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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている2
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愛媛でみんな生きている2

 イヨの国。イヨの国マツヤマの盛り場にあるレストランバー『ブルーアイズ』にユーリナとフィリーはいる。

 ブルーアイズは青を基調にした二階建ての吹き抜けのあるレストランバーだ。

 レストランバーらしく食事や酒は豪華だが、値は安く懐に優しいので、常に店は賑わっている。

 だが、そこもドワーフやワーウルフなどが食事ないし酒を飲んでいるか、子供も酒を飲んでパフェを食べている。その中でスマホをいじっている人間の冒険者などが、たむろしているバーだ。

 そこに冒険者への依頼が貼られている壁がある。そこは香川県の居酒屋と同じだ。その依頼もバーテンとか誰かに仲介をして仕事を貰っている。

 その依頼を貼られている壁を見つめている一人のエルフの少女がいる。

 香川県では、冒険者になるには人間の年齢は十五歳だが、イヨの国では年齢制限や試験等などない。このイヨの国では飲酒、喫煙、賭博、バイク、自動車の運転とかに資格はない。ただし香川県ではイヨの国の者も年齢制限は守らなくてはならないが。

 ユーリナは壁の依頼を見ている少女に声をかけた。

「アイリス。どうした?」

「……ああ、ユーリナ。食事来た後、ここでアルバイト探していたの」

 アイリスはユーリナが通っている学校の、眼鏡をかけたブレザー姿のクラスの学級委員長だ。

「ユーリナは?」

「私もアルバイト探しだ」

「遊ぶ金欲しいし!」

 フィリーは明るく言った。

「そう、フィリーはともかくユーリナはお金いるからね」

「まあな」

 ユーリナたちは、その中の一つに興味を持った。

「これどうだ」

「えっ、これ?」

 ユーリナが興味を持ったのは、冒険者の依頼には似合わない仕事である野菜の収穫だ。

「野菜の収穫か。給料は……一万円か」

「これ、日給じゃん!」

 野菜の収穫するだけで日給一万円と言う好条件の仕事だ。

「甘露キャベツの収穫だって」

 甘露キャベツとは、甘く柔らかいキャベツである。香川や愛媛ではスーパーや八百屋に大量に出回っているキャベツである。

「だけど、日給一万円って……」

「何となくわかるわ」

「これ、お願いします!」

 バーテンに言い、この依頼を引き受けた。

「わかりました」

 バーテンは依頼人に電話をしている。

 翌日、三人で電車に乗って、その場所に向かった。

「……」

「……」

「……」

 三人ともSNSや教科書などを見て無口だ。

 そして三人は現代的な電車から降りると、

「はあ、疲れた」

「時間かかったな」

「二人とも、仕事」

「そうだな」

 フィリーが疲れていると、アイリスが機敏に言った。

 三人は野菜の収穫のため、学校指定のジャージを着ている。

 だが、ユーリナの腰には日本刀を差している。フィリーも弓矢を持っている。

「……はい」

「はい!」

「はい」

「ありがとうございます」

 駅員に切符を渡してレトロな駅の外に出ると、

「ここまで行くと田舎だな」

「そうね。田舎よね」

「そうだけど」

 事実、東に行くと昔ながらの畑や田んぼが広がる昔ながらの田舎で穏やかな時が流れている感じだ。

「あっ、ケルベロスだ」

 三つの頭を持つ犬がいたが、三人には襲ってこなかった。

「本当」

「無視して行きましょう」

 穏やかに見えるが、人間を襲うモンスターがいて、イヨの国には人間には安全な場所は無いのだ。だが、それでも珍しい物欲しさに来る香川の人間はいる。

「依頼人の住所はここか……」

 広大な畑があるが、家屋はこじんまりした依頼人がいる場所に来た。

「来ましたよー‼」

「フィリー! 声が大きすぎる‼」

 フィリーが大声で言うと、依頼人であるブラウニーが家屋から出て来た。

「遠路からよく来ましたね」

 一メートル弱の全身に茶色い毛が生えた泥まみれのボロボロの服を着たブラウニーが手ぬぐいで顔を拭きながら挨拶した。

「あれ⁉ あなたはサムライエルフ」

「そう言われますけど……」

「そうじゃん」

 ユーリナの活躍はイヨの国では有名である。

 ブラウニーは嬉しそうに笑って、

「サムライエルフなら十分だ。野菜の収穫頼んだよ!」

「それで、野菜は……」

「ああ、野菜? 野菜は……ついて来てくれ」

 三人はブラウニーについて行くと、地平線が見えるくらい広い畑に来た。

「あっ、あれ」

「あれが甘露キャベツだ」

 大きく丸々とした甘露キャベツらしき物が頭に生えている五メートルぐらいの大きさのモンスターたちがいた。

「ああ、立派な甘露キャベツですね」

 ブラウニーは顔を赤らめて嬉しそうになった。

