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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている4
14/40

愛媛でみんな生きている4

 イヨの国マツヤマの中央にあるイヨ高等学校にて、

「お昼、お昼~」

 イヨ高等学校の学生食堂は全校生徒が集まっていて、建物が石造りで学生や教師は精霊や妖精・亜人にモンスターだが、人間がいる学校と変わらない、にぎやかな雰囲気だ。

「今日はこれ! 日替わりランチ‼」

 フィリーは音をたてたアツアツのチキンカツ定食を持って上機嫌だ。

「と言っても、チキンカツ定食だけど」

 冷静に言うアイリスは薬膳定食だ。

「日替わりランチにはデザートが付くんだよ! 今日はプリンだよ‼」

「デザートは重要な事なのか?」

 濃厚鳥白湯ラーメンセットを食べているユーリナが言う。

「ショートケーキやアイスクリームとか種類は豊富だけど、デザートは自腹だよ。じ・ば・ら! 日替わりランチならタダでデザート付くんだよ!」

「デザート食べないからな」

「もったいない! プリン一口あげるから食べてみ! 甘さとほろ苦さのバランスが絶妙でマジ美味いから!」

「いいよ。欲しくない」

 ユーリナがラーメンのスープを飲もうとすると、

「ユーリナぁ‼ スープくれぇぇええ‼」

 叫びながら学ランのワーウルフの学生がやって来た。

「ジョ、ジョン⁉ どうした⁉」

「ユーリナ‼ スープくれ‼ ご飯にかけるから‼」

「め、飯にか……」

「見てくれ! これを‼」

 ジョンが見せたのはご飯と味噌汁とお新香があり、メインに魚肉ソーセージ一本の定食だ。

「これは、あの……」

「そうだ。イヨ高等学校最安値定食、魚肉ソーセージ定食だぁ‼」

 魚肉ソーセージ定食200円だ。ただし、ご飯と味噌汁お代わり自由。

「昨日、サヌキで買い物しすぎて金欠なんだ! ユーリナ、スープくれ!」

 ユーリナは呆れながら、ジョンのご飯にスープを入れている。

「……スープは構わないが、初回限定特典目当てで金欠なんだろう」

「そうだ! 買いあさって金が無い‼」

 ジョンは堂々と言い切ると、横にブレザーの制服を着たドラゴニュートが座った。

「おおー! 魚肉ソーセージ定食か。食うヤツいるのか?」

「エディ! ——テメェ‼ 1ポンドステーキセットじゃないか⁉ 2000円! 俺のと一桁違う‼」

 スープとライス、サラダ付きの1ポンドステーキだ。焼き方はローからヴェリー・ヴェルダンまで選べる。

 エディと呼ばれたドラゴニュートはレアステーキを食べながら、

「昨日、冒険者のバイトをして一山当てたからな。金入ったと同時にサヌキに行って予約しにいったからな。こいつは計画的に使わないからな」

「うるさい‼ ステーキ食えなくても、限定版は逃さん‼」

「ふん」

 二人が揉めていると、

「ん?」

 ユーリナたちは、何か走る人影らしきものが見えた。

「なんだあれは?」

 ユーリナたちが疑問に思っていると、食堂に校内放送のチャイムが鳴った。

『ただいま、園芸部の育てている巨大マンドラゴラが脱走しました』

「園芸部か……」

「また?」

 イヨ高等学校の園芸部は人間の学校みたいに、お花や野菜を育てるような部ではなく、新種の植物と言う名のモンスターを栽培するイヨ高等学校でも上位の危険すぎる部だ。

『なお、無事に捕獲出来たら、園芸部から食堂のタダ券一枚贈呈するとの事です』

「なに⁉」

 ジョンは大急ぎで食べ終わると、食堂の外に出た。

「待ってろ! 1ポンドステーキ‼」

「行ったか」

「無視して食うか」

 そして放課後、教室にて、

「マンドラゴラぁ~……先生に捕獲された……」

「そんなもんだ」

 落ち込んでいるジョンをエディが慰めていると、アイリスが来て、

「ジョン。落ち込むのは、まだ早いわよ。あなた昨日、ゴーレム制作実習、さぼったでしょ」

「う……」

 更に落ち込むジョンを見て、エディは嬉しそうに、

「さぼったもんな~」

「エディもでしょ。二人でさぼって、バイトに出かけたのでしょ」

「……」

 アイリスに言われたエディは固まった。

「二人とも。放課後、ゴーレム制作しないと単位貰えないわよ」

「「…………」」

「私は委員会活動あるから見られないけど、二人とも作っておきなさいよ」

 アイリスが教室を出ると、ジョンとエディは顔を見合わせ、

「どうする?」

「適当に作っておこ——」

「言っておくけど、適当に作ったら怒られるわよ」

「「…………はい」」

 その後、二人は外で土を取っている。

「でも、ゴーレムってワンパターンな形だし……」

「だから、作る気ねえんだよ」

「どうする?」

「普通のゴーレム作ってもなあ……あっ! そうだ!」

 ジョンは土を集めだした。

「あのさぁ……」

 ジョンは、ゴーレム制作の計画を言った。

「そうか! なら、俺も……」

 エディもゴーレムを制作した。

「「出来た!」」

 二人はゴーレムを完成させた。

