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第6話 海の見える村

 お久しぶりです。またも時間が空いてしまいました。

「あれは……海か?」

 

 一夜明け、俺達は野営地を出発して大体三時間ほど、起きたのが七時で出発が八時だとして十一時ごろか?目の前の景色が緑一色から青色が混ざり始めたのだ。前の世界ではほとんど見られなかった綺麗な青。一片の(けが)れもなさそうなその青は生命の母として相応しいと言えるだろう。戦争で汚れたとか言っていたがまったくそんなことはなさそうである。一体どういうことだろうか?まあいい、マレの村に着けば何か分かるだろう。

 

「ビリーさん」

 

「あと二時間ほどで見えてきますから我慢してください」

 

 俺が散々尻が痛いだの飯はまだかだの村はまだかなどと言っていたらあまり相手してくれなくなってきた。

 

「あんたは静かに座ってられないのかい?」

 

 レンもレンで俺がどういう人間か分かってきたのかだいぶ打ち解けてはいるが少し辛過ぎやしませんか?

 

「分かったよ」

 

 ジト目で見てくるレンに負け、拗ねるように寝転び到着を待つことにした。子供か俺は。

 

「ねえ、あんたの荷物ってどこにあるんだい?ボロゾフに渡していた水筒もそうだけど道具袋なんか持ってないだろう?」

 

 がたがたの道を走り続ける馬車によって引き起こされている痛みに我慢していると不意にレンが質問してきた。おそらくこういった黙々とした雰囲気が苦手なんだろうがどうしたものか。今はビリーさんもいるしおいそれと話すのもどうかと思うし、さてさて。

 

「そのことはマレの村でまとめて話そう。とりあえす言えるとすれば俺には人には無い能力があるって事だな。まあ全部聞いて思うところがあれば俺は素直に君を手放そう」

 

 護衛がいなくなるのは辛いがマレの村でもおそらく傭兵みたいな人はいるだろうし、最悪マレの村で家でも建てて住めばいいからな。

 

「何言ってるんだい?あたしはもうあんたの物だ。あんたが要らないとでも言わない限りはついていくよ。要らないって言われるとあたしも困るんだけどね。戦えない剣腕族なんか手元に置いといても穀潰しにしかならないしね」

 

 何を言ってるんだといった顔でこんなことを言われたが、内容は聞いてるこっちが恥ずかしくなりそうだ。まあそう言ってくれるならありがたいし剣を治してあげたら戦力としては申し分ないだろうからな。

 

「そうか、なら頼むよ」

 

「ああ、任せときな。あたしに出来ることなんかほとんど無いけどね」

 

 少し辛そうな表情で言う彼女の顔には、今までの苦労や何も出来ない自分に対しての嘲笑(ちょうしょう)めいたものを感じた。だが今の状況だと俺にはどうすることも出来ないので黙って聞いているということしか出来ず、少し歯がゆさを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナナシさん、見えましたよ。あれがマレの村です」

 

 俺が何度も()かしたからか、ビリーさんが少し遅めに到着時間を計算していたかは分からないが、あれから一時間と少しのところで丘を越えると村が見えてきた。まだ2kmくらいあるので細かいことは分からないが海岸の近くにあり、少し海にせり出した部分は港だろうと予想がつく。なるほど港町か漁村(ぎょそん)といった感じだ。ということはおそらく魚が食えるわけで、俺は大の魚好きだ。だからどうというわけではないが、ただ俺のテンションが若干上がった。そういえば刺身の概念はあるのだろうか?前読んだ異世界に迷い込んだほにゃららみたいな小説だと生で魚を食べる概念がなくて主人公が苦労してた気がする。もし何かあったらいけないから胃薬と食あたりの薬を錬成しておこう。

 

 そんなことを考えている間にビリーさんが馬車の速度を上げたらしく、2kmという距離は簡単に潰れてマレの村に着いた。

 

「どうもありがとうございました」

 

「いえいえ、こちらこそ貴重な物をどうも」

 

 ビリーさんも忙しいらしく、俺達を村の入り口に降ろすと二、三話すとすぐに行ってしまった。

 

 とりあえずまずは金だな。雑貨屋か武器屋みたいな金属を扱うところが良いんだけど。とりあえずレンには宿屋を探してもらおうか。

 

「レン、君はとりあえず宿を探してきてくれ」

 

