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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている
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徳島でみんな生きている

「わっ」

 一匹のゴブリンが徳島に送られた。

 ゴブリンは立ち上がると、

「参ったな」

 徳島の町はボロボロで町中にはゴミが大量に捨てられている。

 捨てられた物を拾って直している人々がいる。

 ゴブリンはそれを見ながら徳島の町を歩いている。

(ここが徳島か……)

 徳島の町には奇妙な人たちから(うつ)ろな目の人にガラの悪そうな人々が沢山いる。

「徳島……不安だな……」

 ゴブリンがボロボロになった徳島の町を離れると、荒野になっていた。

「そういえば、ここは……?」

 ゴブリンは近くから奇声が聞こえたので上を見上げると、四肢を持つ大蛇がいた。

「ヒュ、ヒュドロス⁉」

 ヒュドロスはゴブリンを見ている。

(に、逃げなきゃ……)

 ゴブリンが逃げようとすると、ヒュドロスは追いかけてきた。

「う、うわあああああ‼」

 ゴブリンが喰われそうになると、

「きーっく!」

 近くで倒れる音がしたので見ると、ヒュドロスが倒れていた。

「えっ⁉ なに⁉」

「めし!」

 めしと言った声の方向を見ると、十歳ぐらいのポニーテールにした赤い髪にくりくりした黄色い目の少女が立っている。

 ヒュドロスが起き上がるとゴブリンではなく少女の方向に向かっている。

「ぱーんち!」

 少女のパンチで殴られたヒュドロスは倒れて動かなくなった。

「す……すごい……」

 ゴブリンが感心していると、

「おババ! やったぞ!」

「そうか。やったのか?」

 おババと言われた、臼に乗り骨と皮と言ってもいいくらいにやせ細ったバーバ・ヤーガは箒で臼の跡を消しながら移動してきた。

「おババ。ばんめしはこれにしよう」

「ああ。そうだね」

 少女がヒュドロスを持ち上げて移動しようとしているので、

「待って‼」

「「?」」

 ゴブリンは少し走って、

「あの……助けてくれて、ありがとう!」

「? べつにたすけていないぞ」

「結果的に助けた事じゃろう」

「そうか。じゃあ、けらいになれ」

「えっ?」

「けらいになれば、いっしょにめしをくおう」

「め、飯って……?」

「これだ」

 少女はヒュドロスをボールのように回転させた。

「これえ~~⁉」

 それから少しして移動してから、ヒュドロスの口から棒を刺してから火で焼いているのと同時におババと言われたバーバ・ヤーガはタレみたいな物を作っている。

 ヒュドロスが焼けると、

「できたぞー」

「……」

「けらいならばくってもいいんだぞー」

「いや……モンスターは……」

 美味しいモンスターは指で数えられるほどで品種改良をしていなければ、大半のモンスターはまずくて人間は食べられないのだ。もし食べられると思っているのは、Web小説や漫画の読みすぎである。

「けらいにならないのかー?」

「……」

 ゴブリンは考えてみた。

(確かに、この少女はヒュドロスを二発で倒したんだ。こんなに強いのなら、家来になれば安全かも……)

