表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂鬼  作者: 寂夜雫
1/1

FILE.0〜魂鬼〜

大切な人を失ったとき、人は鬼になる。

鬼と契約を交わした人を“暗鬼”と呼ぶ。そして、鬼を祓うことを生業としている者を“魂鬼”(タマキ)と呼ぶ。



薄暗い路地裏を一人の少女が疾走、否爆走していた。

艶やかな着流しを来ており、手には小刀を持っている。一見不審人物で、警察に通報されかねない。

「現役陸上部って・・・聞いてないし!!あのやろぉ、何がすぐに捕まる、よ!!」

かれこれ2kmほど走っているのだが、追っている相手は一向に疲れる様子を見せない。むしろこちらがわが疲れているのではどうしようもない。

「だぁーもう!!塾帰りに言うんだったら結界くらいはっておけクソジジィー!!」

夜空の満天の星に向かって叫んだ少女の名を、狐童参月(コドウミツキ)と言った。いささか口が悪いようだが、本人は直すつもりは更々ない。

しばらく走ったところの十字路で、参月がはたと立ち止まった。

別に、自分が走らなくてもよくない?

考えが浮かんだ瞬間、参月は十字路を右に曲がった。そして、空に向かって印を書いた。

「えっと・・・なんだっけ?足止めだから・・・あ、“魂鬼、使い魔、金縛り”」


そのころ、参月が追っている相手は橋を歩いていた。少し前から参月の足音が聞こえなくなったため、あきらめたのだろうと思い走るのをやめた。

「ッハ・・・あの女、ずいぶんしつこく付きまとってきたが・・・まあ、これであいつに復讐が出来る」

ニタリと笑って握りこぶしをつくる。その拳が、瞬く間に巨大化し鋼のごとく硬くなる。

これが“暗鬼”。大切な人を失い、鬼と契約を交わした者を称する。暗鬼となった者を外見だけで判断するのはまず無理に等しい。だが、鬼の本性は残忍で破壊願望があるため“暗鬼”となった者の性格が変わることが多い。

最も元々の性格が凶暴ならば変わりなく生活をしているのだが・・・。

「・・・!?何だこれ!?体が動かねえ・・・!!」

“暗鬼”が歩こうとした刹那、橋の下より黒い影が這い上がって来た。一瞬のうちに“暗鬼”の体が、金縛りにあったかのように動かなくなる。

そして、その体は乗っ取られたの様に今来た方角へと逆走していた。

「な、何なんだよ!?」

持ち前の脚力を活かして橋を全力で走っている、否、走らされている。

「いやぁ。ご苦労様やね!!あたしから逃げようなんて百万年早いわ!!」

橋からさらに1kmほど離れたところで、参月が待ち構えていた。多少関西弁の使い方がおかしいが、本人が癖で使っているので気にしないことをお勧めする。

「何なんだよお前!!」

全力疾走で走らされた“暗鬼”が息も絶え絶えに言う。

これは、なんとも仕事が楽でいいわ。

内心これ以上走ると仕事の達成に支障が出ると思っていたので、自分の思い付きを誉めてあげたいくらいだった。

「私?私は・・・“魂鬼”って知ってる?知ってるわよねぇ、最初に鬼から教えてもらったでしょ?」

元来鬼という者は、平安の頃より人の闇に巣食う存在。当時よりその鬼を祓う存在を魂の鬼、“魂鬼”と称し、崇められていた。だが、時代の流れにより大勢いた“魂鬼”も忘れ去られていった。

そして現在、“魂鬼”と名乗る事を許されたのは全国に9人しかいない。

「鬼を・・・祓う存在・・・“魂鬼”」

「だーいせーいかいー。まぁ、知ったとしてもすぐ忘れるけどね!!」

参月が小刀を手に地を蹴る。履いていた下駄が、カランと鳴った。“暗鬼”目指して一直線に小刀を振り下ろす。

『この世に巣食う闇の鬼よ、狐童参月の名においてここに封印せん!暗鬼封囲!!』

“暗鬼”の右肩に小刀を刺し、言霊を唱える。

断末魔の叫び声をあげることも許さず、“暗鬼”を封印する。“魂鬼”に封印された鬼は“暗鬼”から離れ、黄泉の地獄へと落とされる。

参月に刺された“暗鬼”は血を流している様子が全く見られない。

「・・・これにて一件落着、かな?」

肩にずり落ちてきた襟をなおしながら、ポツリと呟く。そして、夜空に向かって大きく背伸びをした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