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1-2.プロローグ

「ただ……」


「……おかえり」


 一人暮らしの男の家に、女性の声が聞こえる。俺はその状況を見て固まってしまった。

目の前には蛍光灯の光なんか無くても輝きそうな、金色の美しい長い髪。

すらりと伸びた脚に、透き通る様な肌。そして小柄で整った顔立ち。

そんな美人が足を伸ばし、両腕を床につけ四つんばいになっている。


 まるで芸能人の様なオーラを漂わせる美しい女性に、俺はただ立ち尽くしていた。


「はぁ、はぁ……。ごめん」


 ごめん? 何のこと? この人は誰なんだ?


 女性の言葉で固まっていた頭が、ようやく回り始める。

だが正常な状態に戻るのは難しそうだ。俺は目を閉じ、もう一度女性を見る。

綺麗な、それでいてとてもエロい。まるでグラビアだ、この人はグラビア女優だ!

豊満な胸と、それでいてきゅっと引き締まった腰周りが凄く官能的だった。


「ごめん……ごめん」


 手を床につけたまま、女性は同じ言葉を繰り返す。俺はようやく気付くことが出来た。

今にも蹲りそうな女性は、肩から息をし、まるで全力疾走でもしてきたかの様に疲れた様子だったのだ。


「もう……」

「もう?」


 女性の言葉に反応する。俺は一歩近寄ろうとした。

その刹那、美しい女性はまるで中空から銃を取り出したかのように、素早く俺に銃口を向ける。


「我慢できない」

「はあああああ!?」


 ズドン、と。まるでゲームの様な銃声が部屋に木霊した。

銃口から飛び出した弾は俺のどこを貫いたのだろうか。


 声が出ない、体が勝手に倒れる。今にも閉ざされそうな瞳が、今の姿を想像させた。

もう声すらも出せない。


 マジかよ、死ぬのかよ……俺。


 毎日毎日社蓄で、結婚もせず金だけ残して死ぬのかよ。

 なんだったんだろうな、俺の人生って。

 勉強ばっかしていい大学入って、いい会社に入った。

 でもそんなの親の見栄でしかなかったよな、楽しくもなんとも無かったし。

 隣で馬鹿ばっかりやってる不良たちのほうがよっぽど楽しそうだったよな。

 彼女も出来ず、童貞のまま死ぬのかよ。

 あ、仕事残したままだった、やばいなぁ。


 徐々に目の前が暗くなってゆく。俺は手術前に全身麻酔を掛けられた様な感覚を思い出した。


 もう目覚める事はないだろうけどね。

 ああ、あの女の足、綺麗だな。


 そして、俺の目から光りが失われ、何も見えなくなった……。


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