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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている4
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徳島でみんな生きている4

 徳島県の夜。

 モンスターの焼き肉を食べ終わると、ゴブ平は地面に絵を描いている。

「セルちゃんは500円を持ってバー・ルージュに行きました。そこでセルちゃんは250円のケーキと120円のジュースを食べました。おつりはいくらでしょう?」

「けーきをくったらしごと!」

「セル! 仕事じゃなくて、お金を出すの!」

「かねをだすのか?」

「そう」

「え~っと……」

 セルは指を使っていると、ゴブ平は、

「……セル、指を使って数えても無理だよ」

「おババー! いくらだ?」

「こら! おババに聞いたらダメ!」

 金を持ったおババはセルの方向に向いて、

「自分でするのじゃ、たまには厳しくせんとな」

「えー」

 セルがゴブ平と勉強している間、おババは巻き上げた金を数えている。

「大儲けじゃ。さて、なに買おうかのう」

 ゴブ平はおババの元に来て、話を聞く。

「おババ、買い物って、徳島で買い物って地下街で、ですか?」

「地下街で武器や色や怪しげな物は期待できるが、食べ物は期待できん」

「じゃあ、どこで買い物するの?」

「明日じゃ。なにが買えるかは、分からんが」

「?」

「ゴブ平ー! わからーん! しごとする!」

「セルー。これはね——」

 ゴブ平はセルに計算の仕方を教えて一日は終わった。

 翌朝、徳島駅跡地にて、

「今日は誰かのう?」

「だれだー?」

「いったい何だろう? あれ⁉」

「来ているじゃろう」

 徳島駅跡地は普段は閑散としているが、今日は珍しく人で賑わっている。

「これくれ!」

「ちょうだい!」

「にぎわっているなー。——ん? ちゃんりな、いたかー!」

 ちゃんりなは野菜を持っている。

「セルちゃん。私も買い物に来ているのよ」

 賑わいの中心には、野菜をたくさん乗せたトラックと年配の男性がいる。

「おー! おっちゃん‼」

 おっちゃんと呼ばれた男性はセルに気付いて、

「セルちゃんか。はい。アメや」

 セルの手のひらにイチゴミルク味のキャンディが手渡された。

「あめ!」

「よかったのう。セル」

「アメだね」

 おっちゃんはセルの隣にいたゴブ平に気付いた。

「セルちゃん、ゴブリンを仲間にしたのかい?」

「そうだ! けらいだ!」

「……家来」

「……そういえば、果物盗んで、事故起こしたゴブリンがいたな。ニュースで言ってた」

「…………はは」

「?」

 セルは分からないようだが、ゴブ平は遠くを見つめている。

「——ところで野菜は?」

「野菜は、ニンジンとかキャベツとか……色々」

「では、各野菜を一種類づつ買おうかのう」

「毎度! サービスで2000円ぽっきりにするよ!」

「悪いのう」

 徳島で買い物できる場所は地下街だけでなく、香川県またはイヨの国から不定期にやって来る行商人から買い物をしている。新鮮で値段も安いため、普段、食べ物を満足に買えない者たちが買いあさっているのだ。

「⁉」

 野菜を買っている全員が気配に気付いた。

「む⁉ 離れろ‼」

 走ってくる木のモンスターが駅前に現れたと同時に、おっちゃんは前に出て銃を撃った。

「シュォォ……」

 大きな穴の開いた木のモンスターは倒れた。

「やるなー」

 おっちゃんは銃をしまいながら、

「このぐらいは倒せんと、徳島には行けねぇよ」

 冒険者の資格を持たないと徳島に行く事が不可能なので、行商人は冒険者の資格を持つ者が行っているのだ。

 特に行商人は徳島では強盗に襲われる事も多いので、それに対抗できる実力を持っているのだ。

「またおいで」

 行商人はセルたちを笑顔で見送った。

「おう!」

 買い物を終えたセルたちは移動した。

「かったかった~」

「今日は鍋じゃ!」

「お、重い……」

 ゴブ平が大量の野菜を背負っているが、セルはアメを舐めながら歩いている。

「ゴブ平、きょうはなべだ」

「鍋、か……嬉しいな」

「そうだろー。なべー」

 久しぶりの野菜に喜ぶセルとゴブ平だが、おババは考え込んで、

「野菜だけじゃ、嬉しくないのう」

 その言葉を聞いたゴブ平は青ざめて、

「まさか、モンスターを……」

「アホか‼ 海鮮鍋じゃ‼ セル、魚を獲りに行くぞ‼」

「さかなのなべか。セルにまかせろ」

 海まで歩くと、役割分担をした。

「ワシとゴブ平は貝や海藻を拾う。セルは魚を獲ってきておくれ」

「わかった」

 セルは裸になって海に飛び込んだ。

「では、おババ。貝や海藻を探しましょうか」

「うむ」

 バケツを持ったおババとゴブ平は二手に分かれて、海を散策した。

 青い海と海岸だけ見ると、平和で流刑地と言う感覚は無い。

「……」

 ゴブ平は潮風に当たりながら、

「海か……」

(サヌキの穏やかな海が懐かしいな……)

「でも、海はいいなあ……心を癒やしてくれる」

 海を感じているゴブ平が足元を見ると、

「おっ! 貝だ! 大きいぞ!」

 落ちていた貝を調べると、

「……なんだ貝殻か」

 ゴブ平は貝殻を見ながら、

(きれいだなぁ。この貝殻。……貝殻集めて、セルに貝殻のネックレス…………まだ早いか)

「…………」

 ゴブ平は貝殻をしまった。

(一つぐらいなら、喜ぶかな?)

