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白の拠点  作者: おゆ
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喋る箱

 今世紀最大級の大型台風が直撃した為、四国の田舎で生活をしているこの男は、自身が運営する小さな店舗から出られずにいた。男の名は鈴木雄一。25歳で師匠の元から独立し、整体院を開業してから何とか3年目を迎えることができた。両親はおらず、人とのつながりといえば整体業を叩き込んでくれた師匠に数名の友人ぐらいである。

 身長175センチ、体重64キロ。もっと筋肉をつけて体を重くするよう師匠から言われているが、これ以上は太って見えるんじゃないかと危惧する28歳。顔は上の下~中の上といったところのナルシストである。

 黒髪ミディアムパーマにワックスやムースをこれでもかとつけなければ自信が保てない。切れ長の目、形の良い鼻。少しおちょぼ気味の口が男自身が認める自慢のパーツである。

 あとはもう少し下だといいなまゆ毛や、笑うと出てくるほほ骨が気になっているぐらいであろうか。

 22:00

 整体院の目の前は、周りにある田んぼからの水があふれ出し、脛程の高さまで水が迫ってきている。


__


 こりゃ帰るの無理だわ。

 店はなんとか大丈夫そうだけど、車でとかなんか怖いし。今日は泊まって明日何とかしよう。

 ちょっと腹へったなー。こういう時は寝るにかぎる。店の奥の休憩スペースに入る為のドアを開け、中に入ると真っ白な空間――――。


 「え? あ、ちょっ」


 なにこれ。


 知らない部屋が前面に広がっていた。何にもなくただの白い部屋だが、さっき開いたドアの向こうには俺の着替えや仕事道具、あとはちょっと恥ずかしいごにょごにょとかがある筈なんだけど。


 いやいやいやいや、急に不安になって後ずさりをした。


 ――トン


 背中には壁に押しあたる感覚。恐る恐る振り返るとそこには何もなかった。


 落ち着け俺。こういう時こそ素数を数えるんだ。

 1,3,5,7,11,13……。

 あれ?

 1って数えるんだっけ?

 待て。こんなことしている場合じゃないだろうよ俺。とにかく閉じ込められたんだ。後ろにあったはずのドアは何故か無くなっているし。心臓の鼓動が聞こえそうなぐらい大きくなっているが一回深呼吸をして周りを観察する。


 ん?部屋の隅に白い箱がある……。なんだろ。この部屋がなんなのかわからんけど、なんか出られないっぽいし、少しずつ箱に近づいてみる。暑い寒いは感じないのに極度の緊張のせいか、全身から汗が噴き出て背中やらお尻やらが服に引っ付いて動きにくい。頭の危険信号が行くなと教えてくれてる気がする。


 けど手がかり何にもないしなあ。いやな気しかしないけど再度足を進ませる。


 なんだこの箱。金属みたいだけどよく見ると真ん中に薄く青い光を発しているボタンみたいなものがある。

 これは押していいものなのか。んーわからん。


 よし!

 ポチッっとな。


 ――瞬間。


 「ご用件をお伺いします。」


 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!

 ゴホン。取り乱しました。

 

 すんごく流暢に喋ったよこの箱!

 普通、無機物から聞こえる音声ってもっとこう、機械音声全開で「ゴヨウケンヲ……」って話すもんなんじゃないんだろうか。まあいい。一人でかなり淋しかったんだしなんかありがたい。


 「ここってどこなの?」


 「空間の狭間、つまりは拠点になります」


 なるほど、わからん。


 「元いた場所には帰れるんだろうか」


 「ここから元の世界に帰還することはできませんが、ここは帰還場所になります。」


 ん?

 んん??


 「なにが起こってるのかわかんないんだけどどうすればいいの??」


 「ここを拠点に過ごしていただきます。まずはステータスをご確認ください」


 「ステータス?」


 と呟いたところで目の前にゲームなどでお馴染みの画面が広がる。


名前:鈴木雄一

種族:人間

年齢:28

Lv:1

HP:120/120

MP:40/40

称号:白の管理者

スキル:なし

力:10

魔力:5

体力:3

知力:4

速さ:6

運:8


 やっべ。ステータス見る限り俺って脳筋の部類じゃん。確かに仕事柄腕力だけはあるし、体力も頭もそれほど使わないけど。MAX10っていうのが高いのかどうかはわからないが、運はまだいい方かな。いい師匠に巡り合ったし、そこそこ仕事の方も成長してるし。

 ステータス画面を見てるとこれってもう帰ることはできないんじゃないかと考えてしまう。だってファンタジーじゃんこんなの。けどなんかニヤニヤしてしまう自分がいる。なぜなら画面真ん中上の方!


 魔力

 

 これって魔法使えるってやつか!!


 やっべ。ワクワクしてきた!!


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