「いいけど、あんたはどうするんだい?一緒に来れば良いじゃないか」

 

「俺は俺でやることがあるからね。それが終わり次第ってところだ。だから一時間後にもう一度この門のところに集合してくれ」

 

「わかったよ」

 

 レンはあまり納得していないようだが渋々といった感じで村の中に歩いていった。それじゃ俺も行動しますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとすみません!」

 

 レンが行った方向とは別の方向に足を進めていると丁度良いところに第一村人を発見したので場所を聞くことにする。

 

「なんだ……い?これはき、貴族様、何か御用でしょうか?」

 

 声をかけると振り向いてくれたおばちゃんだが俺の身形(みなり)を見るや否やボロゾフというらしかったあの男と同じように凄い低姿勢になった。本当にここの貴族は好き勝手やって平民層の人に恐れられてる様だ。まあ足元を見られるよりはいいから着替えるなんて選択肢は(はな)から無いが。

 

「そんなに(かしこ)まらなくても良いですよ。武器屋か雑貨屋は何処にありますか?」

 

「雑貨屋でしたらあちらに見える青色の屋根の建物です。武器屋はあちらの煙が出ている茶色の屋根の建物です」

 

「どうもありがとう」

 

 恐る恐るといった感じではあるが聞きたい情報は聞けたのでお礼を言ってここから近い武器屋の方に行ってみることにする。

 

 まずは品揃えと使われてる金属だな。おそらくは銅とかの鉄以外に良く採れそうな物だと思うが。

 

「すみません!」

 

 三分ほど歩いて教えてもらった建物に入るとなるほど武器屋だ。店の中は人が居らず閑散としていて、壁に掛けられたり立て掛けられたりしている武器達がより一層冷たい雰囲気を醸し出している。品揃えとしては異常にデカイ剣などは無く、誰にでも扱えそうな両刃の剣に槍に弓、あとは短剣などが目に入る。防具は金属はあまり使われていないのか、革っぽいもので出来た物が多い。胸当てなどは流石に金属だが盾なども皮を張った丸っぽい物が多いようだ。

 

「はいはい今出ますよっと……って貴族様!?きょきょ今日はどんな御用で?」

 

「武器を見に来ただけですよ。武器に使われているのは青銅や鉄ですか?」

 

「は、はい!いつもはもう少し鉄の武器もあるんですがこの御時勢でほとんど国の方に買い叩かれてしまいまして……」

 

 なるほど、鉄製武器は少なくて需要は大と、決まったな。

 

「この武器屋は煙が出てましたが鍛冶も兼業で?」

 

「はい、こんな辺鄙(へんぴ)な村では武器だけではあまり売れませんで、ナイフを造ったり家庭の壊れた金属製品を直したりしております」

 

「なるほど。では鉄を15kgほど買って欲しいんですがよろしいですか?ああ、正規の値段で構わないですよ」

 

 どうやら鍛冶も兼業しているらしいので素人の創った武器よりも鉄をインゴットで買ってもらったほうが良いだろうという提案だ。店主であろうおっさんも口をあんぐり開けて呆けているが。

 

「ええ、売っていただけるのなら買わせていただきますが正規の値段でよろしいので?」

 

「構いませんよ。では持ってくるので少し待っていてください」

 

 俺はそう言って店を出ると建物と建物の間に入り、すぐさま鉄を錬金し店内へ戻った。

 

「これですが」

 

「これは……不純物の少なそうな鉄ですね。銀貨50枚でどうでしょうか?」

 

「構いませんよ。それともう一つ聞きたいんですがここらの宿は一泊いくらでしょうか?」

 

「この村に宿屋は一軒しかございませんが、一泊二食で銀貨1枚と銅貨5枚だったと記憶しています」

 

「そうですか、ありがとうございます。代金を貰ってよろしいですか?」

 

 聞きたいことは聞いたので話を一度切って店主にお金を持ってきてくださいと伝える。まだ為替は良く分からないがとりあえずはこんなもんでいいだろう。

 

「こちら銀貨50枚になります。御確認ください」

 

 店主も貴族相手に枚数のサバは読まないだろうと銀貨の入った袋を手に取り店を出た。

 

「さて、まだ早いけど戻るか」

 

 俺は近くの店で売っていたサンドイッチなのかクレープなのか良く分からない物を食べながら集合場所である村の入り口に戻るため足を進めた。

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