高知でみんな生きている8
高知県、ダンジョン内部、ユキは毒がかかった真言の心配をしている。
「‼」
「ユキ、俺は平気だ」
真言は立ち上がり、次の階層に行く階段に向かうと、ユキは真言の足に抱き着いて震えている。
「ユキ、俺は毒は平気なんだ。昔、じーちゃんにトリカブトのお浸しとか、食べさせられたからな」
「⁉ ⁉ ⁉ ⁉ ⁉」
「毒に対しては抗体が出来ているんだ。だから安心しな。ユキ」
「⁉ ——!」
安心したユキを抱きかかえた真言は先に進んだ。
地下二階もまた、同じような作りのダンジョンだ。
「さて、次の階層に来たな」
真言は周りを見渡してから、歩いたら、広い場所があった。
「?」
「?」
広い場所には何もいなかった。
「おかしいな。いない」
「?」
「地下一階にいたように、ここにもある程度強力なモンスターがいるんだ。だが、ここにはいない」
「? ? ? ? ?」
「まあいい、次に行くぞ」
真言は階段を下り、地下三階に向かった。
「さてと、さっさと行くぞ」
「!」
地下三階に行くと、スムーズに地下四階に行った。
ここまで行くと、真言はある疑問を思った。
「ユキ、モンスターに居たか?」
「!」
ユキが首を横に振った。
「そうだよな。一匹もいない」
「⁉ ⁉ ⁉ ⁉ ⁉」
「何でここまで、モンスターがいないんだ? 何があったんだ?」
「?」
「考えるより、次に向かうぞ」
真言は地下五階に向かった。
地下五階、ここもモンスターがいない。
「……あいつ、無事かな?」
「?」
「ああ、ここにいる知人だ。……知、人って言うべきか?」
「? ? ? ? ?」
「まあ、信じようか」
それから歩いて行くと、少し広い場所に来た。
「⁉」
アイテムと倒れたオークがいた。
「おっさん‼ 無事か⁉」
「……」
真言がオークに回復薬を使い、体力を回復させた。
「……う、ん」
「無事か、おっさん⁉」
「ん、あ……真言か?」
オークは目を覚まして、起き上がった。
「おっさん!」
「真言……」
「何があったんだ⁉」
「わからない……衝撃がきて気絶しただけだ」
「衝撃?」
「ああ、恐ろしい衝撃だ。あれは厄介だ」
「そんな強力なモンスターがいるのか?」
「なのかは、わからないが、とにかくすごいモンスターだ」
「……わかった。俺がそのモンスターを倒すよ」
「真言、気を付けろよ」
「ああ、わかっている」
真言が向かおうとすると、ユキが真言を見つめている。
「ん? このオークの事か?」
オークもユキと真言のある事が気になっている。
「ユキ、このオークは商人なんだ。このダンジョンに住んで商売をしている」
「⁉ ⁉ ⁉ ⁉ ⁉」
「ああ。イヨの国に住むのがイヤで、このダンジョンに生活用品を持って暮らしているんだ」
「!」
ユキは不思議そうにオークを見つめた。
「何で、イヨの国がイヤかって?」
「!」
ユキはうなづいている。
「それは……食べ物は好きなんだが、文明が苦手でな。それで、このダンジョンに住んでいるだけだ」
「そういう事だ。わかったか? ユキ」
「! ! ! ! !」
ユキは嬉しそうに理解した。
「こっちの質問にも答えてくれ。真言、何でそんな格好をしているんだ? それと、そのアルミラージは何だ?」
「ああ、この格好は白衣と言って、じーちゃん探しにお遍路さんをしている最中でな。次に、このアルミラージは、お遍路さんをしている最中に見つけたユキって名前の仲間なんだ。結構、良い奴なんだぜ」
「!」
良い奴と言われたユキは幸せそうに、顔を摺り寄せている。
「そうか。じゃあ、ユキ。残り物だが、フライドチキンを食べるか?」
「! ! ! ! !」
フライドチキンを渡されて、ユキは小さな口でかぶりついた。
「なあ、おっさん。じーちゃん見なかった? 俺と同じ格好なんだが……」
「いや、そんな服装の男は見た事がないな。わかったら、またここに来てくれ」
「見てないか……悪かった」
「構わねえよ。後、アイテムとか、買うか?」
オークは真言の前にアイテムを見せた。その中には、回復薬や魔法陣があった。
「そうだな。脱出の陣をあげたから、新しく脱出の陣を買ってもいいか? 後、異常状態の回復薬も」
「いいぞ。八百円」
「毎度あり」
「じゃあ、またな」
「ああ」
真言はオークの商人と別れ、次の階層に向かった。
「ユキ、あのオークのおっさんに会いたいから、ここまで来たんだ」
「!」
ユキは嬉しそうに見つめている。
「本来なら、もう帰る予定だが、強力なモンスターを倒さないとな」
「! ! ! ! !」
真剣な眼差しでユキは見つめている。
「その意気だ。探すぞ」
地下六階、真言はモンスターを探し回ったが、モンスターは一匹もいない。
