2-2.イメージ
「って違―う! なんなんだよ君は!?」
「え? あ~……おはよう?」
「おはようって……。あ! 呑気に話してる場合じゃない。遅刻する!」
俺は急いで布団から出て、寝巻きを脱ぎ捨てた。
「どこいくの?」
「会社に決まってるだろう。ああ、君の事は帰ってから聞くから大人しく待っててくれよ!」
「社会人って凄い。死んでも会社に行くんだね」
最近の子供は死ぬとか物騒な言葉をよく使えるな。
俺が親なら優しく叱って頭を撫でてやりたい所だが、生憎そんな関係ではないし時間も無い。
「ねーもー。聞いてよー!」
目の前で地団駄踏み出す幼女。包まった布団からはみ出た手足が、なんというか物凄く愛くるしい。
でも俺の子供ではない、ロリータ、ノータッチ。
「これ! ねー、これ見て!」
幼女は部屋の片隅を指差した。小さな指の先を見ると、スーツ姿のおっさんが倒れている……。
「はぃ?」
スーツ姿のおっさんはどう見ても俺だった。おっさんは白目のまま思い切り口を開けている。
その開いた口からはなんとも汚い涎の跡がついていた。そして額には綺麗な穴がぽっかりと空いている。
「え、ちょ。お、俺えええ!?」
「もー何も覚えてないの?」
仕方ないなぁ、とばかりに呆れた風な声が響く。そんな事言われても頭はパニック状態だ。
「昨日こうして」
幼女が中空に手を広げると、そこには金色に装飾された厳つい銃が現れた。
あれは、デザートイーグル50AE。俺がやってるゲームで一番好きな銃だ。
「こうしたじゃない」
1Kの狭い部屋に、ズドン、と重たい乾いた銃声が響き渡る。
俺は襖に空いた親指大の穴を、呆けたように見続けていた。
そして腰が抜けてしまったのか、いつのまにか畳みに座っていた。
やっと思い出した、そういえば昨日もこんな目にあった気がする。
「思い出した?」
幼い声が俺の耳に届く。
俺が頭を上げると、映画のワンシーンの様に格好つけながら銃口に息を吹きかける姿が見えた。
「ななななな、何すんだよ!」
俺は幼女のその姿に慄きながらも反論する。だが、俺の反論なんて全く聴いちゃいなかった。
「ていうかなんで銃なんか持ってるんだよ! 危ないから銃から手を放してくれ!」
俺は取り乱してしまい、早口でまくし立てる。だが、
「ふーん。貴方の思ったイメージはこれなのね」
幼女は意味不明な事を呟きながら、あろうことか俺に銃口を向けた。
「お話してもいーい?」
「……はい」