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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている8
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香川でみんな生きている8

 高松市、ダンジョン内部。

「お姉様たち。ここが地下六階ですね」

「そうみたいね」

「地下六階は、誰も行った事ないんじゃないの?」

「と思います。情報がありませんから、調べてみます」

 カレンが魔法を使って調べてみたが、

「……ダメです。見えません」

「そう。自分たちで探すしかないわね」

 三人は歩き出した。

 地下六階、そこは極彩色の壁ではなく、黒色の壁と床になった。

「……雰囲気が違いますね」

「そうね。六階になると、雰囲気も変わるみたいね」

「……って事はモンスターも強力かも」

「頑張ります」

 三人が地下六階を進むと、巨大な蛇のモンスターが現れた。

「モンスター‼」

「任せて!」

 梢が槍で蛇を刺したが、蛇はまだ動いている。

「⁉ 離れて‼」

 三人が離れると、蛇のモンスターは毒を吐き出したが、全員無事だった。

「次はあたしよ!」

 梓が火炎放射器で燃やすと、蛇は暴れまわり黒焦げになって倒れた。

「お姉様……さすがです」

 二人の活躍を見たカレンは落ち込んだが、二人の姉はカレンの頭を撫でた。

「落ち込まないの。憐も憐で出来る事があるから、気にしない」

「そうよ。魔法は憐にしか出来ない事だから」

「お姉様たち……」

 カレンは元気になり、先に進んだ。

「その意気よ」

 先に進んだ三人は、少し広い場所に見つけた。

「あっ⁉」

 大量のアイテムを置いている所の奥にオークが座っている。

「オーク⁉」

 梓が叫ぶと、オークは三人を見た。

「……ン? 人間、ココマデ来タノカ?」

 訛りのあるオークの言葉は三人の頭の中から聞こえる。

「⁉ テレパシー⁉」

「ソノヨウナモノダ。ソレヨリ、ココマデ来タノカ? 人間」

「ここまで……誰も来ていないものね」

「アア、オ前タチガ初メテダ」

「あの……何しているのですか?」

 カレンがオークに聞くと、液体が入った瓶を持って、

「見テノ通リ、商売ダ」

「商売って、お札は使えるの?」

 オークは首を横に振った。

「コノ世界ノ金ハ、使エナイ。金ジャナクテ、モンスターヲ、持ッテキテクレレバ、ソレデ取引ヲスル」

「モンスターですか? それなら」

 カレンは先程倒した焼けた蛇のモンスターを移動魔法で取り寄せた。

「アア、コレカ。…………コレハ、焼ケテイルナ。炭モ使エルカラ、コレグライカ」

 オークは液体の入った瓶を三つ、三人の前に出した。

 向かって左は赤色、真ん中は青色、右は黄色の液体が入っている。

「コノ炭ナラ、ドレカ二ツ持ッテイキナ。赤イノハ魔力回復、青イノハ体力回復、黄色イノハ回復量ハ少ナイガ両方回復出来ル薬ダ」

「どうします?」

 梓は少し悩んでから、二つを指さした。

「じゃあ、赤いのと青いのを下さい」

「マイド」

 オークは梓に二本の薬を投げた。

「ありがとう。本当に効くか分からないけど」

「効果ハ本物ダ。安心シロ」

「そう。じゃあね」

 三人はオークと別れて、次の階層に向かった。

「次は地下七階ね」

 地下七階も同じ壁や床になっている。カレンは魔法を使って調べているが、

「駄目です。わかりません……」

「仕方ないわ。ここも自力で探しましょう」

 梢は先に歩き出してから、二人も後を追った。

「そうね。何が出るやら」

「地下七階、モンスターはどんなのかしら?」

「さあ、スライムではないかもね」

 カレンは周りを見ながら、

「スライムでも強敵かもしれませんよ」

「スライムなら倒せるわよ」

「油断はしないでください。お姉様た——」

「キャハハハ!」

「「⁉」」

 目の前に甲高い声で笑う子供が現れた。その子供の姿は不気味なピエロの姿をしている。

「人?」

「モンスター?」

 ピエロは三人にカラフルなボールを投げつけた。

「⁉ 危ない‼」

 梢がボールを槍ではじくと壁にぶつかり爆発した。

「モンスターよ!」

 モンスターだと理解した三人が構えると、ピエロは大量の爆弾ボールを投げつけた。

「お姉様たち‼」

 カレンはバリアを張り、爆風から二人を守った。

「行くわよ!」

 梢はバリアから飛び出しピエロを斬った。

「キャハ、ハ……ハァ……」

 ピエロは倒れて動かなくなった。

「やったわ」

「でも、こんなモンスター初めてね。見た事ないわ」

「ピエロ型は初めてですね。あの人も見た事あるのでしょうか?」

「さあ? 写真撮って聞いてみたら」

「そうですね」

 カレンはスマホでピエロの写真を撮った。

「じゃあ、行くわよ。⁉」

「「「キャハハハ!」」」

「⁉」

 カレンたちの周りに大量のピエロ型モンスターが取り囲んだ。

