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四国でみんな生きている  作者: 山田忍
四国でみんな生きている3
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愛媛でみんな生きている3

 イヨの国、ブルーアイズにて一人の少女が絶叫している。

「ユーリナ‼ アイリス‼ 聞いてよ‼」

 ユーリナとアイリスとフィリーの三人がコーヒーを飲んで会話をしている。その中でフィリーが怒っている。

「どうした。フィリー? バーゲンで安物買いの銭失いでなったのか?」

「テストの成績が悪いので、怒っていたらいいけど」

「違うわよ! 日曜日、サヌキに遊びに行ったら——」

 日曜日、フィリーはショッピングモール内の雑貨屋で買い物をしていると、

「何買おうかな……ん?」

 フィリーは視線を感じたので視線の方向を見ると、

「あれ、エルフ? 銀髪で色黒いけど」

「あれはエルフでも、ダークエルフって言うヤツ」

「すごーい! よく知ってるわね‼」

 カップルがフィリーを指さして言っている。

(なによ、あれ)

「でも、ダークエルフって、あんな服着ているの? あれ、ファストファッションの服だよ」

「もしかして……誰か着ていた服を奪い取ったとか……」

「きゃあー! こわ~い!」

 カップルはふざけ合って楽しんでいる。

(サヌキで買ったんだよ。無いと思いやがって)

