現異世界‐SF2
「相変わらず、夢見てるな、俺、実は死んでんじゃね?」
「匂っている」
「水ってどの辺りにある?」
日々どことなく浮つく心。
俺のように都会現代子は、己の生活圏、鋼鉄のジャングルに慣れきっている。
そういう人間としては、たとえ夢の中とはいえ、この窓外の出来すぎた自然に毎朝感嘆する。
あと、目の前の、典型的なアレゲームのキャラみたいに、ジト目で視ている少女。
コレに対する憧れ、あるものかもしれない。
「どうした?」
「貴方、気づかないの?」
「言葉すくなだな、ハッキリどうぞ」
「私は、デリカシーを弁えているから、気づいて」
「俺は風呂には入らない」
「・・・・もう一度、聞かせてくれる?」
「え? 聞こえなかった?」
同じ台詞でなく、俺の哲学を釈明する。
理由は簡単。
俺は夢だと思っている。
だから風呂に入るのは、此処が現実みたいなトコだと認めることになるから、認められない、以上。
「それじゃな」
歩き去ろうとすると、背後から声。
淡いメゾソプラノ。
この声、綺麗で流暢な発声、魂を震わせるような、なにか揺るがせるような響き。
一生で一度も聞いたことのない、夢が夢なら即刻婚約を申し込むところ、女、それも若い、超一級の―――
「すまん、もう一度いいか?」
「もう一度、聞かせて欲しいのです」
振り向いて、視界一杯に広がる、ような錯覚を醸す、ゆらゆら揺れる深い色合いの栗毛色。
射抜くように刺す、実にあでやかな碧い瞳。
背丈の頃は、俺よりいくらか低くても、まっすぐ見上げてくるその様は、山?いや鬼?
「それにしても可愛い、ああ可愛い」
あまりに可愛い、世が世ならトップアイドルか、世界人間国宝になっていそうな、欧州系女子。
ハワイでしか実際に見たことない、自然な髪色。
映画や写真ですら、いや二次元でも、これほどの美貌は目にしたこともない。
別世界だから、異法則が働いているのか、疑うほどに、妖精とか天使系の美少女だった。
「は? え・・・」
それが今、黒いワンピースのようなものを身に着けて、俺に正対している。
とりあえず、俺の脳内は瞬間的に麻痺して、挙句ぷすぷすとショートしだした。
夢心地から醒めてきて、この少女の異常性に始めて気づいた。
まずは声だった。
綺麗過ぎる、何億もするバイオリンから奏でられているかのような、流麗で流暢な焦がれてやまない響き音。
それだけで、己の言語回路を通して脳細胞を麻痺か死滅させるが如く、本当にその勢い、あるいは破壊力はある。
常軌を逸しているのだ、さすが別世界と言うべきか、脳の新たな回路が開いたと言うべきか。
声だけで、余りの情報過負荷に耐えられない、いや絶えられない。
そして極めつけは見た目、そう純粋に純然に見た目。
視るたびに目を焼かれる思いを、したことあるか、いやあるわけねー。
これはおよそ現実ではありえない、超現実でしか起こりえない、そんな事象と心得る。
その為に破壊された脳細胞・聴覚神経・網膜等々で、俺は悶えている、失明するんじゃないか?
挙句に、そんな俺と意思疎通しようとするので、堪らない。
労わりや心配が声に、さらなる感情と言う名の魅力を水増し上乗せして、俺を襲う。
それに抗する為に、なんとか俺がひねり出した言葉といえば。
「こ、ここは何処なんだ?」
「? ジャパンですが?」
ちなみに、この困ったように首を傾げる少女。
歳の頃、十二、見た目的には俺と同年齢、つまり17歳ぐらいに見える、少女だった。




