何するの…


お前がコイツを殴れば許してやる…


そう彼は言ったのです。


震えながら正志君を殴りました。

彼らがいいと言うまで

何度も何度も…


その日の晩、小学生のとき保護したミケを抱きしめ、自分の部屋で一人泣きました。


母にも相談しましたが、いじめっ子たちのリーダーは、父が勤める会社の社長の息子なのです。

母は凄い剣幕で僕に怒りました。


お父さんが会社で困ったらどうするの!


母さんは僕に友達を見捨てろと…


じゃあ、あなたが家族を養ってくれるの!


部屋に戻りました。

もう死にたいと思いました…

すると誰かが僕に声をかけたのです。

ポスターの中のロッキーでした。


君はヒーローになりたいか

はい

本当だね

本当です

なら君が正しいと思うことをしなさい

でも僕…弱いから勝てません

勝たなくてもいいさ、殴られても立ち上がればいい…


翌日また正志君が殴られてました。

でも僕は堂々と前に出たのです。

また彼らは正志君を殴れと言いましたが、僕は嫌だと断りました。

彼らは僕を囲んで殴りました。

でも、どれだけ殴られても僕は立ち上がったのです。

いじめっ子たちはバケモノでも見るような目で僕を見つめ、ついに彼らは逃げ出しました。


その日の晩、母はひどく怒りました。


あの子たちに何したの

お父さんは会社で大恥かいたのよ!

どうするの!


僕は無言で部屋に戻りロッキーのポスターに言いました。


僕ヒーローになったよ…


ポスターは何も答えません。

するとまた誰かが僕に声をかけたのです。


勘違いするなよ

たかが悪ガキを懲らしめたぐらいではヒーローじゃないぞ…


ポスターの中のランボーでした。


どうすればヒーローになれるの?


仲間を助ければなれる


もうしたよ?


そうじゃない

君の同胞が拉致され何十年も救出を待っていることは知ってるな

君が彼らを助けるのだ


いっ!いくらなんでも無茶です!


必要な装備は用意した

君は本当のヒーローになれ

さあ出発だ…


部屋のドアを開けた瞬間、そこは突風の吹き荒れる荒野で、しばらく歩くと鉄条網に囲まれたコンクリートの要塞が見えてきました。

僕はポッケにある見取図と同胞の顔写真を頭に入れ、サバイバルナイフで鉄条網を切り裂き、その要塞に潜入したのです。

同胞が働かされてる作業所に真正面から堂々と入ると顔写真の彼らがいました。


迎えに来ました

遅くなり申しわけありません…


兵隊たちはポカーンと僕を見つめ状況を理解できてない様子でした。

すぐに激しい銃撃戦となりました。

僕は銃弾の雨のなかサブマシンガンで応戦し、外にあるジープを奪い同胞を乗せ荒野を疾走したのです。

やがて前方に、戦闘用ヘリ(コブラ)が停まっているのが見えてきました。

急いでヘリに同胞を乗せ、夜空に舞い上がり、敵機との激しい空中戦を征すると、やがて日本海に達し、眼下に美しい大都会の夜景が広がりました。


そのとき無線でランボーから指示が来たのです。


大ガラスから捨て猫へ 聞こえるか?


捨て猫です どうぞ


負傷者はいるか?


全員無事です


大ガラス了解

今から着陸ポイントを指示する


どうぞ


国立競技場に着陸せよ

繰り返す、国立競技場に着陸せよ


捨て猫了解…


競技場の眩しい照明が眼下に見えました。

AKB48のライブの真っ最中でした。

僕はそのど真ん中にヘリを降下させたのです。

轟音と共に弾痕だらけの機体が現れてライブはぶち壊れ、僕と帰還者たちがヘリから降りる姿を大観衆が固唾を飲んで見つめました。


しかし観客達は僕らに罵声を浴びせたのです…


とっとと失せろー!

邪魔するなー!

金返せー!


彼らの眼を開かせようと思いました。

僕は照明に機銃掃射を浴びせ、場内は騒然となり、やがて到着した特殊部隊が僕達を包囲しました。

すると一人の男が部隊の中からこちらに歩いて来たのです。


スタローンが僕に言いました。


君はヒーローだ…


僕は帰還者たちを指し彼に言いました。


彼らこそヒーローです…


君の望みは何だ?


友だちを見捨てない世の中です…


そこで夢から覚めました。

昔保護した老猫のミケが私の顔を優しく舐めてました。


終わり

この小説に政治的な意図は一切ありません。

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