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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている
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愛媛でみんな生きている

 愛媛県松山市。

 いや、かつて、愛媛県松山市と言われていた土地で現在はイヨの国マツヤマとなっている。

 マツヤマは道路には自動車とSL風の大きな路面電車が走っており、水路があるその町並みは中世ヨーロッパ風になっている。

 その中で松山市と呼ばれた面影があるのは、道後温泉と愛媛県庁舎と松山城だけだ。

 そして建物こそ中世ヨーロッパ風だが、吊っている看板を見て四国のスーパーマーケットや全国区の有名なコンビニである事が分かる。

 スーパーマーケットの商品には見慣れない色や形の野菜や果物があり、惣菜も定番の物から見慣れない色の物も売っている。

 そして、スーパーマーケットで買い物をしている住民を見ると、

「ママ、これ!」

 小さい子がサツマイモを嬉しそうに持ってきた。

「違うわよ。これはサツマイモ。ジャガイモはこれ。今日はカレーなのよ」

 カゴにジャガイモを入れているエルフの母子が夕食の買い物をしている。

 そのカゴの中にはカレーのルーに、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、牛肉が入っている。

 コンビニではレジ横の商品も人間の町にあるコンビニと同じ商品が置いている。

 店内ではリザードマンが週刊誌を読み、オークが弁当を買っている。そして接客しているのは、制服を着たフェアリーだ。

 愛媛県松山市と呼ばれた土地に住んでいるのは、亜人や妖精、精霊、善良なモンスターに獣人と呼ばれる者達だ。

 二十一年前は人間が住んでいたが、人間を襲うモンスターが住み着き、人間は住めなくなり、愛媛県の人間は香川県に移住し、誰もいなくなった土地に亜人や妖精たちが新たに建物を作り直し、イヨの国マツヤマになった。

 が、政府は当然よしとせず、自衛隊を使い、亜人やモンスターの征伐を行うが、武器だけを壊され、自衛隊員は全員捕虜になった。

 この戦争を七日間戦争と言う。

 後日、自衛隊員は無事に解放された。

 その後、モンスターは四国から出ない事を知り、政府は四国を閉鎖したまま見捨てたのだ。

 愛媛県松山市改め、イヨの国マツヤマに改名し、人間のいる香川県から文化や技術を取り入れたマツヤマは急激に発展して、町並みこそ違えど、現代の香川県の人間と変わらない生活を過ごしている。