「…………」

 それから少しして、

「よろしくお願いします」

 少女は右手を出したが、その右手には水かきがついている。

「そうか。よろしくなー。なまえはセルだ。こっちは、おババだ。おまえ、なまえは?」

「あっ、ありません」

「じゃあ、ごぶりんだから、鬼平かゴブ平だ。どっちがいい?」

「んー。じゃあ、ゴブ平で」

「ゴブ平なのか」

「なぜ、ゴブ平じゃ?」

 ゴブリンは嬉しそうに、

「ゴブ平の方がかっこいいから」

「……そうか」

 ゴブリン改めゴブ平はセルと呼ばれる少女の下につく事になった。

「さあ、たべるぞ」

 ヒュドロスを適当に切ってから、セルはタレを付けて食べている。

「えっと……」

 味付けせず食べてみると、

「まずっ‼」

 ゴブ平は、口中に悪臭がして、それが鼻に抜け吐き気して、これは誰も食べる物ではないので食べるのをやめようとした。

 そんなゴブ平を見ておババは、

「そいつにタレを付けて食べるのじゃ」

「あ、ああ、はい」

 ゴブ平がタレを付けてヒュドロスを食べると、

「辛い‼」

 辛さで味は分からなくなり、香辛料でにおいも消えてしまって、何も感じなくなった。

「そりゃそうじゃ、味を殺さないとモンスターなんて食えたもんじゃない」

「で、でも、辛い、ですよ。ヨーグルト……」

 ゴブ平の唇は赤く腫れており、そのタレの辛さが分かる。

「そんな贅沢品ないぞ」

「そ……そうですか……」

 そんなゴブ平は気にも留めず、セルは幸せそうに食べている。

「うまいぞー。おババ」

「……そうか」

 ほめられたのに、おババは嬉しくなさそうだ。

 セルは二口、三口と食べている。

「おババさん。嬉しくないのですか?」

「……おババでいい。……モンスターの肉はまずい。モンスターの肉を食べるために味を殺して作ることでセルの味覚がおかしくなったら、どうしようと思っているのじゃ」

「……確かに」

 こんな辛い味付けを子供のうちから食べていると味覚障害になりそうだ。それを心配しているんだな。とゴブ平と思っていると、

「おババ、おかわり!」

「あいよ」

 おババはヒュドロスの肉を切っている。

「とはいえ、セルも成長期じゃ、食べさせないわけにはいかん」

 モンスターの肉はどうしようもなくまずいが、栄養は肉と変わらないので食べる物が無い時はいやいやだが徳島県の民は食べている。

 ヒュドロスを完食すると、

「ねるぞー」

「ほれ、歯を磨いて寝るのじゃ」

 セルは歯を磨いているが、使い込んでいる歯ブラシで歯を磨いている。

「……徳島、劣悪な環境だな。サヌキやイヨと大違いだ」

 徳島と言う町は、強いモンスターから弱いモンスターがいるので、徳島も人が住めなくなったが、現在は運が良ければ生き残れるので、流刑地として現在に至っている。

 なぜ流刑地になったのかは、二十一年前の異世界のトンネルが開いた時に囚人も避難させないといけないのだが、その時、急激な数に香川県の刑務所は対応できなかったため、凶悪な囚人を徳島に捨てて流刑地になったのである。

 現在も香川県とイヨの国の凶悪犯を徳島に連れて行き、そのままにしておくのだ。

 その後も流刑地をいいことに不法投棄のゴミを捨てるだけではなく、本州の人間も負担を減らすため、死刑囚を徳島に送っているので、どんどん凶悪犯が増えていく地になっているのだ。

「さあ、寝るのじゃ。セル」

「ああ」

 セルは寝袋に入っているが、ゴブ平は、

「布団は……?」

「知らん! 適当に寝ろ!」

「え~」

 ゴブ平はその辺で横になり、

「……寝るか」

 セルやゴブ平は静かに眠った。

 日が昇っていない薄紫色の朝、

「いてっ!」

 ゴブ平は杵で叩かれて目が覚めた。

「痛いなあ。何だよ⁉」

「いつまで寝ておる! 行くぞ‼」

「いくぞー」

 セルは日が昇っていないのに、元気に動いている。

「行くぞって、どこに?」

「海じゃ!」

「う、海⁉」

「行くぞ!」

「えっ⁉ 待って‼」

 セルとおババは歩き出した。

 二人に連れられて歩くと、青い空と海の穏やかな海が見えた。

「ああ、海だ……」

「じゃあ、まってろー」

「⁉」

 セルは、Tシャツとスカートと下着を脱ぎ、全裸になって海に飛び込んだ。

「え、えーと……」

「しばらく待っているのじゃ」

 二分経ち、五分経ち、十分経ち、三十分経った。

「お、おい⁉ 大丈夫なのか⁉」

「待つのじゃ」

「で——」

 すると海から水柱が立ち、セルが出て来た。

「おババー! いっぱいとってきたぞー!」

「そうか。じゃあ、食べようか」

 セルは魚を大量に取って、ゴブ平たちの所に帰って来た。

「さあ、セル。体を拭いたら着替えるのじゃ」

「ああー」

 ゴブ平が魚を置いて、体を拭いている全裸のセルを見ると、

「お前は男だろう。見るな‼」

 おババに杵を投げられ、杵はゴブ平に当たってしまった。

「あっ、ごめんなさい!」

 セルが着替えると、おババはたき火をして魚を焼いている。

「ほれ。出来たぞ」

「さかなー!」

「さ、魚ですか⁉」

 セルも嬉しそうだが、ゴブ平も嬉しそうだ。

「魚だ。食えないかと思った」

 セルとゴブ平が魚を食べていると、おババは魚を切り開いている。

「干物でも作っているんですか?」

「そうじゃ。魚もモンスターもいない時、または獲れない時、足りない時の食事にしようかと思ってな」

「ああ、そうですね。ですが、セルって泳ぎが得意なんですね」

「それはそうじゃ。セルは、メローのハーフじゃ」

「ああ、メローの」

 海底で生活をしているメローのハーフ、純粋なるメローはコホリン・ドリューと言う赤い頭巾もしくはケープのようなものが無ければ水中に潜れないが人間の血が混ざっているのならば、それらは無くても水中に潜る事は可能なのだ。

 徳島県は無法地帯の流刑地ゆえ、人間とモンスターなどが結婚してそのハーフの子が生まれており、その者たちは珍しくない。

「おババー。おかわり」

「……仕方ないのう。待っておれ」

 開いた魚を焼いていると、おババはゴブ平に話しかけた。

「セルは食べ盛りじゃ。干物にしても、すぐに食べ終わってしまう」

「ははっ……。見たところ、そうですよね」

「ごちそうさまー」

 セルは開いた魚を全て食べ終え、横になり昼寝した。

「ぜ、全部……」

「そうじゃ、そのくらい食べるわ」

 ゴブ平は思った。

(ある物は全て食べてしまう。けど、この二人といれば生き残れるかもしれない……)

 これが徳島県の日常だ。

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