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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている3
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徳島でみんな生きている3

 徳島県。

 ボロボロになった町中でゴブ平は下を向き探し物をしている。

「う~ん。ないなあ……」

「ゴブ平、なにをしておる?」

「ああ、おババ。なにか使えそうな物が落ちてないか、探しているんだ」

 あちこちで不法投棄されたゴミが大量に落ちているが、ゴブ平の見立てでは使えそうな物は無い。

「ふん。落ちてたら誰かが拾っておるわ」

「そうだよな~」

 おババとゴブ平が話をしていると、セルが周りを走り回って探している。

「セル、どうしたのかのう?」

「おババー。セルもさがしものだー」

「そうか。セルならなにか見つかるかもしれんのう」

(セルには甘いなあ……)

「おー?」

 セルが足元を見ると、何かを見つけた。

「おババー。ゴブ平ー。なんだこれはー?」

「「えっ⁉」」

 二人がセルの元に行くと、セルは黒い板を持っていた。

「これは……」

「スマートフォンだ! セル! 貸して‼」

「ほい」

 ゴブ平がセルからスマートフォンを受け取ると電源キーを押し、起動させた。

「んー」

 ゴブ平がスマートフォンを調べてみると、

「これ……冒険者のスマートフォンどころか、香川県やイヨの国の者が持ち主ではないね」

「すごいなー、なんでわかるんだー?」

「簡単だよ。このスマートフォンには、冒険者ナビどころかモンスター緊急速報メールもない。香川県民やイヨの国の者なら全員あるから、入っていないからよそ者だって推測しただけさ」

「ほう!」

「Wi-Fiとか使えれば、もっと色々なことが出来そうだけど……」

「やるなー。ゴブ平ー」

「そのぐらいは分かるのか」

「サヌキにいた時に結構遊んでいたからなあ……」

 ゴブ平は遠くを見た。

「ゴブ平ー。それ、どうするんだー」

「持ち主に返すしかないよ」

「……そうじゃな、持ち主に……ひっひっひっ」

「お、おババ……?」

 おババは妙に嬉しそうだ。

「さて、持ち主を探すか」

「おー」

 三人で持ち主を探し始めた。

 町中を歩いていると、セルはさりげなくある事を聞いた。

「ゴブ平ー。さぬきにいたのなら、なぜここにきたー?」

 ゴブ平は顔を曇らせ、

「うっ! そ、それは……」

「いえないのかー。ならいいぞー」

「いや……単なる果物泥棒だよ」

「くだものどろぼうぐらいでかー?」

「果物を盗んだまではいいけど……その時、車を盗んで逃げたんだけど、途中で事故を起こしてね……。それで捕まって徳島行き、それだけ」

「そうかー」

「ふん。くだらん」

「くだらんって、おババはどうなの?」

「……忘れた。年じゃ」

「忘れたんだ」

 それから、三人が歩いていると、

「んー」

 セルが何かに気付いたので二人が見ると数人の男が大ムカデに追いかけられている。

「うわあああああ!」

「助けてええええええ‼」

「ひいいいぃぃぃ‼」

 それを見ていたセルは、

「おわれているのかー?」

「でも、この人たち、迷彩服とか鎧とかじゃなく、私服だよ」

 ゴブ平の言う通り、男たちは全員普段着だ。

「冒険者なら、かなりの実力者か、または何か乗り物があるはずじゃが……」

 香川県やイヨの国には、戦車や特殊車両などと言った乗り物が専門の自動車ディーラーで売られており、許可が下りれば、冒険者どころか民間人でも売ってもらえるのだ。

 だが、数人の男たちの近くには、そう言った乗り物は無い。

「この人たち何者? 服も私服だし、車も無いし、それに大ムカデを見て、ビビりすぎだし……」

「考えられるのは、一つじゃ」

「なんだー? おババー」

「あ奴らはよそ者じゃ」

「よ、よそ者ぉ⁉」

「よそもの⁉ ってなんだ?」

「よそ者って言うのは、ここ徳島を含めた香川、イヨ、高知の四国以外から来た人間たちのことだ‼」

「しこくいがいもあるのかー」

「あるよ」

「……じゃが噂では、よそ者はサヌキしか入る事は許されなかったはず……」

「うん」

 三人が疑問に思っていると、

「⁉」

 よそ者たちはセルたちに気付くと、

「た、助けてくれっ‼」

 よそ者たちはセルたちに向かって走って来る。

「わわわっ! 来るなよ‼」

「ワシらに向かってくるなっ!」

「きたー」

 よそ者たちとセルは大ムカデに追いかけられてしまった。

「何故、来る⁉」

「お前たちは、よそ者だろ? なんで徳島に来ているんだ?」

「か、観光だよー‼」

「「はあ⁉」」

 ゴブ平とおババは呆れてしまった。

「観光って、徳島観光に行くアホいる?」

 よそ者たちは手を挙げて、

「「「ここにいます!」」」

「はあ……」

 二人が呆れ冷ややかな目で見ていると、

「徳島って、モンスターを狩って食べるって聞いたから、モンスター狩りして食べるところを見ようと思って徳島に来たんだ」

「後、モンスター肉も食べてみたいし」

「ネットでは美味しいって聞いたから」

「「……」」

 ゴブ平は取り直して聞いてみた。

「もしかして……サヌキ……香川県でモンスター料理食べられますかって、聞いてみたのか?」

「はい。聞いたら、どこの店も追い出されて……」

(確かに例外もあって……モンスターの肉も食べられる店もあるけど……)