 そして、少し向こうを見ると、

「海藻や貝だ‼」

 岩には貝が張り付いており、海には海藻が見える。

「大量だぁ‼」

 ゴブ平は夢中になって貝や海藻を拾っていると、

「ん? わっ⁉」

 海から巨大な魚が出て来た。

「モ、モンスター⁉」

 巨大な魚はゴブ平に向かってきた。

「おわあ‼ に、逃げなきゃ!」

 ゴブ平が逃げたが、巨大な魚は追いかけて来た。

「うわあああぁぁぁ‼」

 走って逃げていると、貝殻を落とした。

「しまった!」

 ゴブ平が戻って貝殻を拾って、貝殻を見ると、貝殻に傷は無い。

「よかった……ん?」

 空が暗くなったかと思えば、巨大な魚が大きな口を開けて上空から襲ってきた。

「うわあああ‼」

 ゴブ平がもうダメかと思った瞬間、

「⁉」

「ぱーんち」

 巨大な魚は吹き飛ばされた。ゴブ平が驚いていると、ゴブ平の隣にセルがいた。

「こらー」

 セルは魚の方に向かっていき、

「とんでけー」

 セルが巨大な魚の尾を掴んで、振り回し投げ飛ばした。

「セルのけらいにてをだすなー!」

 巨大な魚は海まで飛んで行った。

「セ、セル……」

 セルはゴブ平に近づいた。

「ゴブ平、むきずか?」

「あ、うん……ありがとう。セル」

 セルは笑って、

「きにするな! けらいをまもるのもセルのやくめだ!」

「セル……」

「それよりゴブ平、セルはさかながとれた。ゴブ平は?」

 セルが指さした先には大量の動いている魚が置いているのを見たゴブ平も貝や海藻が入ったバケツを見せた。

「ああ、貝や海藻、獲れたよ」

 ゴブ平の成果を見て、セルは上機嫌になった。

「すごいなー、たくさん! おババよろこぶぞ!」

「はは」

「かえるぞ。ゴブ平」

「うん」

 その後、おババと再会したセルとゴブ平は成果を見せあった。

 まずセルが獲った大量の魚を見たおババは、

「セル! さすがじゃ!」

「おー! ほめられたー!」

 セルは嬉しそうに飛び跳ねている。

 次にゴブ平の貝や海藻を見て、

「ん? これは……」

 おババは険しい顔をしてゴブ平を睨んだ。

「お、おババ……」

 ゴブ平は怒られるかと思い覚悟を決めると、おババは笑って、

「ゴブ平、しっかり獲ったな」

「おババ……」

(珍しく褒められた……)

「さて、海鮮鍋じゃ! 作るぞ‼ お前も手伝え‼」

 おババとゴブ平は野菜を切り、魚の下ごしらえをした。

 そして夕方、

「出来た!」

 野菜と海鮮たっぷりの海鮮鍋が湯気を立てている。

「な、鍋……」

「くうぞー」

「食べる前に、いただきますと言うのじゃ」

「いただきますだー」

「では、いただきます」

「うむ。いただきます」

 三人は海鮮鍋をつついていると、

「ゴブ平! 貝が多い! 減らせ‼」

「ええっ⁉」

 ゴブ平のお椀に入っている貝は、二人より一個多いぐらいだが、おババは貝を二個取り上げ、セルのお椀に入れた。

「セルにやるのじゃ、食べ盛りだからな」

「ああっ!」

 そのやり取りを見たセルは、

「ゴブ平! くえ! セルのさかなやる」

 セルはお椀に入っている魚をゴブ平のお椀に入れた。

「セ、セルぅ~」

 ゴブ平はセルに感動している。

「セルもゴブ平もたべざかりだ くえ!」

「セルはいい子だねえ。あげなくてもいいのに」

 すると、セルは鍋から魚を取り、おババのお椀に入れた。

「セ、セル⁉」

「おババもやる! セルもゴブ平もおババもたべざかりだー!」

「セ……セル…………いい子だよぉ……」

 おババはセルを抱きしめた。

「おババいたいぞ」

 そして食後、

「片付けじゃ、手伝え」

「はいはい」

「はい、は一回じゃ!」

「いて!」

 ゴブ平は杵で殴られた。

 夜、就寝前、

「セル」

(緊張するなぁ……)

 ゴブ平の胸はドキドキして、手も震えている。

「どうした? ゴブ平?」

「セル、これあげる」

 ゴブ平はセルに貝殻を渡した。

「ありがとう。ゴブ平」

 セルはニッコリ笑った。

(やっ、やったぁ……)

 ゴブ平が喜んでいると、セルは貝殻を回して、

「ところで、これなんだ?」

 セルは貝殻を食べた。

「あじしないな? なんだこれ?」

 セルはバリバリと音をたてて、貝殻を噛んでいる。

「セ、セル……」

 ゴブ平は呆然とした。

「どうしたー? ゴブ平? これくうかー?」

 セルは貝殻を食べながらしゃべった。

「…………」

 ゴブ平は真っ白になった。

 これが徳島県の日常だ。

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