「ねえねえ、写真撮ろうよ‼」

「そうだね。撮ろう」

 カップルの男の方はスマホを取り出してフィリーを写真に撮ろうとすると、

「ふん」

 フィリーは狭い通路を隠れるように店の外に出た。

「ああ、どこ?」

「探そう」

 カップルは雑貨屋の中を探している。

「って、ことがあったの‼」

 フィリーは机を叩いて絶叫した。

「ああ、わかる。よそ者のマナーの悪さは目立つからな」

「よそ者って言えば……これ、知ってる?」

「なに?」

 アイリスはスマホに録画している番組を見せた。

「ああ……これ……」

「見たよ。それ」

 番組はリザードマンやオークやらが、中世ヨーロッパ風の服を着て歩いている。しかも、モンスターたちが薪を使って火おこしやこん棒で狩りをしている内容だ。

「これがイヨの国だって」

「やらせ全開のバラエティなのは丸わかりだ。テレビ局のお偉いさんがネットの噂通りにしろって言っていたと聞いた」

「服は東京に引けを取らないデザインの服だし、IHにガスやスーパーとかコンビニぐらいあるし!」

「……その結果、これが出来たのか……」

 ユーリナもスマホで動画を見ている。

「イヨの国には、テレビがあるネットもつながるって事を教えるために……」

 リザードマンやオーク、ドワーフたちがドラマで話題になった例のダンスを踊っている動画だ。

「番組に出た連中が、このダンスを踊って、文明の存在を教えたんだよな」

「だけど、信じてくれなかったのよね」

「信じてくれないのなら次にしたのは積極的にSNSを使ってイヨの国の情報を発信した結果、皆、イヨのアクセサリーなどに興味を持った」

 アイリスはため息をついて、

「……けど、その結果にサヌキによそ者が来て、迷惑かけているのよ」

「……そうだな」

「それにしても」

 ユーリナは立ち上がり、

「話は変わるけど、最近、女性や子供の行方不明者多くない?」

 壁には獣人や亜人や精霊の子供や女性の行方不明者の写真と情報が貼っている。

 子供が行方不明になる時は家族で徳島や高知などに遠出して、家族全員が行方不明になる時なのだが、子供だけが行方不明になる事はほぼ無い。

「そう言えば、多いわね」

「まさか! 誘拐⁉ でも無いよね」

「うーん……誘拐なら警察も動くし……身代金とかは無いみたいだし」

「探してみる?」

「いいよ! ちょっと多いもの」

「速く見つかるといいわね」

 ユーリナたちはブルーアイズを出て、捜索に出た。

「まず、どうする?」

「冒険者ナビには情報は入っていないわね」

「入っていないのなら人に聞こう。目撃情報を見つけるんだ」

「では、私たちは広場に行くわ」

 アイリスとフィリーは広場に向かった。

「私は公園に行くぞ」

 ユーリナは様々な人たちがいる定番の遊具がある公園に向かい、そこで遊んでいる子供たちに話を聞いてみた。

「ちょっといいか?」

「なぁに? ユーリナ?」

 遊んでいた子供たちはユーリナが来ると、全員寄って来た。

「ユーリナ、なにかあったの?」

「最近、女の人や子供が行方不明になっているのだが……何か知っているか?」

「んー? 確かに友達の友達がいなくなった話は聞いたけど……」

「行きそうな場所、探してみたけど……いなかったんだ」

「休みに県境に行ったけど、見つからなかったの」

「ん? どうした?」

 子供の一人がスマホで何かを見ている。

「友達のリックがここ数日、遊びに来ないんだ。家に行っても出てこないし」

「……そうか。もしかして、何か知っているのか?」

「それは、わからない。けど、なにか知ってるかもしれないから、リックのママには話が聞けるようにするよ」

「すまない」

「ユーリナ、私たちも一緒に探すよ」

「ボクも行くよ」

「君たちの心遣いは感謝する。だが、危険な可能性もある。行方不明の者達は私達が探しに行く」

「ユーリナ……わかった! なにかあったらボクたちを呼んでね」

「みんな帰って来たら、また剣術教えてね‼」

「わかった」

 ユーリナが公園で探している間、フィリーとアイリスは広場で聞き込みをしていた。

 音楽をバイオリンを演奏している半人半馬のネックが演奏しおわると、話を聞いてみた。

「なにか知っていますか?」

「んー……実は夜。演奏を終わって帰る最中に見たんだ」

「見たって……」

「袋を担いだ獣人を見たんだ」

「袋を担いだ獣人?」

「それはいつ?」

「一昨日だよ。昨日は見ていない」

「場所は?」

「場所は車でマツヤマの外に出たのを見た」

「外か……わからないわね」

「車に何か特徴はあった?」

「確かサヌキのレンタカーだったな」

「「サヌキ⁉」」

 二人が驚いている間、ユーリナはリックの家に行くと、

「話は聞きました数日前から外に出なくて……」

 ユーリナがリックの部屋に行くと、リックはベッドの中に隠れている。

「……ああ、ユーリナ。実は見たんだ」

「見た?」

「獣人が後ろから僕らを捕まえようとしたんだ」

「なぜ? 何かしたのか?」

「……なにも。僕は逃げれたけど、友達が捕まってしまったんだ」

「捕まった。それから、どうなった⁉」

「……わからない。僕は逃げただけだから……」

「そうか」

 リックはベッドにうずくまり、

「……こわいよ」

「安心しろ。私達が解決する」

「本当? 約束だよ?」

「ああ」

 その後、ユーリナとフィリーとアイリスはブルーアイズで合流した。

「——と言う事だ」

「こっちもだよ。わかったのはこの程度かな」

「サヌキね。獣人も精霊もサヌキには住んでいないわ。皆、イヨの国に住んでいるもの」

「一体何者だ……。リックの話を考えれば……まさか⁉」

「まさか?」

 ユーリナの考えを聞くと、二人は青ざめた。

「な、なんてことを……」

「そんなこと……」

「それが目的なら全て辻褄が合うんだ」

「じゃあ——」

 フィリーはある提案をした。二人は驚いたが、それを実行するしかないと思ったので夜、実行した。

 そして夜、

「……」

 夜の町を一人で歩くエルフがいる。その後ろから犬や猫の獣人が走っている。

「⁉」

 エルフの少女は口を押えられ、袋に押し込められた。

「……⁉」

 獣人たちはその袋を抱えたままマツヤマの外に置いているトラックまで逃げた。

 獣人たちがトラックのドアを開けようとすると、

「待ちな」

「「「⁉」」」

 獣人たちは驚いた。二人のエルフがいた。ユーリナとアイリスである。

「な、何者だ⁉」

「お前達の目的はこれか?」

 ユーリナのトラックを開けるとエルフや獣人の子供たちや女性が出て来た。

「この人たちがボクたちを誘拐したんだ‼」

「後ろから押さえつけられて連れ去られたの」

 子供たちはユーリナやアイリスに抱き着いた。

「あなたたちの目的は精霊や獣人たちの売買。子供を捕まえて……東京やそれ以外の国に売ろうと考えたみたいね」

 アイリスも魔法を使う準備をしている。

 そして、袋の中からフィリーが出て来た。

「それで、あたしはわざと囮になって、二人にこのトラックの場所を教えたのさ」

「くっ……」

「ど、どうする……?」

 獣人たちは焦っている。

「さあ、これは誘拐だ。大人しく自首をするんだな」

「ふ、ふざけるなぁ‼」

 獣人たちは、ユーリナにナイフで切りつけようとしたが、

「ぐあっ⁉」

「ぎゃあ!」

 それよりも速く日本刀で叩きつけ気絶させた。

「ふん」

 気絶した獣人を見て、アイリスは何かに気付いた。

「これ……カチューシャよ。猫耳の」

「手も手袋だし、尻尾も偽物だよ」

「と言う事は、やはり人間か。獣人にしては弱すぎると思ったからだ」

「警察だ! 大人しくしろ!」

 馬に乗って来た警察がやって来て、誘拐犯の偽獣人たちは逮捕された。

「ご協力、感謝する!」

 鳥の獣人は警察官は敬礼をした。

「私達は当然の事をしただけです」

 偽獣人たちが連行されるのを見送ってからユーリナたちは帰った。

 後日、

「もっと速く」

「「「はい!」」」

 公園でユーリナ指導のもと、剣術を教わっている。その中にリックの姿もある。

 偽獣人たちはユーリナたちの見立て通り、よそ者の誘拐犯だ。獣人や亜人、エルフの子供を誘拐し売っている者も最近、問題になっているのだ。

「もっと速く!」

「「「はい!」」」

 これがイヨの国の日常だ。

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