(物語とかのイメージじゃろうな……このよそ者たちは……)

「あの、助けてください!」

「お礼ならします‼」

「「「お願いします‼」」」

 よそ者たちは一人一人、財布から一万円を取り出した。

「セル‼ 助けるのじゃ‼」

 おババは素早く受け取り、目の色を変えて、セルに命令した。

「おー」

 セルは大ムカデに向かって走り出した。

「ぱーんち」

 セルはジャンプして大ムカデを殴ったら大ムカデは吹き飛ばされた。

「やったぞー」

「セル! 逃げるのじゃ‼」

「わかったー」

 セルが戻って来ると、おババとゴブ平は大声で、

「「急げー‼」」

「「「「わあー‼」」」」

 よそ者たちとセルたちは大急ぎで逃げ出した。

「はあ……はあ……」

「に、逃げ切れた……」

 全員何とか逃げ切れたので安堵していると、

「ひ、ひいっ‼」

 よそ者の一人は飛び上がって絶叫した。

「なんじゃ?」

「あ、あ、あ、あれ……」

 よそ者の一人が腰を抜かして、指を差している先にはスライムがいる。

「スライムではないか」

「す、スライム‼」

(このスライム、動きは遅いな。これなら、小学生程度で十分倒せるだろ)

 だが、ゴブ平がよそ者を見ると、全員ビビっている。

「えい!」

 ゴブ平がスライムを殴って気絶させると、よそ者が寄って来て、

「スライム……」

「どうした?」

「このスライムって食べてみたいのですが……」

「スライムをぉ‼」

 スライムの味は食べるにはどんな味付けにしても、酸っぱすぎるので誰も食べられないのだ。

「そ、そんな、スライムを——」

「ほれ」

 おババはスライムを茹でている。

「スライムって絶食させなくてもいいのですか⁉」

(絶食させても変わらないのに……)

「一人、一万円。先払い、いいな」

「「「はい!」」」

 よそ者たちは一万円払った。それを見たセルは、

「おババー! かねはら——」

「セルは食べなくてもいいから」

「そうかー。そういえば、ゴブ平あれはー?」

「あれ?」

「これ」

 セルが指さしたのは、ゴブ平が持っているスマートフォンだ。

「ああ、これか。すみません。これ、あなたたちのですか?」

 よそ者の一人が手を挙げて、

「あ、はい! それ、自分のです!」

「そうですか。はい」

 ゴブ平がスマートフォンを返すと、よそ者はスマートフォンを調べてから、

「よかったぁ! 無事だ‼」

 それを見たおババは、

「お礼は? 無事に帰って来たんじゃぞ」

「あっ、お礼……」

 よそ者はおババに一万円を渡した。

「悪いのう。スライムも出来たぞ」

「「「おおー‼」」」

 そしてよそ者たちは、スライムを食べると、

「「「酸っぱ‼」」」

「こんなの食えない‼」

「口が‼ 口が‼」

 よそ者たちは吐き出した。

「よくも、だましたな‼」

「えっ、ええ⁉」

 よそ者たちは怒りだして、おババに詰め寄る。

「ふん」

 おババは恐れるどころか、杵を振り回して睨みつけ、

「お前たちはいいのか? お前たちは不法侵入をした者たち、許可の無く徳島へ行くのは犯罪行為じゃ、それを分かっててしているのじゃろう?」

「「「うっ……」」」

 よそ者たちは怯んでいるところに、おババは小声で、

「それにお前たちの口止め料を受け取っていないのじゃが……」

 おババがよそ者たちに詰め寄ると、

「は、払います‼ 払います~‼」

「払いますので命だけは‼」

「お助けを~‼」

 よそ者たちはお金を投げ捨てて逃げ出した。

「「「ひい~~‼」」」

 よそ者たちは見えなくなった。

「にげたなー」

「……そうだね」

「さて、お金、お金」

 おババは落ちているお金を拾って上機嫌だ。

「お金も拾ったし、バー・ルージュでケーキでも食べるかのう」

「けーき⁉ くう‼」

「ケーキ食べられるんですか⁉」

「一個だけじゃが、いいかのう?」

 セルとゴブ平は大喜びで、

「くうぞ‼」

「ケーキ! ケーキ!」

 だが、ゴブ平は冷静になって、

「……でも、おババ、よろしいのでしょうか? 巻き上げたお金で……」

「あれは全部お礼じゃ」

「お礼、お礼ですか……」

(いいのかなあ……)

 おババはゴブ平の心配をよそに嬉しそうに、

「では行くぞ」

「「おー!」」

 三人はバー・ルージュに向かった。

 これが徳島県の日常だ。

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