「地下六階もいないな」
「!」
「モンスターが一匹もいないダンジョンの方が不気味だな」
「! ! ! ! !」
ユキは同じ事を思っているみたいだ。
「ユキも初めてだが、奇妙だと思っているんだな」
こうして、地下七階に下りた。
「さて、警戒——?」
真言のスマホから音が鳴ったので、見るとピエロ型のモンスターの写真が映っていた。
「?」
「ピエロのモンスターだ。笑い声が特徴で、爆弾ボールを投げたりナイフを投げたりして、攻撃するモンスターだ」
「!」
「子供のピエロのモンスターは数で攻撃するが、ボスのピエロのモンスターは手ごわい奴だな。倒すの苦労したらしいぞ」
「! ! ! ! !」
「しかもこいつ……くっ!」
真言のスマホを持つ手は震えている。
「?」
「いや、何でもない。行くぞ、ユキ」
「!」
早歩きになった真言をユキは追いかける。
「キャハハハ!」
「⁉」
笑い声が聞こえたユキは構えたが、
「ユキ、離れろ」
真言は構えたユキを後ろに避難させると、真言は二丁拳銃を取り出した。
「お前か。ピエロ型のモンスターは……」
大人のピエロ型のモンスターが現れ、真言にナイフを投げるが、
「はっ!」
ナイフを掴み、ピエロ型のモンスターに投げ返したが、真言に近づいて蹴ろうとした。
「たあ!」
ピエロの蹴りをガードしてから、ピエロを蹴とばした。
「キャ!」
ピエロが立ち上がるよりも速く、真言は銃を構えた。
「右手に雷」
真言の右手に雷が光った。
「左手にも雷」
真言の左手にも雷が光った。
「雷撃!」
弾丸はピエロ型のモンスターに命中して、全身に雷撃が走り黒焦げになった。
「……」
黒焦げのピエロは動かないのを見た真言は、
「ったく……」
蹴り上げて倒した。
「このピエロ、タチ悪いらしいな。ユキ、見つけ次第、殺すぞ」
真言の目には、怒りに燃えている。
「⁉」
ユキは真言の目に驚いた。
「探すぞ」
真言は地下七階を探したが、ピエロ型のモンスターはいなかった。
「次は地下八階だ」
そのまま、地下八階を下りた。
「八階か……どこだ! ピエロ‼」
真言は大声で叫んだが、ピエロ型のモンスターどころか、一匹もモンスターは出てこない。
「いないのか? 出て来い!」
叫んでも広がるのは、暗闇だけだ。
「……けっ」
真言は地下九階に下りた。
「地下九階か……いないのか⁉」
「⁉ ⁉ ⁉ ⁉ ⁉」
ユキは何故、真言が怒っているのかわからない目で見ている。
「ああ、ユキ。あのピエロは友に悪辣な事をした奴の仲間だから、ぶち殺す。それだけだ」
「! ! ! ! !」
ユキも怒って、キョロキョロ、ピエロ型のモンスターを探し始めた。
「悪いな、ユキ。探してくれて」
「⁉」
「キャハハハ!」
ピエロ型のモンスターが出て来た。
「右手に氷」
真言の右手に氷が纏わりついた。
「左手にも氷」
真言の左手にも氷が纏わりついた。
真言は銃を構えて、
「氷刃!」
弾丸はピエロ型のモンスターに命中し、中から氷の刃が突き出た。
「キャハ、ハ、ハ……」
ピエロ型のモンスターは動かなくなった。
「終わったか。ユキ、行くぞ」
「!」
真言とユキは地下十階に向かった。
「ピエロ! どこだ⁉」
地下十階でも、ピエロ型のモンスターを探したが、いなかった。
「いないな……」
真言は広い場所に着いた。
「ああ、ここか。見ろ、ユキ」
ユキと真言の足元に魔法陣があった。
「ユキ、この魔法陣に乗ると、ボスにたどり着くんだ」
「! ! ! ! !」
ユキは全身で戦闘意欲を見せた。
「戦う気か。ユキ、戦うぞ」
「! ! ! ! !」
「じゃあ、乗るぞ。ユキ!」
「! ! ! ! !」
真言とユキは魔法陣に飛び乗った。
「着いたぞ」
真言とユキが移動した場所はボスがいそうな広い場所だ。
「ここにボスがいるんだ」
「⁉」
「どうした?」
ユキは走り回っている。その違和感に気付いた真言はユキを抱きかかえた。
「ボスの気配を感じないのか? 今まで、こんな事は無かったのに」
「⁉ ⁉ ⁉ ⁉ ⁉」
「ユキ、見えたぞ!」
真言の視線には、人の姿をしたものがいる。
「男か? ——⁉」
真言が驚くのも無理はない、そのものの姿も菅笠と白衣を纏い、金剛杖を持っていたのだから、
「何者だぁ⁉」
その人物が近づくと、真言は叫んだ。
「何だよ‼」
「何だよとは、何じゃ⁉」
「——これはラスボスより強い奴を通り越しているだろ‼」
真言にとっては、最強の敵だ。ただ何故、最強の敵がここにいるのか、わからなかった。
「何だよ! ここにいたのかよ! ——じーちゃん‼」
「ふん。来たのか」
ここにいた最強の敵だと思っていたのは、真言の祖父、水城白業だ。
これが高知県の日常だ。