「逃げられないわね」

「囲まれたわね」

「「「キャハハハ!」」」

 ピエロ型のモンスターは爆弾ボールを全て梢に向かって投げた。

「気を付けて!」

 カレンは自分たちの周りにバリアを張ると、爆弾が全て爆発した。

「くっ……」

「危ないわね……」

「……」

 爆発が終わるとカレンはバリアを解き、攻撃魔法でピエロ型モンスターを全て倒した。

「「「キャハ、ハ……ハァ……」」」

 ピエロが倒れたのを見ると、梓は走り出した。

「あ、梓お姉様⁉ どうしました⁉」

「梢! 憐! 逃げるわよ!」

 三人が走って逃げ、モンスターがいない事を確認すると、梓はため息をついた。

「姉さん。どうしたの?」

「何故、逃げたのですか?」

 梓はペットボトルの水を飲んでから、落ち着いた。

「……あのピエロ型モンスター、初めは私たちに爆弾を投げつけたけど、次は梢に投げたでしょ」

「そうよ。私に投げたわ」

「あれ、攻撃してきた人を攻撃しているの。モンスター一体を誰か攻撃すると、次は集団で襲ってくるの」

 すると遠くから、

「「「キャハハハ」」」

 甲高い笑い声が近づいて来ている。

「来たわ!」

「お姉様! 声からすると大量にいます‼」

「逃げるわよ!」

 三人が走って逃げていると、広い場所に大きな魔法陣が描かれている。

「魔法陣⁉」

「魔法陣か……」

「どうします⁉ ピエロの大群が来ますよ‼」

「本当ね。声が近づいて来るわ」

「「「キャハハハ!」」」

 だんだんと笑い声が大きくなっている。

「じゃあ、入ってみます?」

「…………そうね。何が起きるか分からないけど」

「行くわよ!」

 三人は同時に魔法陣の中に入ると、光に包まれた。

「!」

「ここは……」

 三人が見渡すと、何もない広い場所だ。

「キャハハハ!」

「「「⁉」」」

 三人が笑い声に気付くと後ろにピエロがいた。

「さっきの⁉」

「でも、大きさが‼」

 ピエロは子供ではなく、大人の姿だ。

「ここのボスみたいなものですか⁉」

「恐らく!」

「倒すわよ‼」

 梢が向かってくると、ピエロは飛び上がって、梢の後ろを取り、背中を蹴とばした。

「わあ!」

「梢お姉様‼」

 梢が倒れると、梓が火炎放射器をピエロに向けるが、

「キャハハハ!」

 ピエロは梓に爆弾ボールを投げつけた。

「しまっ——」

 爆弾ボールは子供型ピエロが投げつけた爆弾よりも強い威力だ。

「梓お姉様‼」

 梓もボロボロになり気絶した。

「お、お姉様……」

「キャハハハ!」

 ピエロは、カレンに向かってナイフを投げたがギリギリで避けた。

「くっ……」

「キャハハハ!」

 ピエロは素早くカレンに近づくと、カレンを蹴とばした。

「きゃあ!」

 カレンが倒れたが、意識はある。

「いったぁ……」

 カレンが見上げると、ピエロは片足を高く上げた。

「!」

 ピエロはカレンの右足を踏みつけると、ボキッと音がして曲がった。

「きゃあああああああ‼」

「キャハハハァ!」

 ピエロは大笑いをして、カレンの顔を見た。

「ううっ……」

 カレンは痛みで涙を流すと、ピエロは上機嫌に踊っている。

「お姉様たち……」

 つぶやくが二人は気絶したままだ。

「キャハハハ!」

「……!」

 ピエロはカレンの首を薄く斬った。カレンが震えると、ピエロは大喜びになっている。

「……!」

「キャハハハ!」

 怯えるカレンを斬って楽しんでいるピエロに目を合わさず、遠くで倒れている二人の姉を見た。

(梓お姉様…………。梢お姉様…………。あの人は今いないんだ…………。僕が負けたら…………誰も助けられない!)

 カレンは呪文をつぶやくと、全身が光に包まれたかと思いきや、部屋が光にあふれピエロは消え去った。

「はあ…………はあ…………お姉様…………ま——」

 カレンも気絶した。

 それから時間が経ち、憐が目を覚ますと、二人の姉が心配そうにのぞき込んでいる。

「お姉様……たち……?」

 憐が冷静に周りを見ると見慣れた憐の部屋だ。

「憐、大丈夫?」

「怖くなかった?」

「お姉様……僕は……?」

 憐が不安そうな表情を浮かべると、二人は笑って、

「憐、あなたがあのピエロを倒したのよ」

「あの後、ラブ様によって家まで帰ってきたの」

「そう……ですか……」

「後、足も治したくれたわ」

「足……?」

 憐が右足を動かすと、難なく動いたのを見た憐は号泣した。

「お姉様ぁ‼」

 二人に抱き着いて泣いている憐の頭や背中を梓と梢がさすっている。

「憐、あんたがいたから、このダンジョンクリアできたのよ。あたしたち二人だけじゃ、七階で失敗していたわ」

「バリアを張って私たちを守ってくれたし、ピエロも倒したし、泣かないの。憐、全て憐がしてくれた事なのよ」

「……はい」

 憐は泣き止み、二人の姉を見つめた。

(少しは強くなったでしょうか?)

 これが香川県の日常だ。

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