「これは傑作だな……」

「ああ! これはすごいぞ‼」

「ユーリナたちに見せようぜ」

「俺、呼んでくる」

 エディはユーリナとフィリーを呼んだ。

「なんだ? 強力なゴーレムを作ったのか?」

「つまらないのなら、蹴とばすぞ」

「見ろ! 新しいゴーレム‼」

「これって……」

 エディが作ったゴーレムは天空の城で有名なロボット兵だ。

「「バルス!」」

「見て早々、滅びの呪文言うなよ! せっかく作ったのに‼」

「俺たちも言わせろ!」

「それにしても……」

 エディのゴーレムは歩いているだけだ。

「つまらねえ」

「ああ、なにも起こらないな」

 ユーリナはemethの最初の文字eの部分を切った。切られたゴーレムは土に還った。

「だああああぁぁぁ‼ 作ったのに‼」

「エディ! 嘆くな‼ 俺のゴーレムがある! 見ろ‼」

 ジョンの作ったゴーレムは巨大な——

「オメ——」

「やめろ」

 フィリーが放った矢はゴーレムのeの文字に命中し、ゴーレムは土に還った。。

「うわぁぁぁぁぁ‼ 苦労したのに‼」

「フィリー、そっちは文字狙わなくても……」

 ユーリナは刀を納刀した。

「ユーリナ……あんた……倒す気だったの?」

 土の塊を呆然と見ていたジョンとエディは我に返り、

「待て! 俺たちの作品だぞ‼」

「そうだそうだ! せっかく作ったのに‼」

 二人が激怒しているが、ユーリナたちは無視して、

「すぐ倒せるゴーレムを作るな」

「あ~あ。またヒマになった。行こ。ユーリナ」

 ユーリナとフィリーは去った。

 それからしばらくして二人は、

「ユーリナとフィリーめ……」

「俺たちのゴーレムを……」

 ジョンは土を拾いだした。

「よし! 見てろ! よし合作だ‼」

「合作か⁉ 任せろ!」

「すごいゴーレム作ってやる……見てろよ」

「でも、なに作るんだ?」

「あっ……そうだな…………」

 ジョンが新しいゴーレムのモチーフを言うと、

「なに⁉ だが……いいかもしれないな」

「そうだろう。よし! 作るぞ‼」

「ああ!」

 二人の新しいゴーレム制作は朝まで続いた。

 朝、

「これを……持たせて……」

「ああ! よし!」

「「完成だ‼」」

 ジョンとエディは手を取り合って泣いている。

「だが、感動しているヒマは無い!」

「ああ、ユーリナたちを呼ぶぞ!」

 ジョンが電話して、一時間してから、ユーリナたちがやって来た。

「ユーリナ来たか」

「来たぞ。今度は何を作った?」

「朝イチで呼んだんだ。つまらなかったら刺すよ」

「そこまでゴーレム制作って時間かかるものかしら?」

「かかるさ。見ろ!」

 ジョンとエディが見せたゴーレムは——

「ユーリナ?」

「……ユーリナよね?」

「私か?」

 三人の目の前にあるのは等身大ユーリナのゴーレムだ。

「私のゴーレムを作ってどうする気だ?」

「お前らが苦心して作ったゴーレムを土に還すからだ! その報復だ‼」

 アイリスはメガネを掛けなおしながら、

「ユーリナとフィリーから聞きました。あのゴーレムでは不合格です」

「不合格って傑作なのに‼」

「普通のゴーレム作って何になる‼」

「普通のって……」

 ジョンとエディとアイリスで言い合いになっていると、等身大ユーリナのゴーレムは動き出し、

「⁉」

 抜刀して全員に斬りかかった。

「うおっ! ——すげぇ!」

「斬りかかってきたぁ! ジョン成功だな‼」

「ああ! 成功だ!」

「なにバカ言ってんだよ! どうする——」

 ユーリナも抜刀して、ユーリナゴーレムに向かってきた。

「はっ!」

 ユーリナとゴーレムは鍔迫り合いになった。

「ふ……。よくぞ精巧に作ったな。この太刀筋は私じゃないか」

「ユーリナ。感心するな! それよりemethの文字はどこだ⁉」

 ユーリナのゴーレムには、ぱっと見ではemethの文字は見えない。

「それか? うなじにある」

 ゴーレムのうなじのところにemethがある。

「そこ⁉ じゃあ——」

 フィリーとアイリスが首を狙おうとすると、

「やめろ! このゴーレムは私が倒す!」

「マジ⁉」

「そんな、危険よ‼」

 ユーリナは戦いながら、

「では、すぐに終わらせる!」

「はあっ⁉」

 ユーリナは目に見えない速さでゴーレムの首を斬った。

「ああっ‼」

 等身大ユーリナゴーレムは土に還った。

「じ、じ、自信作が……」

「簡単に負けるなんて…………」

 ユーリナは刀を鞘に納めると、呆然としているジョンとエディに近づき、

「お前達、いいもの作るな! 早速ユーサマを作ってくれ!」

「へっ? ユーサマを?」

「ユーサマって、どんな姿しているんだ?」

「作れ! ユーサマを作るのだ‼」

 ユーリナは刀を抜いて脅した。

「そ、そんな!」

「逃げるぞ!」

 ジョンとエディはユーリナから逃げたが、ユーリナは追いかけた。

「それより、ゴーレムは?」

 これがイヨの国の日常だ。

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