「そうだろう! そうだろう! この甘露キャベツは愛情込めて立派に育ったんだ‼」

「美味しそうな甘露キャベツが頭にあるけど……元気だな」

 甘露キャベツが生えたモンスターは暴れまわって元気に走り回っている。

「……よく動くわね」

 甘露キャベツと言うのは、頭に甘露キャベツが生えているが、その体は人の姿をした根っこで、根っこが元気に暴れまわっているのだ。

「元気ね」

「だけど、失敗したものもあって」

 周りをよく見ると、元気が無く、だらけきって横になっているモンスター……ならぬ甘露キャベツがいる。

 ブラウニーが横になっている甘露キャベツの後ろに来て鎌を使い、頭の甘露キャベツを収穫すると、甘露キャベツのモンスターが動かなくなった。

「この甘露キャベツは元気が無い。美味しくない甘露キャベツだ。食ってみろ」

 ブラウニーは収穫した甘露キャベツを一枚剥いてフィリーに渡した。

「……いただきます」

 フィリーが甘露キャベツを一口、口にすると、

「——甘くないし、硬い‼ まずい‼」

 フィリーは甘露キャベツを吐き出した。それを待っていた様にブラウニーはお茶を用意していた。

「そうだろう、はい。お茶だ」

「ん~」

 フィリーはお茶を一気飲みした。

「甘露キャベツは甘露キャベツと根を切ると、動かなくなり、収穫完了になるんだ」

 イヨの国の品種改良した野菜は物によってはモンスター的な野菜もあり、育てるまではいいが、農家では対応できない野菜を収穫するのも、冒険者の仕事の一つである。

「仕事は、甘露キャベツを収穫することだろ」

「そうだよ。頼む。それじゃ、離れて様子見るから」

 ブラウニーは遠くに行き隠れた。

「よし! 行くか‼」

「あたしも行くよ」

 ユーリナは刀を抜き、フィリーは弓矢を構えた。

「行くよ! 甘露キャベツ‼」

 ユーリナは甘露キャベツと根を切り甘露キャベツと根っこを分けた。

「よし! 一個!」

 甘露キャベツを収穫したことで他の甘露キャベツが襲ってきた。

「ユーリナ! あたしたちもいるんだよ!」

 フィリーは弓矢を使って応戦した。矢は甘露キャベツの下に当たり、甘露キャベツは落ちていった。

「私達も働かないと、給料泥棒よ‼」

 アイリスはも魔法で攻撃している。火の魔法で根を燃やして、甘露キャベツを落としていった。

「やはり、やるなあ」

 三人は甘露キャベツを倒していくと収穫した甘露キャベツはどんどん増えていった。

「やったな」

「後、何体だ」

「一体よ!」

 アイリスが指さした甘露キャベツは今までの甘露キャベツより大きく凶暴そうだ。

「この甘露キャベツのボスか」

「大きいわね」

「倒さないと、給料マイナスになるのよね」

 ブラウニーがやって来て、

「それは大切に育てた甘露キャベツだ! 無事収穫出来たら、ボーナスもやるぞ!」

「「「ボーナス⁉」」」

 三人が三人、思い思いに思っていると、巨大甘露キャベツが殴ってきた。

「くっ」

「わあ!」

「きゃ!」

 三人は避けて、一旦離れて戻って来ると、

「どうする?」

「三人で攻撃しよう」

「それがいいわね」

 三人は構えて、

「行くわよ」

「行くよ」

「行くぞ」

 フィリーは矢で射た。

「——はっ」

 アイリスはフィリーの矢に魔法を纏わせた。

「行くぞ‼」

 ユーリナは矢と一緒に日本刀で攻撃した。

「たああああああ!」

 矢が命中したと同時にユーリナは日本刀で切り裂いた。

「やったか?」

 甘露キャベツの体と甘露キャベツは分かれた。

「やった!」

「やったか! ボーナスもやるぞ!」

「ボーナス⁉」

「やった!」

「嬉しい‼」

 三人が喜んでいると、ボーナスがきた。

「ボーナスって……」

「これ?」

「これね……」

 ボーナスは甘露キャベツ一人一個だ。

「一万円に甘露キャベツだ!」

「甘露キャベツか」

「いいんじゃない」

「早速、夕飯に使うわ」

 三人は給料と甘露キャベツを受け取って帰った。

 家に帰ったユーリナは、

「ただいまー」

「おかえり、ユーリナ」

 家には、ユーリナの母親がいた。

「お母さん。これ」

 ユーリナは母親に甘露キャベツを渡した。

「へえ、甘露キャベツじゃない!」

 ユーリナの母は喜んだ。甘露キャベツはスーパーに出回っているが、少しお高めの値段一個五百円なのだ。

「じゃあ、待っててね。夕ご飯作るから」

 嬉しそうな声のユーリナの母は夕食の準備をした。

 夕食が出来ると、

「出来たわよー」

 ユーリナが取ってきた甘露キャベツは、コンソメベースのロールキャベツになった。

 ユーリナが一口、口にすると、

「おいしい」

 ロールキャベツは甘く柔らかく肉よりもキャベツの甘味の方が強く素材の味が生きて美味しい。

「働いた後の食事は美味しいわね」

 これがイヨの国の日常だ。

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