 そしてイヨの国マツヤマは夕方になり、多くの民が帰る中、町に一台の自転車が走っている。

「急げ!」

 自転車に乗っているのは、白いスカーフとピンク色のミニスカートのセーラー服を着た金色の髪をなびかせた美しく凛々しい緑色の目が印象的なエルフの少女だ。

「あーあ、鍛錬遅くなったよ」

 エルフの少女が乗った自転車は一軒の家で止まった。

「ただいまー」

 少女が家に入ると、揚げ物の匂いがした。

「夕飯!」

「おかえり」

 エルフの少女の入った部屋はダイニングで少女の父と母と兄が食事をしており、食卓にはトンカツやポテトサラダに味噌汁とご飯が並んでいた。

「いただきま~す」

 少女がそのまま席に着くと、

「ユーリナ! 着替えなさい!」

 着替えずに食事をする少女ユーリナに母親は激怒したが、

「よく噛みなさい! 体に悪いわよ‼」

 ユーリナが早食いで食べるので怒っていると、気にせずに、

「いいじゃない。早くしないと、歌番組が始まるのだ」

 話しながらユーリナはトンカツを食べている。

「食べながら話をしない‼」

 ユーリナが完食すると、

「ごちそうさま! では」

「あ! こら‼」

 食事を食べ終わったユーリナは二階に上がった。

「さて」

 ユーリナの部屋は、その中世ヨーロッパ風の外観とは違い中は現代風の女性らしい部屋だ。

 着替えもせず、ユーリナは座ってテレビのリモコンをつけた。

「始まった!」

 テレビには歌番組が映り、芸能人とアナウンサーが司会をしている。

 そして、最初のアーティストが歌うと、

「ふんふん」

 スマホでSNSをしながら、テレビを見ている。

「明日はフィリーと買い物か。なに買おうか?」

 翌日、町は雲一つない晴天の空だ。その町は平和そのものだ。

 ユーリナは一人、待ち合わせ場所で待っていると、

「フィリー」

「ユーリナ」

 声をかけたフィリーと呼ばれた少女はダークエルフの女子高生だ。だがおしゃれに着こなしている服は我々が知っているファストファッションだ。

 それに対し。ユーリナは昨日と同じセーラー服のままだが、腰に差している刀に目がいく。

 刀には触れず、フィリーは呆れながら、

「ユーリナ。あんた、制服で来たの。制服以外の服は無いの?」

「面倒だし、いいじゃないか。ユーサマもセーラー服だ」

「好きねー。あんた」

 ユーサマとは、伝説の剣豪の名である。

「まあ、いいや。どこ行く? フィッシュバー? アクセサリーショップ?」

「アクセサリーショップ行って、フィッシュバーでいいのではないか?」

「そうしようか」

 二人が少し移動すると、

「着いた」

 アクセサリーショップの中には可愛らしいデザインや見た事がない宝石のアクセサリーがセンス良く陳列している。

 商品はフェイが魔法で作ったアクセサリーが置いている。

 その店内にはニンフだけでなく人間の娘がアクセサリーを選んでいる。

「どれにする」

 フィリーはイヤリングやペンダントを見ている。

「うーん。今、貯金しているし、千円のピアスでいいや」

 フィリーは三千円のペンダントを買い、ユーリナは千円のピアスを購入した。

「次はフィッシュバーに行く?」

 フィッシュバーと言う店には、巨大な水槽があり、水槽の中には美しいマーメイドたちが泳いでいる。

 ウエイターを見ると正装したサハギンが給仕をしており、華麗なフレアバーテンディングを披露するバーテンダーは半魚人だ。

 客を見ると、神秘的な色のカクテルを飲み、新鮮な魚介料理を食べているが、耳と尻尾があり手が動物になっている猫や犬の獣人たちに混ざって人間のカップルも来ている。

 マツヤマには亜人や妖精、精霊、善良なモンスターに獣人が住んでいるが、イヨの国の者がサヌキと呼んでいる香川県からイヨにしかない物を求めて遊びや買い物に来ることもある。

 それがアクセサリーショップで買い物やフィッシュバーで食事をしている人間たちである。

「どれにする? あたしはシーフードサラダ」

「私はサーモンとイクラのパスタ」

 注文した食事がくるまでの間に、マーメイドが魅了の歌を歌っている。

「まあ……」

「はあ……」

 ユーリナやフィリーだけでなく、人間や獣人も魅了の歌に聴き入っている。

 人魚の魅了の歌もマツヤマではエンターテインメントとして生活の一部になっている。

「さて、次はどこに行く?」

「んー……」

『モンスターです。モンスターです』

「モンスター緊急速報メール⁉」

「モンスターは?」

 二人がスマホを見ると、

「マンティコラだよ‼ しかもマツヤマの中に入って来てるよ‼」

「マンティコラか……」

「どうする? 避難——」

 ユーリナはスマホを見てポケットに入れたと同時に走り出した。

「……するワケないよね」

 マツヤマの町に叫び声や矢を射る音や、叩く音が聞こえてくる。

 赤色のライオンのような体にサソリの尾に似た尻尾を持つ、人のような顔を持つ怪物が暴れまわっている。

 人間たちは素早く冷静に逃げ回っていると、

「あっ」

 一人の少女が転んだのを見たマンティコラが少女に向かってくると、

「きゃあー!」

 転んだ人間の少女が悲鳴をあげ、マンティコラに襲われそうになると、

「危ない‼」

 少女はワーウルフによって間一髪で救出した。

「このまま避難させるぞ!」

 ワーウルフは少女を抱えたまま連れて行った。

「人間は避難するんだ‼」

「あっちだ」

 亜人たちが遊びに来ていた人間たちを避難させている一方で、戦っている者たちがいる。

「はあ!」

 エルフが弓を放って攻撃している。

「とお!」

 ドワーフはハンマーで殴っている。

 マンティコラにはたいして効いていない。

「ちっ」

 マンティコラが尻尾の針で刺そうとすると、ドワーフたちは逃げ出した。

「危ない!」

「毒針に刺されたら死ぬぞ‼」

 マンティコラは余裕を見せている。

「なめているな」

「くっ……?」

 エルフやドワーフたちは遠くから走って来る足音が聞こえた。

「あれは……」

 走って来たのはユーリナだ。

「ユーリナ⁉」

「ユーリナか!」

 マンティコラはラッパのような声を出し、三列並んだ歯を見せユーリナに向かってきた。

「はああああ‼」

 ユーリナは刀を抜きながら走り、マンティコラを斬れば、マンティコラは倒れた。

「やったか?」

「まだだ!」

 起き上がったマンティコラは怒りだし、ユーリナに突進してきた。

「…………」

 ユーリナは静かに構え、

「…………はっ!」

 ユーリナはマンティコラを真一文字に斬ると、マンティコラは上下に真っ二つになった。

「…………はあ」

 刀を振り、納刀すると、フィリーがやって来た。

「もう終わったの⁉ 早いよ」

「行くぞ」

 ユーリナとフィリーは、そのまま去って行った。

 そして、残された人々は、

「すごいな……。あのエルフ」

「強いわね」

 人間たちの話を聞いたドワーフやエルフは、

「そりゃそうさ、あ奴はエルフでありながら、魔法や弓を使わず、日本刀一本で単身戦うエルフ」

「ユーリナ・ドラセンバーグ、マツヤマの民はサムライエルフって呼んでいるわ」

 これがイヨの国の日常だ。

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