第七話 森の冒険2日目
「おかーさん、おとーさん!今日ね、保育園の先生に褒めてもらえたの!今日はお絵描きをしたんだけどね、あかねはおかーさんとおとーさんをかいたの。」
「そうなの?お母さん嬉しいわ。」
「きっと茜の描いた絵だからすごく似てるんだろうな。お父さん、見てみたいよ。」
いつの話だろう。とても小さな私が両親に話しかけている。こんなこともあったのかな。私の理想なだけなのかもしれない。
私の父は大きな病院の院長だ。私の記憶にある父は、いつも夜遅くに帰ってきて私が起きる頃にはもう病院に行っていた。休日は会える日もあったが、それも私が大きくなるにつれだんだんなくなっていき、小学校高学年になると年に数回しか会えなかった。
母は世界規模の会社を経営していた。1年のうちの殆どを外国で過ごし、父が休みの
日に合わせて帰ってきていた。父の休みが少なくなってきてあまり家に帰らなくなると、母もほとんど家に帰ってこなくなった。
だんだん両親は仲が悪くなっていった。せっかくふたりが家に帰ってきても喧嘩ばかりしていた。
私はふたりに仲直りしてもらいたくて、私のことを見て欲しくて、色んなことをした。
勉強はもちろん、ピアノに習い事。家に道場があったので武道にも手を出していった。
でも、ふたりの仲は悪くなるばかり。それどころか私のことは見向きもしなくなっていった。
それでも両親に振り向いて欲しくてずっと努力していた。本当はする必要もなかったけど家事だってできるようにした。ずっとオール5で貫き通したし、剣道や空手などでも全国大会までいった。
結局、死ぬまで振り向いてもらえなかった。
今、ふたりはどうなっているだろうか。私の死を悲しんでいるのだろうか。それとも表面だけ悲しんで本当は何も思っていないのだろうか…
──・──・──
目が覚めると、頭の中にコミカルな音が響き、目の前にウィンドウが現れる。
ぴこんっ!!
『プレイヤー名:アカネ
体力:400/400
魔力:350/350
スキル:初級魔術・跳躍・聴覚強化
属性:火・風』
…。なんか増えてるう!?なんで今更?なんかウサギについてそうなスキルを得ているけど。アレって食べた直後につくもんじゃないの?
なんか変だけど強化されていた。っていってもあんまり実感はないけど。このままレベル上げしていったらクエストクリアできるのかな。
そういえば夢を見ていた気がする。全然覚えてないけど。気のせいかな。まあ、おなかすいたし朝ご飯でも食べようかな。昨日のホーンラビットの残りがあるし。
ホーンラビットを食べ終わった私は散策に出る。もしかしたらこの世界は限りがあるかもしれないし、何か建造物があるかもしれないから念入りにチェックしないと、なんて思っているとまたメニューが表示された。
『スキル:マップ
辞書 を獲得しました。』
スキル?なんで今?よくわかんないけどとりあえず発動!とか付けたら使えるかな。魔術もそうだったし。まあ、やってみなきゃわかんないや。
「スキル『辞書』発動!」
ブンッ。
わあ。ほんとに発動できた。この世界緩くない?ゲーム感覚だからかな。ウサギ倒した時も適当に模擬刀を振ったらたまたま当たって倒せたし。
んー。悩んでもしょうがないか。えーと、なになに?
「キーワード『調べたいもの』を検索」っていうんだって。やっぱり辞書だし、調べるものなんだね。
じゃあ、マップを調べてみようかな。
「キーワード『マップ』を検索」
お、出た出た。
「マップはプレイヤーが行ったことのある場所の地図を自動的に記録していくスキルです。ゲームマスターからの支給スキルです。」
支給スキル?ゲームマスターって誰のことかな。朝起きてからこのスキルを得るまでに時間差があったのはそのゲームマスターっていうのが怠けてたから?
まあ、なぞは多いけどとりあえずこのスキルメッチャ役に立つね!早速活用しなければ‼
──数時間後──
はい。いろいろ収穫ありました!
まず、ウサギと更に、オオカミを仕留めました。
やっぱりこの世界では戦闘が緩いのか、私の適当な剣でもオオカミを一撃で倒せちゃいました。
次に、このゲームの世界の端を見つけました。そして、なんかやばげな洞窟を発見。もしかしたら最終クエストみたいなのがそこであるのかもしれない。でも、まだあんまり強くなさそうだから今はやめておく。もうちょっと敵を倒すのに慣れてから行こうかな。
報告は以上です。脳内会議、しゅーりょー!
仕留めた動物たちを料理して寝た。フライパンを出そうとすると、その近くに塩や胡椒があったから、それで味付けをして食べた。やっぱり味があるっていいね。
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