第十一章‐黄金時代
黄金色の日々。
あの頃は、本当によかった。
何も知らないでも、どこまでも、誰と比較しても、幸せなままでいられたのだから。
過去を追憶すればするほど、かえって辛くなるばかり。
彼女はもういない、死んでしまった・・・わかっているのに。
彼女を見取ったのは、他ならぬ彼自身。
それでも、うたた寝の中、自分は青い髪の少女の温もりを求めてしまっていた。
その度に"あの記憶"が蘇り、自分の手が再び血まみれになるのに。
「・・・・・・どうしてあんな事件があったんだろう。あれさえなければ、あの場所にみんな居なければ・・・そうだ。誰だって幸せだったのに」
夢の中、自分の膝を抱きながら埒もなく呟く。
本当に情けない―――自分でも思う。男なのに恨み言ばかりなんて。でも・・・・・・
「馬鹿なことばっか言ってんじゃないわよ」
背中から掛かる明るい声。慌てて振り向いて―――彼女。
彼の脳裏、無意識が作り上げた虚像。微かに輝く、大切な記憶。
「あんた男でしょ、それなのに情けないことばっか。いいかしら、いつまで女に背中を守られてるつもり?誰かがいつも背中を押してくれると思ってんの?」
「、、、、、・・・・・・」
そんなことをいつか言われたことがあったような気がする。
多少違うニュアンスだけれども―――あるいは、彼女の従姉と同一視してしまっているのか。
「私に立派な男になるって誓ったわよね?なのに事ある度に沈んでんじゃ、いつまでも大人になれないね。ま、所詮はその程度の奴ってこと?」
・・・・・・わかっている。彼女に責められるまでもなく。
なのに、言われてしまう。こんな当たり前のことを、うじうじしている自分が情けない。
「悔しい?だったら言い返してみなさい、でもそうね、あたしはもう死んじゃってるから言葉じゃ通じないわよ・・・いいかしら、・・・・・。ほんのちょっとだけ期待してるんだから。あたしだって女の子、本当だったら守られたいって思ってたんだよ?あたしがあんたを守ることになるなんて、あの瞬間までこれっぽっちも考えてなかった。らしくないこと、所詮報われない。けれど・・・代わりに約束ぐらい、守ってよね?そうじゃなきゃ、あたしは腐れ男を助けた馬鹿女で終わっちゃうんだから」
そう言い残して、すっと消えていく少女。淡い光だけ残った空間をじっと見つめてから、彼は半ば憤然として呟いたのだった。
「・・・・・・誰が腐れ男だよ」




