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2-1.イメージ

 あ~気持ちいい、なんだか凄く柔らかい。

俺はその柔らかさに、手を伸ばした。ぷにぷにとした感触が実に気持ちいい。

でもこんな柔らかい物、家にあった記憶はない。


「はっ!」


 不意に俺は目を覚ました。ちゅんちゅんと囀る雀の鳴き声に、勝手に体が起き上がったようだ。

俺はいつもの位置にある時計に目を向ける。


「やべっ、遅刻する!」


 時刻は八時ちょうどだった。あと三十分で始業の時間だ。

急がないとまた部長に怒られてしまう。俺は勢いよく立ち上がろうとした。


「ん?」


 俺の体に何か乗っている。それを布団の中にある手で触ると、とても柔らかく、それでいて暖かい。

俺は両手で着ている布団をはいだ。


「ちょっ……と……」


 布団をはぐと、俺の体をぎゅっと抱きしめている、金髪の幼い子供がそこに居た。

少女は小さい寝息を立てながら、まるで天使の様な寝顔を俺に見せる。

これが俺の子供だったら可愛さの余り抱きしめているに違いない。

だけどそんな事は決してない。なぜなら俺には嫁さんなんて居ないし、ましてや童貞だからだ。


「何? なんなのこれ? 俺の子じゃないよ?」


 俺は頭を抱えてしまう。いつの間にか幼女誘拐でもしてしまったのか?

それとも知り合いの子供でも預かったのか?

でも俺には兄弟は居ないし、田舎から出てきたから知り合いも少ない。


 てことは誘拐だろうか? なんてことをしてしまったんだ。

生まれてから万引きすらした事無かったのに、初めての犯罪が幼女誘拐とかもう生きていけない。

こんなことが世間にばれたら会社もクビだ。


「ああああ……」


 崩れていく、今まで俺が積み上げていった詰まらない物全てが音を立てて崩れていく。


「んぁ」


 聞こえてはならない幼女の起きた声が俺の耳に届いた。

俺以外に届いてもらいたくない、社会に抹殺されてしまう。

そんな事は知らぬとばかり、あろうことか金髪の幼女は俺の上半身によじ登り……。


「おいしそう」


 小さな唇を、俺の唇に触れ合わせた。


「!?」

 

 目の前に広がる小さな顔。

幼い姿には似合わないその美しさに、俺はただ受け入れることしか出来なかった。

初めて味わう唇を唇を合わせるキスの感触。と、そう思っていたのも束の間。

幼女はまるで美味しい食事を取るかの様に口内を舐めまわした。その感触に俺の頭は更に混乱した。


 もう何が何なのか訳が分からない。変な幼女からは襲われるし、会社は遅刻確定だ。

それにこの子供が誰の子供なのか分からない。

もう何も考えられなくなってきた、頭なの中がクラクラする。

心臓が高鳴り、鼓動が大きく体の中を跳ねまわる。

幼女はそんな俺のことなどお構いなしに、何かを俺から吸い尽くしていく。


 部屋には小鳥の微かな囀りと、ちゅぱちゅぱ吸いあう卑猥な音だけが漂っていた。

その淫猥な音と、舌の甘さに幸せすら感じそうな……。


「ぺっ! 苦っ」


 それまで美味しそうに貪っていた幼女が、いきなり俺の元から離れ、

まるで苦い物でも食べたかの様に渋い顔をしていた。


「え、え~……」


 そんなに俺の口って臭かったのだろうか……ちょっとショックだ。

いや、ちょっとどころではない。煙草がいけなかったのだろうか、

あ~こんな思いするなら、煙草なんて吸わなきゃよかった。


「あ、また美味しそうな香り」


落ち込んでいる俺の背中に、幼女がまたしてもよじ登ってくる。

しかし俺は素早く逃げ出した。あんなことをまたされてはちょっと困る。


 うん、ちょっとだけ。


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